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電子書籍版 情報の技術
目次 第1章 動く地図
あとがき 本書『情報の技術』は、朝日新聞社の月刊誌「論座」創刊準備号から二年半ほどにわたって連載されたものから成っています。ルポの舞台は、湾岸戦争から阪神大震災やオウム真理教事件を経てペルーでの人質事件に至るまで、現代日本を描くには不可欠な出来事が同時進行的に挿入されることに結果としてなりました。ここに収められた二十五のテーマを、それぞれ一冊の本に仕上げたい衝動にかられます。 本書でいう「情報」とは、動く地図や遺伝情報や記憶、あるいは恋愛や政治や宗教を含めてのコミュニケーションやナビゲーション、知事や保健婦や盲目の読書人や難病患者や気象観測者などなどの多彩な知的活動を意味します。「技術」とは、情報収集や分析や表現の技はもとより、他者との出会い、広くは生き方を指しているつもりです。表層的な人物紹介や商品開発自慢や整理術のような枠から思い切り抜け出して、真摯で感銘深い人生ドキュメントとなりうるために、私は密着というスタイルを選びました。そして各章ともすべて、その叙述法を変える、という試みがなされています。しかもなおかつ、二十五本のルポが前後で必ず共鳴しあうよう最初から意図されているので、単なるルポ集ではなく、全体が一つの構築物になっているはずです。本書をそうしたノンフィクション方法論の集成としても愉しんでいただけたら幸いです。 本書のもとになった連載は、「Ronza」創刊にあたって、永栄潔さんがその種子を蒔いてくださいました。連載中の編集長、鴨志田恵一さんからは毎回ていねいな激励を、同世代の首藤由之さんには資料収集や編集という栽培支援をしていただきました。取材先などに届けられた「軍資金」の粋な計らいも忘れえません。三国治さん、伊藤景子さん、宮脇洋さんとは、しばしばビールなどを飲みながら、いくつもの着想のヒントを点灯してもらいました。いまは全員、他のセクションに移られ、新編集長の清水建宇さんには、最終章でお世話になりました。月刊誌上での連載「情報の技術」は第1章から第24章までであり、第25章のみが別枠で掲載されたことになります。 これらを編んだ本書は、たぶん私の最も気に入った本、つまり代表作になると思います。単行本になるに際して、書籍編集部の岡本行正さんと三島靖さんには、大船に乗った心地で編集をおまかせいたしました。 わずか二年半ほどの時間の流れのなかで、ルポに登場いただいた人々にも異動や変化がありました。知事に再選した方、大学教授に招聘された方、弁護士事務所を独立した方など、さまざまです。残念ながら私は、あんまり変わっていませんが――。 本書での取材にご協力いただいた方々は総計四百五十人を越えています。このような出会いが、私にとって最良の「情報の技術」にほかなりませんでした。 日 垣 隆
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