マスクドドラゴン
魔界武侠 竜人仮面
それは、ある日突然現れた。
何の先触れも無く、唐突に、あり得ない存在が、都市を埋め尽くしたのだ。
廃墟で発見された手記より
ここはかつてシンジュクと呼ばれていた街。十年前まではここはネオンの明かりで不夜城のように煌いていた。
今はもう廃墟と化してしまった街の中心を、一台の装甲車が疾駆している。
ビルディングの隙間を切り抜け、ゲイバーの看板を勢いよく弾き飛ばしたその車は駅近くのバス停前に停車した。
「シンジュクヒガシグチ駅到着!」
運転手が大声を張り上げると、全長五メートル程の大型の装甲車の背部ハッチが開かれる。
外からの見た目より大分広い車内から降りてきたのは、無骨なシルエットを持つ鈍色の装甲戦闘服を着こなした十数名の兵士たち。
フルフェイスで肩に貼られた部隊章と認識番号以外に個性の無い兵士たちのなかで、唯一他の者たちと異なる、スマートな装甲を纏った男が号令をかけた。
「総員、戦闘配置!打ち合わせどおりッ!」
「イエッサ!」
びし、と効果音付きで整列した彼らは点呼を行い、A、B、二つの小隊へと分かれて自分の持ち場へと急行する。
その挙動の一つ一つは洗練されており、民兵のそれとは一線を画していることが一目でわかった。
それ以前に、彼らの持つ兵器や兵装の数々は、いずれも最新鋭のものばかりである。
そう、彼らは人類防衛軍東京支部に所属する、Demon Attack Team。通称DATの精鋭たちなのだ。
「アルファ小隊、行くぞ」
「イエッサ!」
隊長のしゃがれた声に応答し、五名の小隊員が暗闇に包まれた駅構内へとついていく。
装甲の擦れあう音どころか、特殊なゴムで作られた足の裏のグリップは音を立てず、艶消しされた装甲は光を吸い込むほどに闇に馴染む。
暗視センサーを起動して構内の様子をさぐりながら、指示された場所、駅ビルの三階へと彼らは上っていった。
「ストップ・・・・・・アルファ3、メトリスを二体発見」
駅構内に入ると、猿と犬の中間のような姿をした、人間より若干大柄なバケモノが二匹発見できた。
地下鉄や駅ビルの中に巣を作るメトロの住人。ゆえに、呼称はメトリス。
どうやらあの怪物たちは哀れな人間の死体を漁っているようで、隊員たちには気づいていないようだ。
ふしゅー、ふしゅー、と鼻息荒く死肉を貪っている化け物から目を離さずに、身振り手振りでアルファ3は仲間を呼んだ。
「・・・・・・撃て」
アルファ2、3、4の三人は集まると、無言でサプレッサー付きのオートマチック拳銃をホルスターから引き抜き、呼吸を整えてからメトリスに向けて引き鉄を引いた。
ぱすっ、ぱすっ、と気の抜けた音がして、それと同時にメトリスが倒れこんだ。見事に頭に命中したらしい。
本来ならばメトリスを拳銃で殺すには五、六発腹に撃ち込まなければならないのだが、頭を打たれればバケモノといえどもひとたまりはない。
しかし、死んだフリをされて反撃を食らってはかなわないので、マガジンに残った十発の弾丸を五発ずつ撃ち込んで確実にとどめを刺す。
「クリア」
メトロスを射殺した隊員たちは周囲の安全が確保できたことを確認してトランシーバーに報告をした。
そして、グロ注意とモザイクがかかりそうな、襲われていた人の死体を探る。
内臓を食われていたのか、内容物が凄まじい匂いを発していた。
しかし、防毒用に内部循環呼吸装置を備えた強化装甲を装備した彼らにはその腐臭は届かない。
手馴れた手つきで死体漁りをすると、未開封のフィルター七枚と、ショットガンの弾丸が二十発、そしてアサルトライフルの弾丸が七十七発見つかった。
DATに限らず、防衛軍が遠征を行った際には、こういった物資も可能な限り回収しなければならない。
最後に認識票を外して、回収ケースにつめた。
「全小隊、二階バルコニーに集合」
そんなことをしていると、トランシーバーから隊長の声が聞こえてきたので隊員たちは探索を中止して駅ビルのバルコニーへと向かう。
バルコニー、ほんの十年前のここにはおしゃれなカフェがあって、多くの人でにぎわっていたのだ。
しかし、今となってはその面影すら残っていない。
薄汚い埃が舞い散り、死毒が蔓延している中では防毒マスク無しでは肺病になりかねない。こんな場所がかつての首都にいくつも存在する。
「駅前公園におびき出すのが前提の作戦だ」
隊長は今回の目的を再度確認する。
今回の目的は、DAT第一戦闘隊がおびき寄せたターゲットA、通称ファーブニルの討伐だ。
ここ、駅前公園におびき寄せることが成功したならば、火力支援小隊の一斉射で撃滅するのが作戦である。
「B小隊はこの場で待機。狙撃態勢を維持して指示を待て」
隊長がハンドサインでわかりやすく小隊の面々に指示を出すと、B小隊のメンバーは隠れられる物陰と狙撃ポイントを探し始めた。
ファーブニルをおびき出す駅前を一望出来るバルコニーからの火力支援がB小隊の役割である。
ガウスライフル、対物ライフル、ミサイルランチャーといった最新鋭の歩兵装備を用いてファーブニルを弱らせる、もしくは殺害するのだ。
偵察隊の報告によると、ファーブニルは空こそ飛ばないものの、火を噴くうえに、凄まじいジャンプ力を持っているらしい。安全な狙撃ポイントは無いも同然だろう。
その為、可能ならばA、B両小隊の一斉掃射を持って一気に撃滅するのが得策だと踏んだわけだ。
「A小隊、おれについてこい」
「イエッサ」
隊長がバルコニーから降りる。エスカレーターには電源が通っていなかったので、普通に歩いて、だ。
重たい強化装甲を纏った兵士たちが六人で降りると、みしみしとエスカレーターは嫌な音を立てたが、壊れはしなかった。
全員が降りたのを確認すると、ファーブニルをおびき寄せる場所へとTNT爆弾を数箇所設置する。
起爆装置は隊長の男が持っており、狙撃隊の攻撃により動きが止まったところで起爆する手はずになっている。
そう考えながら彼らが自分達の身を隠す場所を探していると、トランシーバーに通信が入った。
『こちらDAT01、目標地点まで二十秒』
「イエッサ。駅前へと駆け込んで伏せたところで起爆させる」
もう既にファーブニルは相当近くまで来ているらしい。
耳を澄ませば、ずぅん、ずぅん、という地鳴りと、少女の悲鳴のように高い、道路とタイヤが擦れる音が聞こえた。
「人間ごときがァ!俺の財宝を返せ!」
大音量のくぐもった怒声が聞こえた。悪魔の中でも高等な存在は人語を喋る。標的A、ファーブニルもその高等な存在なのだ。
ファーブニルはその名のとおり金銀細工や宝石などの財宝を溜め込み、それを守るようにシンジュクの宝石店を根城にしていた。
今回討伐目的となった理由は、日々大きくなってゆくトーキョー地下街の入り口の近くに住み着き、地下街の人間を食い殺し始めた為だ。
ファーブニルは大悪魔と認定されていて、DATでも可能であれば放置するほど強力な悪魔なのだが、今回はその限りではない。
これ以上被害が出る前に殺さなければトーキョー地下街は終わりである。
隊員がそんな風に考えていると、ビルの合間からファーブニルの巨体が見えた。
「・・・・・・・・・・・・でかい」
黒い鎧のような甲殻に身を包んだ竜がそこにいた。
身体の関節、甲殻の隙間はマグマのように赤く発光している。肘と肩の関節からはチロチロと炎の舌があがっている。
目測だが、十五メートル近い巨体を、二本の太い脚と同じぐらい逞しい二本の腕で支えている。
骨格は人間のそれに近いようで、足の指は四本だが、手の指は五本あるようだ。
『B小隊、狙え』
隊長から指示が入り、B小隊の隊員たちは担いでいた兵器の銃口をバルコニーの柵の隙間からのぞかせる。
光学スコープ越しにファーブニルの顔を見る。目視では見えなかったが、兜のように鋭角的なフォルムの頭には赤く光る四つの単眼があった。
まるで関節から漏れる炎といい、ルビーのように赤い目玉といい、まるでファーブニルは鎧を着込んだマグマの塊のような印象を抱かせる。
ずぅん、ずぅん、と轟音を響かせながら陽動班の乗ったジープを追うファーブニル。
体捌きは巨体のわりには機敏のようだが、ビル郡の中ではその巨体が邪魔をしてその機敏さを発揮できないようである。
やがて、ファーブニルは駅前広場に入り込み、TNT爆弾が仕掛けられた場所に足を踏み入れた。
『撃て!』
隊長からの指示が入ると同時にファーブニルの頭に狙いを定めていた隊員たちは引き鉄を引き絞った。
主力兵装の対物ライフルから、最新鋭兵器のガウスライフルまで、一斉に発砲し、ファーブニルの頭の甲殻が弾ける。
「が、あああッ!?」
『起爆』
不意の攻撃に脳を揺らされ、前後不覚に陥ったファーブニルに追い討ちをかけるように、隊長は手にしたTNT爆弾の起爆スイッチを押した。
世界中に響き渡るような爆音と共にファーブニルが爆発に巻き込まれる。これで生きていられる生物はいない。
正確には――――いなかった。いなかったのだ。世界が、こんなことになるまでは。
「小賢しい。小賢しいぞ!人間!」
爆発の煙で視界が晴れぬ中、くぐもった声が駅前に響き渡る。
『全員、伏せろ!』
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
噴煙を引き裂き、激しい炎が空へと巻き起こる。
灼熱の吐息、ドラゴンブレス。ファーブニルなど、竜の姿をした悪魔が得意とする攻撃である。
ヴォルスンガサガによると、ファーブニルは毒の息を吐くらしいのだが、こいつはそれとは異なるようだ。
「食い殺してやるぞ!下等生物どもめェ・・・・・・!」
四つの真っ赤な単眼をぎょろぎょろと動かして獲物を探す姿は凶獣のそれ。
メトロの入り口でアンチマテリアルライフルを抱えて息を殺していたアルファ小隊の隊員は、初めて戦う大悪魔の強大さに足が萎えていた。
「はーっ、はーッ・・・・・・隊長・・・・・・!こちらアルファ3。応答願います・・・・・・!負傷は、ありません・・・・・・!」
「ブラボーチームは全滅のようだ・・・・・・!貴様はその場で待機・・・・・・アルファ2がそちらへ向かっている。見つかってしまった場合は逃げ出せ。メトロ内には絶対に入るなよ・・・・・・!」
「イエッサ・・・・・・!」
駅ビルの上階やバルコニーから狙撃に当たっていたB小隊からのバイタルサインは全て途絶。
あの地獄の底から汲み上げたような炎に巻かれては、無事であろうはずもない。
新型装甲服の装甲素材は、八百度の高熱から一分間以上着用者を守るという触れ込みだったのだが、あのようなマグマの如き業火を浴びせられては焼け石に水だったようだ。
「ニンゲンンンンンンンンッ!どこに隠れた・・・・・・素直に今出てくれば、楽に殺してやるぞ・・・・・・?」
口の端からちろちろと炎の舌を揺らしながら四つの単眼をぎょろぎょろと巡らせる。
やがて、先ほどの火炎の衝撃で吹き飛ばされてしまっていたジープから宝石を詰めたケースと、それを抱えていた部隊員を発見する。
見つかったことに気づいた陽動班の隊員は、宝石を投げ出して全速力で逃げ出そうとするも、失敗。
ファーブニルの長い腕で胴体を捕まれ、逃げ込んだ元洋服店から引きずり出される。
「・・・・・・俺の財宝を盗んで、ただで済むとは思わんよなあ・・・・・・?」
「ひっ、ひぃいいいいいいいいいいいいいいッ!?」
人形遊びでもするかのように両手合わせて十本の指先で器用に隊員の両腕を摘む。
摘む、とはいっても、人間を遥かに上回る巨躯の怪物のそれは、万力で固定されたかのようだった。
圧倒的な存在の差を思い知らされ、陽動班の隊員は抵抗する気すら起きず、この先に待つ惨劇にただただ恐怖した。
「・・・・・・牛裂き、というものが、人間の刑罰の中にはあるそうだな?」
「あ・・・・・・あ・・・・・・た、助けてくださいぃー!なんでもしますからァーーーッ!」
「俺の話を聞くつもりはない、か?これは、罰だ」
ぐちゃあ、とトマトケチャップが思い切り飛び出してしまったときのような音がした。
これから起こるであろう凄惨な拷問を予感していた彼らは、息を潜めて身を隠していたが、その瞬間、その覚悟はあっさりと打ち壊された。
ソフトビニールの、腕が動く人形を知っているだろうか?子供のころによく遊んだあれだ。サンダーバードとか、ウルトラマンとか。
そんな、おもちゃの人形のように、人間の腕が、あっさりともぎ取られた。
「うっぎゃああああああああああッ!!!げ、ぎいぃああああ・・・・・・!」
赤い液体が大量に噴出し、駅前のロータリーを汚す。
まるで血の雨のように、あそこまで容易く、あそこまで派手に人体を破壊するような存在に、アルファ小隊の誰もが竦んだ。
そんな中、アルファ3が立ち上がって駅ビルの階段を駆け上がる。
「くそォッ!見ちゃいられん!」
「アルファ3!動くな!死ぬぞ!」
「うおおおおおおおおッ!」
三階、およそファーブニルの横っ面が丁度撃ちごろの位置どり。
アルファ3は咆哮を上げてアンチマテリアルライフルの引き鉄を引き絞った。
十数発撃ち放たれたそれは、ファーブニルが反応するよりも先に彼の横っ面へと殺到する。
結果、多くの金属音と、ひとつの、ばちゅっ、とトマトが弾けたような嫌な音が駅前に響いた。
「ガッ・・・・・・!?」
右上の目玉をアンチマテリアルライフルで潰されたファーブニルは、あまりの衝撃と激痛に一瞬思考回路がショートする。
その隙を隊長を初めとしたアルファチームの者たちは見逃さなかった。
「弱点は目だ!撃て!」
下から、右から、左から、精密な射撃が飛んでくる。
ファーブニルの目はマグマのように滾った血液を垂れ流し、滴った血液はコンクリートを溶かした。
「GUAAAAAAAA!!!貴様ら!殺す!絶対に殺してやるぞ!」
激昂のあまりファーブニルは長くて太い腕を振り回して周囲の駅ビルを崩壊させる。
直撃した隊員は装甲の内側で血袋になり、崩落したビルの下敷きになった隊員はばらばらに四散した。
アルファ3もまた、ビルの崩落に巻き込まれて地面へと落下、細かい破片をいくつも受け、満身創痍の有様だ。
血涙を流すファーブニルは眼下のアルファ3を見つけ、牙を剥き出して炎の舌をのぞかせた。
「・・・・・・しぶといやつだ。小虫の分際で・・・・・・貴様は、塵も残さず焼き殺す」
首を上に向け、ファーブニルは大きく息を吸い込む。ドラゴンブレスの予兆だろう。
ただでは死ぬまいと、アルファ3は視線を巡らせる。すると、先ほど不発だったらしいTNT爆弾が少し離れた場所に落ちていた。
アルファ3は気合を込めて立ち上がると、それを拾い上げ、抱きかかえてファーブニルへと突貫する。
「うおおおおおおおッ!」
「ーーーッ・・・・・・」
そして、ファーブニルがドラゴンブレスを吐き出そうと、顔を下げた瞬間のことだった。
ファーブニルの喉もとからアルファ3の後方まで、ほのかに青く輝くプラズマの軌跡が描かれていた。
その青い一筋の光条はガウスライフルの弾丸の軌跡。負傷しながらも生き延びていた隊長は、最後の力を振り絞ってガウスライフルを使って援護射撃を行ったのだ。
ガウスライフルの着弾の衝撃によって、ドラゴンブレスを暴発させてしまったファーブニルは身体をくの字に曲げ、激痛に苦しみ悶える。
その隙をアルファ3は見逃さなかった。
「アルファ3っ・・・・・・・・・・・!行けェッ・・・・・・・・・・・!」
隊長の声援を背中に受け、隊員――――アルファ3はTNTを抱えてファーブニルの腕を駆け上がった。
これが最初で最後のチャンスである。敵、ファーブニルはガウスライフルの直撃にも耐える甲殻を持った化け物だ。
今の隊長の渾身の一撃ですら致命傷にはなっていない。痛みはすぐにひき、ファーブニルはすぐに復活を果たすだろう。
外からの攻撃は効かない、ならば。
「内側からならッ!」
悶え苦しむファーブニルの口の中、喉の奥まで、思い切ってTNTを投げ入れる。
異物が喉に入った感触にファーブニルはアルファ3の行動に気づき、彼が乗っていた腕を振り払おうとした。
しかし、アルファ3はそれよりも早くジャンプしていた。
何処に――――?それはもちろん、ファーブニルの口の中に、である。
「うおおおおおおおおっ!」
牙にしがみつき、喉の奥にあったTNTを目視する。フトコロから拳銃を引き抜き、TNTに狙いを定めようとする。
しかし――――!
「ぐゥっ!」
ごきり、ぐちゅり、とそんな音が、アルファ3の最初に感じたものだった。
それと、ファーブニルの口の中はやけに生臭くて、焼けるように熱くて、湿っていて、暗いな、とそんなことを考えた。
それからたっぷり数秒経ってから、彼は気づいた。妙な喪失感に。そう、彼の身体は胴体から、噛み千切られていたのだから。
鋭利な牙で背骨を噛み切られ、上半身と下半身が泣き別れになってしまったことに、彼は気づくと同時に絶叫した。
耐え難い喪失感と、凄まじい激痛に。
「っぐああああああああああああッ!」
自分という存在が何か違うものに変わっていく、そう、アルファ3は故アルファ3とでも言おうか、に変わろうとしていた。
しかし、まだ死ねない。彼は根性で自分の意識を覚醒させる。拳銃を取り落とさないように、力いっぱい握り締め、喉の奥のTNTに照星をあわせる。
口から、目から血が出てきた。視界が赤くそまってしまって狙いが上手く定まらない。
しかし、こんな時こそ気合と根性がモノをいうのだ。
「おおお、ごふ、ごぼッ、おおおおおおおッ!」
雄たけびを上げながら、狙いを定めて引き鉄を引く。
一発目、口蓋垂に当たってしまった。ファーブニルが喉の違和感に悶える。
二発目、三発目、四発目、五発目、六発目、七発目、いずれもTNTには当たらない。
最後の弾丸に祈りを込めた。そして、最後の引き鉄を引き絞った。
「なッ、なんだというのだ!?」
そんな時、ファーブニルが喉の奥に詰まった異物に危機を覚えて吐き出そうとえずく。
しかし、小さなTNTは喉の奥から食道まで落ちていってしまって最早取り出すことは不可能になってしまった。
そして、アルファ3はえずいた際にファーブニルの口から吐き出され、唾液塗れの彼は曇り空を眺めながら、静かに息を引き取った。
それから数秒後、ずぅん、とファーブニルの腹の底から、地面が響くような爆発音が鳴った。
更にもう一発爆音が鳴り響き、ファーブニルの首が、腹が、はち切れんばかりに広がり、ついには弾けた。
さながら縦に切腹でもしたような有様で、凄まじい生命力を持つ大悪魔ですら、これでは生きていられる筈もなかった。
「・・・・・・・・・・・・・部隊は全滅、か」
そんな死屍累々の駅前広場を眺めながら、隊長は横たわったままトランシーバーを取り出して通信をつなぐ。
「ファーブニル・・・・・じゃなかった。標的Aの殺害に成功。部隊は隊長、アルファ1を除いて全滅。標的Aの死骸と死者を運ぶための輸送車を要請する」
『イエッサ』
「しかし・・・・・・まともに死体が残ってるのは、アルファ3・・・・・・高村だけだな」
顔が焼け爛れ、唾液塗れで、胴体から下が無くなってしまっている同僚の死体を見下ろして、隊長は曇り空を見上げるのだった。
プロローグなんだ。うん。
マスクのマの字も出てないんだ。
大体この後の展開は予想つくと思うんだ。うん。
設定とかラストシーンとか先に決めちゃって、プロローグが後回しってよくあると思うんだ。うん。
マブラヴの方で面白い文章がかけない病にかかってしまったから気晴らしなんだ。
マスクド上海が超かっこよかったからというのも理由のひとつなんだ。うん。
一発ネタにしようか続き書こうか迷ってるから、感想欲しいんだな。うん。