アゴラ(藤沢数希) プロフィール
まだソーラーで日本の電力を補えるなんて思ってる人はいるのだろうか? もしまだいるなら、筆者が前回書いたエントリーでも読んでもらいたい。しかし筆者は太陽電池が好きだ。太陽電池というのは半導体技術を使って、光のエネルギーをうまく電流に変換するのだが、実はこれはちょうどLED(Light Emitting Diode)の反対になっている。両方共、半導体のp-n接合というのを使うのだが、ここに電圧をかけて電流を流せばLEDになるし、逆に光を当てれば電流が流れて太陽電池になる。
これはなかなか複雑な仕組みなので、簡単に説明しよう、という気もないが、シリコン半導体で説明すると、n型はシリコンに価電子が5つの不純物を混ぜたもので、p型はシリコンに価電子が3つの不純物を混ぜたものだ。

完全に純粋なシリコンはダイヤモンドと同じように4つの価電子が全て共有結合しているので絶縁体である。しかしここに価電子が5つのリンなどの不純物をほんのわずかに混ぜると、余った1つの電子が自由に動き回り導電体になる。価電子が3つのボロンなどを加えると、シリコンの供給結合に1つ穴が空いて、それがまるでプラスに帯電した電子のように振る舞い、やはり導電体になる。前者をマイナス(negative)のキャリアが電流を流すn型半導体、後者をプラス(positive)のキャリアが電流を流すp型半導体という。このプラスのキャリアのことをホールという。n型とp型の半導体を接合することをp-n接合といい、あらゆる半導体デバイスの基本構造になる。
LEDというのは、この電子とホールが結合する時に発する光を利用するのだ。逆に太陽電池というのは、光のエネルギーで電子とホールの結合を壊し、電流を発生させる。実はシリコンは太陽電池には適した素材だが、LEDには向かない。電子とホールが結合する時に、そのエネルギーの多くが熱に変わってしまうからだ。LEDにはガリウム砒素や窒化ガリウムなどが使われる。LEDは赤色と緑色は大昔から実用化されいたのだけれど、青色は夢の技術だといわれていた。世界中の研究者が青色のLEDを何十年も追い求めていたのだ。三原色が揃えば、モニターにも光源にも使えるから、発明できれば莫大な利益が転がり込んでくるからね。そしてそれを世界ではじめて発明したのが、四国の片田舎の中小企業で働く全く無名な日本人だった。中村修二
だ。結局、会社も日本の学会も彼を認めることができずに、破格のオファーでアメリカの大学の教授になった。
太陽電池も多くの重要な特許を日本のメーカーが抑えている。このへんの技術は日本が最も得意とするところだ。太陽電池は、電卓や時計など、いろいろなところで実用化されているし、大きな空港の屋根などに取り付けてあると、なかなかかっこいい。また、送電網から隔絶した場所でも発電できるので、災害用や軍事用としても使えるだろう。
しかし家庭用や産業用の電気を発電するには向かない。太陽光のエネルギー密度が低すぎて、それをかき集めるために莫大なコストがかかり、化石燃料や原子力と比べると、経済性という点に関して絶望的だからだ。太陽光は、そもそもまとまった量の発電には向かないのであり、向かないことを無理にやらせる必要もない、というのが筆者の考えだ。日本は特許料だけ稼いで、間もなく誰の目にも明らかな無残な失敗として終わるであろうドイツやスペインのことを笑って見ていればいいのである。一言でいえば、国民は太陽光発電などやらなければやならいほど得する。穴を掘って埋めるプロジェクトに税金を取られるようなものだから、だ。
筆者は「素人が作るから、いつできるかわからないし、品質も保証されないけど、店頭に並べた時は必ず市場価格の10倍で税金で買い取れ」などという自然エネルギー全量買い取り法案には、とうてい賛成できそうもない。
とはいえ、筆者のいうことが全て正しいとも限らない。本当に太陽光発電がまとまった電力を生み出すような未来がやってくる可能性もゼロではない。例えば、孫正義氏はアメリカではすでに太陽光発電のコストと原子力のコストが逆転しているという。筆者の知る限り、アメリカで太陽光発電のシェアは0.1%未満だが、確かに孫正義氏が正しい可能性も完全には否定できない。

偉大なベンチャー企業というのは、専門家がそんなことはできっこない、なんて否定してきたものから生まれてくることもよくある話だ。なるほどソーラーは原子力よりコストが安いというなら、莫大な財産を持つ孫正義氏が自ら証明してみせてくれないだろうか。彼のように金を持っていない多くの国民の税金などに頼らず。
太陽光発電では、エネルギー密度の低い太陽光をいかにかき集めるかを考えるのが大切である。保有財産が極めて少ない膨大な数の庶民からいかに少しずつ金をかき集めるかを考える前に、真剣にソーラーのことを考えてほしい。
まさか20年間、40円/kWhで買い取りが保証されなかったら、一度いい出したメガソーラー建設は中止します、なんて無粋なことはいわないよね。
これはなかなか複雑な仕組みなので、簡単に説明しよう、という気もないが、シリコン半導体で説明すると、n型はシリコンに価電子が5つの不純物を混ぜたもので、p型はシリコンに価電子が3つの不純物を混ぜたものだ。
完全に純粋なシリコンはダイヤモンドと同じように4つの価電子が全て共有結合しているので絶縁体である。しかしここに価電子が5つのリンなどの不純物をほんのわずかに混ぜると、余った1つの電子が自由に動き回り導電体になる。価電子が3つのボロンなどを加えると、シリコンの供給結合に1つ穴が空いて、それがまるでプラスに帯電した電子のように振る舞い、やはり導電体になる。前者をマイナス(negative)のキャリアが電流を流すn型半導体、後者をプラス(positive)のキャリアが電流を流すp型半導体という。このプラスのキャリアのことをホールという。n型とp型の半導体を接合することをp-n接合といい、あらゆる半導体デバイスの基本構造になる。
LEDというのは、この電子とホールが結合する時に発する光を利用するのだ。逆に太陽電池というのは、光のエネルギーで電子とホールの結合を壊し、電流を発生させる。実はシリコンは太陽電池には適した素材だが、LEDには向かない。電子とホールが結合する時に、そのエネルギーの多くが熱に変わってしまうからだ。LEDにはガリウム砒素や窒化ガリウムなどが使われる。LEDは赤色と緑色は大昔から実用化されいたのだけれど、青色は夢の技術だといわれていた。世界中の研究者が青色のLEDを何十年も追い求めていたのだ。三原色が揃えば、モニターにも光源にも使えるから、発明できれば莫大な利益が転がり込んでくるからね。そしてそれを世界ではじめて発明したのが、四国の片田舎の中小企業で働く全く無名な日本人だった。中村修二
太陽電池も多くの重要な特許を日本のメーカーが抑えている。このへんの技術は日本が最も得意とするところだ。太陽電池は、電卓や時計など、いろいろなところで実用化されているし、大きな空港の屋根などに取り付けてあると、なかなかかっこいい。また、送電網から隔絶した場所でも発電できるので、災害用や軍事用としても使えるだろう。
しかし家庭用や産業用の電気を発電するには向かない。太陽光のエネルギー密度が低すぎて、それをかき集めるために莫大なコストがかかり、化石燃料や原子力と比べると、経済性という点に関して絶望的だからだ。太陽光は、そもそもまとまった量の発電には向かないのであり、向かないことを無理にやらせる必要もない、というのが筆者の考えだ。日本は特許料だけ稼いで、間もなく誰の目にも明らかな無残な失敗として終わるであろうドイツやスペインのことを笑って見ていればいいのである。一言でいえば、国民は太陽光発電などやらなければやならいほど得する。穴を掘って埋めるプロジェクトに税金を取られるようなものだから、だ。
筆者は「素人が作るから、いつできるかわからないし、品質も保証されないけど、店頭に並べた時は必ず市場価格の10倍で税金で買い取れ」などという自然エネルギー全量買い取り法案には、とうてい賛成できそうもない。
とはいえ、筆者のいうことが全て正しいとも限らない。本当に太陽光発電がまとまった電力を生み出すような未来がやってくる可能性もゼロではない。例えば、孫正義氏はアメリカではすでに太陽光発電のコストと原子力のコストが逆転しているという。筆者の知る限り、アメリカで太陽光発電のシェアは0.1%未満だが、確かに孫正義氏が正しい可能性も完全には否定できない。
偉大なベンチャー企業というのは、専門家がそんなことはできっこない、なんて否定してきたものから生まれてくることもよくある話だ。なるほどソーラーは原子力よりコストが安いというなら、莫大な財産を持つ孫正義氏が自ら証明してみせてくれないだろうか。彼のように金を持っていない多くの国民の税金などに頼らず。
太陽光発電では、エネルギー密度の低い太陽光をいかにかき集めるかを考えるのが大切である。保有財産が極めて少ない膨大な数の庶民からいかに少しずつ金をかき集めるかを考える前に、真剣にソーラーのことを考えてほしい。
まさか20年間、40円/kWhで買い取りが保証されなかったら、一度いい出したメガソーラー建設は中止します、なんて無粋なことはいわないよね。
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