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《東京外大・日本語で読む中東メディア》「トルコ:インターネット・アクセスへの『検閲』へ反対の大規模デモ」ほか〜アラビア語、トルコ語、ペルシア語の現地紙から(5/30)

2011年05月30日
(約26800字)

◆「中東の論調」は、東京外国語大学中東イスラーム研究教育プロジェクト「日本語で読む中東メディア」で翻訳した記事の中から、ASAHI中東マガジンに転載しています。

「日本語で読む中東メディア」最新ニュース一覧 → http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/news_j.html

翻訳プロジェクトについて → http://www.tufs.ac.jp/common/prmeis/fs/

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◆【トルコ語紙】インターネット・アクセスへの「検閲」へ反対の大規模デモ

2011年05月15日付 Radikal紙

トルコでは長きにわたって、インターネットの禁止が議論されてきた。動画共有サイトYouTubeは2年半の間、裁判所の決定によってアクセスが禁止されていた。

禁止はYouTubeにとどまらなかった。ソーシャルネットワーキングサービス(SMS)、サーチエンジン、ブログへ入ろうとする人々は、何千もの「閉鎖」の告知に直面した。事態はこの問題だけでは収束しなかった。情報テクノロジーコミュニケーション協会(BTK)が、インターネットに4つの異なるフィルタリングを導入することが、8月22日に明らかになった。BTKが何度否定したとしても、この状態は「検閲」とみなされ、もはや‘最後の一滴’として人々に受け止められた。

何千ものインターネットユーザーは、仮想空間で高めた声を現実世界へ持ち出すことを決めた。デモ行動の知らせはインターネットのサイトを通じて、光の速さで広がった。今日午後2時にトルコの31の都市で何千もの人が通りへ出て「禁止は禁止だ」、「俺のインターネットに触れるな」と言った。このデモのために、Facebook上で作られたページに登録している人の数は594,000人を超える状態となった。詳しい事はこちらwww.internetimedokunma.com

■8月22日に何が起こるのか?

2011年8月22日に、「インターネットの安全な使用に関する方法と原則」という名の条例が施行される。この条例によると、「仮想世界」は次のように形作られる。

ユーザーは4つのインターネットのフィルタリングの内1つを「法に基づき」選ばなくてはならない。この4つのフィルタリングは、「家族」、「こども」、「国内」「標準パッケージ」というように並べられている。インターネット加入者は、このパッケージの中から1つを選ぶ。しかしながら、このパッケージで、公式に禁止とされてはいない多くのサイトへ入ることができなくなる。

フィルタリングを外したり、外そうとしたりすることは犯罪としてみなされる。また、インターネットサービス業者は、人々がフィルタリングを外すことを阻止する義務を負っている。条例によると、全てのユーザーは決められたユーザー名とパスワードだけでインターネットへ入ることができる。すなわち、人々の入ったサイトや行った作業は、記録される可能性がある。

■BTKは何と言っているのか?

BTKの会長タイフン・アジャーレル氏の「検閲」疑惑に対し、要約すると次のように弁論している。

「トルコにおいて、インターネットの安全な使用に対する苦情や要求に基づき、安全なインターネットサービスの必要性が明らかになった。「安全なサービス」は義務ではなく、それを望むユーザーが設定することができるだけだ。もし望まないならば、インターネットへのアクセスは、現在の状態とまったく変わらない。」

■目覚めよ、トルコ!

インターネットにおける禁止に対し、「禁止は禁止だ」というスローガンで作られた同名のサイトでは、次のような宣言が掲載されている。

「まず、連中はブログを書くな、動画を見るなと言った。それから、そのサイトには入るなと言った。目覚めよ、トルコ!彼らの手をあなたのキーボードに触らせるな、ドメインネームサーバー(DNS)の調整に触らせるな!あなたのマウスを触るものはあなたの手を触るのだ。忘れるな、トルコ!ブログを書くこと、動画を見ること、音楽を聴くこと、ポルノを見ること、これらは権利だ!今日インターネットを汚すものは、明日あなたの生活を汚すことになるのだ。あなたのインターネットに触るものたちを許すな!禁止は禁止だ!」

(翻訳者:國生千裕)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22591

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◆【アラビア語紙】シリア:アサド大統領に対するEUの制裁に対して「得をするのはイスラエルだけ」と非難

2011年5月24日『アル=ハヤート』

【ブリュッセル、ダマスカス、アンマン:本紙、AFP、ロイター】

ダマスカスは昨日、「シリア・アラブ共和国の名のもとに公式筋」が、バッシャール・アサド大統領を含むシリアの高官に対する欧州の新たな制裁に異議を唱えた。この声明は、資産凍結と欧州への渡航制限を骨子とする。シリアはEUが内政に干渉し、「その安定を揺さぶる」ことで、「イスラエルのユダヤ性強化」を行おうとしていると非難した。

EU加盟各国外相は、昨日のブリュッセルの会合で、ダマスカスへの政治的・経済的圧力強化を決定し、長時間にわたる議論の末、アサド大統領を含む10人の高官に対シリア制裁を拡大することを発表した。そのうえで、EU投資銀行に対して「現段階でシリアへの投資事業に合意しないよう」求めた。

またEUはこれとは別に声明を発表し、シリア指導部に対して、国連の人権調査団や人権団体の入国許可、政治犯の即時釈放、すべての分野を包摂する国民対話の実施、真の政治改革の実施を、「具体的な行程に基づき延滞なく」行うよう呼びかけた

ウィリアム・ヘイグ英外相はアサドを含むかたちでの制裁拡大が「正しい判断」だと述べ、「シリアでの弾圧は続いており、重要なのは平和的に行動する権利、政治犯釈放、弾圧に依らない改革路線が見られるようになることだ」との見解を示した。

ヒラリー・クリントン米国務長官は、約千人がシリアで殺害されたと述べた。クリントン国務長官は、英国外相との共同記者会見で「この蛮行は停止されねばならず、シリア国民の合法的な希望は尊重されねばならない」と述べた。また「ヘイグ外相と私はアサド政権に宛てた書簡に関して完全に意見の一致を見ている…。殺戮、拷問、逮捕を止め、すべての政治犯と抗議行動参加者を釈放せよ。包括的で信頼できる民主的変革プロセスのため、対応すべき要求に応えることから始めよ」と付け加えた。

新たな制裁にもかかわらず、EU諸国は、キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表の言葉を借りると、シリアの体制が「真の包括的政治改革」を実施する望みがあると考えている。アシュトン上級代表はEU外相会合に出席する直前「(シリア)政府は今行動せねばならない」と述べた。

一方、ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外相は、「改革の道を進めば」アサド大統領がこの制裁を回避できると述べた。一方、オランダのウリ・ローゼンタール外相は、シリアで「抜本的変革」が行われるため圧力を継続することが重要と述べた。

米国は先週、シリア大統領を制裁リストに既に加えており、アサド大統領に、暫定指導部となるか退任するか、という選択肢の前に立たされていると警告していた。しかしEUはまだこれほどまでに厳しい姿勢をとるには至っておらず、アサド大統領に退任を求めていない。欧州高官は昨日、AFPに対して欧州の制裁は「暴力停止と、アサド(大統領)に改革を受け入れさせること」をめざしており「退任を強いることではない」と述べた。

EU各国外相は声明で「最上層部における高官をさらなる対象とすることでこの制裁措置の強化を決定した」と述べた。最上層部とはアサド大統領を意味する。そのうえで「EUは、シリアの指導部が現状路線の転換を選択しない現下において、さらなる措置を延滞なく実施することを決定した」と続けた。制裁対象となるシリア大統領とシリアの高官9人の氏名は今日、EUの官報で発表され、すでに制裁対象となっているマーヒル・アサド(大統領の弟)ら高官13人のリストに加えられ、そのうえで5月10日付で、資産の凍結、入国査証取得の禁止が行われることになっている。

ダマスカスは「シリアとその人民」に対するEUの決定を非難し、内政への「目に余る干渉」、「その治安を乱そ、現在および未来における人民の決定に覇権を及ぼそうとしている」とみなした。またダマスカスは、サイクス・ピコ合意後にイスラエル国家を建設した「古びた植民地主義」が果たした約束に想起させたうえで、この決定をシリアに対する「計略」、「イスラエルのユダヤ性を強化する前提」と捉えた。シリア消息筋は、「改革プログラムの貫徹」へのシリアの「意思」と、「国民的決定の独自性、完全なる主権、国民の治安および人民の未来への熱意を確固として」守る姿勢を強調し、いかなる対抗措置も「それによってもたらされる犠牲のいかんにかかわらず、シリアを国民的・民族的方法から逸脱させることはない」とダマスカスが考えていると明言した。

ワリード・ムアッリム外務大臣兼在外居住者担当大臣は、シリア・アラブ・テレビとのインタビューで、欧州の決定が、シリアの国益を損ね得るのと同様、欧州の国益を損ねるだろうと述べた。また今日シリアが(欧州を)必要としているのと同様、欧州がシリアを必要としているとし、欧州が経済制裁を通じて、自らをシリア国民と対立させていると述べた。そのうえでえこれらの措置がワシントンへのキャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表の訪問後になされたと指摘した。

ムアッリム外相はまた、欧州が煽動を目的としているようなこの制裁を発動したことは間違っていると付言し、欧州のこうした決定が、「古びた植民地主義」国であるフランスと英国の積極的努力の末にくだされ、バルフォア宣言以来のこれらの国が果たしてきた植民地主義的役割を思い起こさせると述べた。

そのうえで「現在起きていることで得をするのはイスラエルではないのか?」と問いかけ、イスラエルが和平実現を求める気運から身を引き、入植政策を継続し、パレスチナの土地を侵略しているのに、世界では誰もイスラエルを非難していない、と明言した。

(翻訳者:青山弘之)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22624

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◆【アラビア語紙】シリア:事態の沈静化を条件にアサド大統領が米国に対イスラエル和平交渉再開を提案、とイスラエル紙が報じる

2011年5月23日『アル=ハヤート』

【ダマスカス、アンマン、ナザレ:本紙、AFP、ロイター】

ヒムス市、サクバー市で、発砲、逮捕、包囲が続くなか、「自由の金曜日」犠牲者の葬儀参列中に治安部隊に射殺された人々の葬儀に数万人が参列した。複数の活動家と目撃者によると、ヒムス市内のタッル・アン=ナスルからアル=アッバースィーヤ広場に至る地区では昨日、葬儀が「包囲」sれた。また1万人以上がダマスカス郊外のサクバー市で一昨日殺害された犠牲者1人の葬儀に参列し、「政権打倒」を求めるシュプレヒコールを叫び、治安部隊が葬儀に介入し、発砲したという。またヒムス、イドリブ、ダルアーでは治安部隊による逮捕が行われた。

イスラーム諸国会議機構が、シリアでの暴力の「激化」に遺憾の意を表明する一方、ヨルダン・ムスリム同胞団は「包囲、殺戮、逮捕」に曝されているシリア国民との団結を宣言した。

現地では、ヒムスで、「自由の金曜日」に殺害された13人の葬儀参列中に治安部隊の銃撃で一昨日死亡した5人の葬儀が執り行われた。

シリア人権国民機構のアンマール・カルビー所長はAFPに対して電話で「ヒムスで、土曜日の犠牲者の葬儀中、治安部隊による発砲が行われ、タッル・アン=ナスルからアル=アッバースィーヤ広場に至る地区では、依然として葬儀が包囲されている」と述べた。

またカルビー所長は「ヒムス市では、とりわけバーブ・アムル地区、バーブ・アッ=スィバーウ地区で逮捕が行われている。またイドリブ(西部)では、アリーハー、ビンニス、マアッラ・アン=ニウマーン、カファルナブルで逮捕が行われている」と指摘した。

シリア人権監視団によると、昨日朝、外出禁止令が出ていたダルアー郊外のヒルバト・ガザーラで数十人が逮捕された。

複数の人権活動家は「殺戮は国内の混乱と憎悪を煽り、感情を見出す」との立場を示した。

活動家の一人はAFPに対して「シリア当局によって現在までに各県での国民対話をめぐって示されている提案、国民の様々な集団との会見はままごとに過ぎず、真剣さを欠いている。なぜなら当局は各県の福祉に関する要求に力点を置いているが、政治勢力との間では何も行われていないからだ」と述べた。

一方、国営のシリア・アラブ通信は、内務省筋の話として、警官1人が一昨日夜、「サクバーで武装テロ集団」の発砲によって殺害された、と報じた。

同通信は「内務治安部隊の殉職者は事件発生以来32人に上り、また負傷者は547人となった」と報じた。一方、シリア人権監視団は、犠牲者が1003人に上り、うち863人が民間人、140人が治安要員・軍人、と発表した。

アラブ人権機構とヨルダン・ムスリム同胞団の政治部門であるイスラーム行動戦線は共同声明で、デモ参加者に暴力を行使し続けるシリアの体制を非難した。

同声明は、「包囲、殺戮、逮捕」に曝されているシリア国民との連帯を改めて呼びかけ、抗議行動に対して体制が行う行為は「人道に対する罪」のレベルに達していると評した。

また「国民と戦い、民間人数百人を殺害するいかなる政体も…集団処罰がなされなければ、正統性を失う」と述べた。

イスラーム諸国会議機構は昨日声明を発表し、「(シリアの)治安当局に自制と罪のない民間人への攻撃を停止する」よう呼びかけた。また「国家によってより重要な国益を優先し、対話とシリア指導部が治安と安定のために約束した改革を通じて安定を実現し、民主主義と正しい支配を求めるシリア国民の希望に応える必要」を強調した。

アラブ連盟本部で昨日開催されたアラブ議会第2回会合では、道議会議長国のアリー・ディクヤースィー(クウェート)議長とシリアのアブドゥルアズィーズ・ハサン使節代表とが激しいやりとりを行った。この対立はディクヤースィー議長がシリア政府を激しく批判し、閉幕声明にシリアでの暴力行為を非難する項目を加えるよう求めたことを受けたもので、これに対してシリアの使節団はこの動きを「買弁」と非難した。長時間にわたる議論の末、シリアを支持する国々が議長とその支持国の行動を抑え、シリア非難を含まない声明を採択した。

他方、イスラエルの『イェデイオト・アハロノト』は昨日、複数の米国筋の話として、バッシャール・アサド大統領が先週、米政権に複数の書簡を送ったと報じた。この書簡には、アサド大統領がイスラエルとの和平交渉開始の準備を行っていること、意見の相違が見られる問題の98%が合意されたことが述べられており、「シリア情勢の安定後」にイスラエルとの和平交渉再開を行うことが提案されている、という。

ワシントンではヨルダン国王のアブドゥッラー2世が、アサド大統領に対して国民との対話を呼びかけた。ヨルダン国王は、ABC放送とのインタビューで「ヨルダンがシリアの安定回復と平穏化を支援できるかどうかを知るため、バッシャール・アサドとたびたび話した」と述べた。

またシリア大統領が「政権を指導するとともに、国民の方を向き、対話をせねばならない」と付け加えた。

(翻訳者:青山弘之)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22615

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◆【アラビア語紙】社説:シリアで再び流血の金曜日

2011年05月20日『クドゥス・アラビー』

金曜礼拝の後、シリア各地でデモ参加者数万人が街頭に出ていくことは当たり前のことになってきた。また、治安部隊が民主化や自由を求めるデモ参加者に向けて発砲するのもお馴染みの光景になってきた。しかし今回の新しい展開は抗議行動が拡大する様相をみせていることで、抗議行動は当局が用いる治安部隊による解決策の成功によって後退し始めたという考え方が誤りであることが示されたかたちだ。

人権団体が金曜日の抗議デモで27人が亡くなったと語ったのは事実であり、この数はあらゆる基準に照らして大きな数字ではあるが、それより重大なことは、以下の根本に関わる2つの点に体現されるものだ。ここでそれらに言及しておかないわけにはいかない。

一点目は、抗議行動が北東地域、特にダイル・アッ=ザウルやカーミシュリーといったクルド人の人口密度が高い地域に拡大していること。

二点目は、ビラード・アッ=シャームのコーラン読誦者の長老カリーム・ラージフ師がテレビの生放送で、礼拝堂の常連たちが金曜礼拝の後に始まるデモに参加することへの不安を口実に治安部隊が彼らの礼拝を妨害し乱暴な対応をしていることに抗議して、辞任を表明したことである。

昨日(19日)クルド人がこのように一斉に抗議行動の表に出てきたことは、彼らの立場の変化を反映しており、おそらくシリア当局にとっては重大な問題が引き起こされるだろう。シリア北部のクルド人地域は、あちこちで限定的な例外はあったものの、過去5週間完全に平穏な状況だったのである。

シリアのバッシャール・アル=アサド大統領はクルド人がアラブ人同胞の抗議行動に加わることの危険性に気づいたため、クルド人20万人にシリア国籍を与える大統領令を発するという非常に巧妙な先手を打った。しかしこの措置は重要なものだったとは言え、それがもたらしたのは一時的な休戦状態であり、昨日になってそれは急速に崩壊し始めた。

シリア政府は困難な状況に置かれている。デモ参加者たちの殺害が続けば、市民の怒りがエスカレートする。殺害行為が増せば、葬儀の回数が増える。葬儀では怒りの感情が燃え上がり、それは治安部隊の介入とさらなる発砲を招き、新たな犠牲者がでて、また葬儀が行われるという事態をもたらすのである。

これは本当の出口のない恐ろしい循環であり、いかなる政治的解決策も存在せず、愛国的な反体制勢力やその指導部との真剣な対話ができない状況では、緊張状態が高まり、状況はいよいよ危機化することになるのだ。

デモ参加者の一人が掲げた「戦車との対話はあり得ない」というプラカードはこの問題をよく要約している。プラカードに書かれた内容は、シリア当局がヒムスやダルアー、バーニヤース、ダマスカス近郊県の村々など、蜂起の起きた町に軍の戦車を投入したことを指すものだ。

シリア大統領は治安機関の指導部に殺害行為をやめるよう命令を発したが、犠牲者の数は昨日さらに増えた。このことは、治安機関の幹部が事態を統制し民衆蜂起を終わらせるために最も有効な手段と信じて、あくまで血生臭い手段をとろうとしている証拠だ。それは得るものがないだけでなく、完全に真逆の結果をもたらす手段だということは、これまでの展開によって証明されているのだが。

我々は今、昨日の金曜日に何が起きたのか知っている。しかし我々は、次の金曜日に何が起き得るか知らないし、予言することもできない。ただ分かっているのは、さらなる死傷者が出て葬儀が行われるだろうということだ。それはシリアの国や当局や国民にとって同時にも悪い結果をもたらすことに他ならない。

(翻訳者:松尾 愛)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22599

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◆【アラビア語紙】アズハル総長:「ムバーラク前大統領には法の前に慈悲を」

2011年5月21日『クドゥス・アラビー』

【カイロ・ベルリン:DPA】

アズハル総長である大イマーム、アフマド・アッ=タイイブ師が、エジプトのホスニー・ムバーラク前大統領に寛大な措置を求めた。

明日日曜[5月22日]刊行のドイツ紙、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙とのインタビューでタイイブ師は、「ムバーラク前大統領は長期にわたりエジプトのためにたくさんのことをした。しかも今や高齢で、病床にある」と述べ、法の前に慈悲を考慮すべきだとの考えを示した。

一方、タイイブ師はエジプトのコプト教徒とイスラーム教徒の間の緊張関係に対して懸念を表明したが、双方の間で内戦が勃発する程の脅威ではないと強調した。

大カイロ圏のインバーバ地区で今月初めに起こったコプト教徒とイスラーム教徒の間の衝突では15人が死亡、数十人が負傷している。

タイイブ師は、[コプト教徒とイスラーム教徒の間に]こうした緊張を生じさせている責任は、エジプトで内乱を引き起こすことで利益を得る内外の勢力にあるとし、エジプトの歴史に根差したものではないと強調した。

また同師は、エジプトの危機的な状況のため、軍がさらに長い間政権に留まる必要が出る可能性を否定しなかった。

その一方で、ムバーラク体制の崩壊は国民の意思を反映したものであり、アズハルは変革を望む国民を支援すると強調した。

(翻訳者:秋山俊介)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22590

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◆【アラビア語紙】パレスチナ自治政府:「イスラエルがオバマ演説に合意すれば交渉再開」

2011年05月22日『アル=ハヤート』

【ラーマッラー、ガザ:AFP、ロイター】

パレスチナ大統領府のナビール・アブー・ルダイナ報道官は、国連でのパレスチナ国家承認を目指すよりもイスラエルとの和平へ向けて尽力する方が好ましいとするパレスチナ側の考えを明らかにした。一方、ファタハ中央委員会のナビール・シャアス氏は、米国の仲介によるイスラエルとの和平プロセスが膠着状態に陥る中、パレスチナ側は今年9月の国連総会で加盟国としての承認を得るべく尽力するとの考えを示した。

アブー・ルダイナ報道官は、「入植停止を前提とした交渉へ戻るためのチャンスを9月まで与える、というのが我々のスタンスだ。もし交渉へ戻れるなら、それこそが最善の選択だ。しかし9月までに合意するか、明確な土台の下で真剣な交渉に入る事が出来なければ、そのときはパレスチナ人民の選択肢の一つとして国連に依拠することが挙げられよう」と言明した。

アブー・ルダイナ氏はAFP通信に対し、一昨日ホワイト・ハウスで行われたバラク・オバマ大統領との共同記者会見でのイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の発言について、「1967年以前の境界線に基づくパレスチナ国家を樹立するというオバマ提案に対するイスラエルの公式的な拒否表明であり、国際的な取り決め及び国際法を拒絶するものだ」と述べた。

ネタニヤフ首相はオバマ大統領との共同記者会見で、「イスラエルに和平のため寛大な解決策を実行する準備があるとしても、1967年の境界線に戻る事は出来ない。同境界線は防衛不可能だからだ」とした上で、マフムード・アッバース大統領はハマースとの同盟か、イスラエルとの和平かを選択しなければならないと述べた。一方オバマ大統領は、和平プロセスに関するイスラエルとの「相違点」に言及し、中東情勢はチャンスと共に「危険」も併せ持っていると警告した。

オバマ大統領は木曜日の演説でも、パレスチナ側の「イスラエルから正当性を剥奪しようとする動き」に警告を発し、「9月の国連総会でイスラエルの孤立を図る象徴的な行動をとっても、独立国家の樹立には結びつかない」と指摘し、パレスチナ内部和解合意の有効性に疑問を呈していた。しかしオバマ大統領は「1967年の境界線に基づく」交渉を訴えるパレスチナ側の要求を「両者の合意による領土の交換と併せて」支持した。

アブー・ルダイナ報道官はネタニヤフ首相の発言を「受け入れがたい」ものと見ており、米大統領と中東和平カルテットに対し「イスラエルに国際的権威及び1967年の境界線に基づくパレスチナ国家を受け入れさせる」よう呼びかけた。さらに「最終的地位に関する問題、特にエルサレムの帰属とパレスチナ難民の帰還権については、国際的取り決めに基づいた交渉のテーブルで解決されなければならない」と述べ、「パレスチナ和解はパレスチナ内部の問題であり、誰にも関係のない事柄だ」と付け加えた。

シャアス氏は米大統領に対して、占領下ヨルダン川西岸地区と東エルサレムを含むパレスチナ国家の建設を強化する各国の動きに合流するよう強く求めた。また同氏はロイター通信に対し、「ネタニヤフ氏が『防衛不可能な境界線』などと口実を並べ立てた今となっては、もちろん我々は国連に依拠することになるだろう。ネタニヤフ氏の口実は、 我々の土地を略奪し続け、ヨルダン渓谷におけるパレスチナの土地の3分の1の面積を支配し続け、人口上の既成事実を作り上げるためのものだ」と述べた。また、「我々はオバマ大統領に言おう。大統領閣下よ、あなたには、1967年の境界線に基づくパレスチナ国家の承認を支持し、同国家の国連加盟を支援する以外に選択肢はない。我々はあらゆる非暴力的手段を用いて9月に国連へ赴く」と述べた。(翻訳者:川上誠一)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22598

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◆【アラビア語紙】『アル=カーイダ』のザワーヒリー氏がアラブ世界の革命を支持

2011年5月23日 『アル=ハヤート』HP1面

【ニコシアAFP通信】

『アル=カーイダ』の中心人物であるアイマン・アル=ザワーヒリー氏が、アラブ世界目撃した変化を祝福した。また、エジプトでイスラーム法を適用するよう呼びかけた。これは、イスラーム系のサイトを観察している米国の「サイト」が公開した同氏の動画で言及されていた。

49分間に及ぶ今般の映像メッセージについて、「サイト」は、以下の通り説明した:この映像は、米国がウサーマ・ビン・ラーディン氏の住処を襲撃、殺害した5月2日よりも前に録画された。ザワーヒリー氏は、リビア、シリア及びエジプトの国民向け「腐敗した、専制的な諸体制に対する蜂起」を呼びかけた。また、「イスラーム体制、公正と合議制(シューラー)の体制、不正と隷属の拒否」へ移行するよう呼びかけた。

ザワーヒリー氏はリビアについて、「北大西洋条約機構(NATO)は慈善団体ではなく、世界中の傲慢勢力をより傲慢にするための同盟である。NATOは今回の攻撃でカッザーフィー大佐が築いた腐敗した体制を転覆し、代わりに自分たちに従属する体制に置き換えようとしている・・・そしてリビアを新たなイラクにしようと欲しているいるのである。」と述べた。また、「リビアの民自身の能力を強化することを通じ」、「リビアとその周辺諸国のイスラーム共同体は、NATO軍の士気を低下させ、抵抗するべきだ」と訴えた。

 ザワーヒリー氏はまた、軍最高評議会を激しく批判した。同評議会は、2011年2月11日にムバーラク前大統領が退陣して以来エジプトを統治している。

ザワーヒリー氏は、同評議会を批判して以下の通り述べた。「アラブ世界の政府はたるんでいる・・・こうした気のたるみは、エジプトを指揮する軍評議会において最悪の形で示されている。軍評議会は近隣のアラブ、イスラーム諸国を支援せず、エジプトの民族的安全を脅かす侵略者に隣接することに満足した。」

そして、ザワーヒリー氏は、エジプトでイスラーム法を適用するよう訴えた。同氏は、「(エジプト)内政上より重要な課題は法制と司法の改革であり、必要とされるより重要な法制改革は憲法第8条の改正である。憲法第8条を、イスラーム法の裁定を立法の源泉とし、イスラーム法に反する憲法や法律の諸事項を無効とするよう改正すべきだ。」と主張した。

ザワーヒリー氏は、エジプト憲法75条を、「ムスリムであることや男性であることをエジプトの大統領となる条件にしておらず、この点は法学者の合意に反している。」と批判した。

 ザワーヒリー氏は三つ目のメッセージで、「シャームのライオンであり、獅子であり、名誉であり、自由人であるシリアの民」を賞賛した。同氏は、「ジハードとリバートの地であるシャームの民に、体制に対する抵抗運動と防衛を継続するよう呼びかける。この体制は、下等で、不正で、傲慢で、自らの人民を殺す体制であり、ゴラン高原(を解放する義務)から逃避し、自らの人民を虐殺する体制である。」述べた。

さらに、ザワーヒリー氏は「シャームのライオンたちよ、この体制に対するデモと蜂起を継続せよ。この体制は、対テロ戦争と称するイスラームに対する米国の戦争に参加している。」と付け加えた。

(翻訳者:加瀬冴子)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22621

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◆【アラビア語紙】コラム:アラブの革命地図を読み解く

2011年5月18日『クドゥス・アラビー』

【ユースフ・ヌール・アワド(スーダン)】

数日前私の注意を引いたニュースの一つに、バッシャール・アル=アサド大統領が反体制勢力との対話のための委員会の設置を発表したというニュースがある。この委員会の設置は、政権が治安部隊による解決に失敗し、国家側の正当化できない武力行使によりシリア国民数千人の死者が出た後のことである。大統領は誰がこのような対話を求めたのかについては言及しなかった。シリアで起こった政権に対する抗議運動は他のアラブ諸国と比べて比較的平和裏に始まり、当初求めていたのは自由だけであった。ところが政権側の武力行使により反体制勢力の抗議行動はエスカレートし、政権打倒 を求めるようになった。アラブ世界全体が歴史上の新たな段階に入り、革命に沸く時勢においてこのような要求はもはや非合法的なものではなくなっていたのである。

対話委員会を設置するためには対話を望むもう一方の当事者の存在が不可欠であるということに大統領はこの段階で気づくべきだった。そのような当事者は存在しなかった。なぜならシリア国民の大半はもはや恐怖をかなぐり捨てたからである。国民は疑問を抱いている。なぜ40年にわたる体制を父親から引き継いだ者が自分たちを支配するのか、国内にアサド大統領よりも優れた支配者はいないのか、バアス党はなぜ「バアス党は統治する権利を有する唯一無二の党である」という条項を憲法に盛り込むことにこだわるのか、と。今日のアラブ世界の現実の中で、バアス党のイデオロギーは最早全く存在感をもっていないのである。こうした事実から明らかなのは、シリアの統治体制が今日に至るまで、国が歴史上の新たな段階に入りつつあるということを理解するための用意ができていないということだ。これはシリアの政権だけの問題ではなく、体制に協力する多くの者たちの問題でもある。我々の考え方や見方に政治的な一連の作品を通して絶大な影響を与えた著名な俳優ドゥライド・ラッハーム氏はテレビに出演し、「シリア軍の任務は祖国の安全を維持することだ」と発言した。つまり軍は体制の安全を維持するためであればやりたいように行動するということだ。あのガウワール・アッ=タウシェ[※ラッハーム氏が演じていた喜劇の主人公]が、40年以上も前から占領下にあるゴラン高原の解放に軍が果たすべき役割について、何ら問いかけることをしていないのである。

こうした状況はシリアだけに限られるものではない。リビア国営テレビを見ていると、リビア国内で革命が起きていることを聞いたことすらないかのように思われる人々からの投書が読み上げられている。彼らはNATO軍が行っている「十字軍の植民地主義的侵略」について語り、カッザーフィー部隊が殺した数千の人々のことなど耳にすらしていないかのようである。またリビア国営テレビはカッザーフィーの息子であるサイフ・アル=アラブ氏と3人の孫の死に関して、カッザーフィーへの悔やみを長々と綴った投書を放送しているが、彼らの殺害された責任がカッザーフィー本人にあるということに気づいてもいないというのは全く奇妙なことだ。今重要なのは、事態が沈静化した後、カッザーフィーにリビアの統治を続けることができるかということだ。続けることができないのであれば、リビア国民に対して彼が攻撃を続行している正当な理由はどこにあるのだろうか。自分が民主的な手段で支配者になったのではなく、アラブ民族の歴史における暗黒時代にクーデタ主義者らが取ったのと同じ方法で権力を掌握したということは、カッザーフィー自身が承知しているのだ。こうした動き全てを注意深く見ると、「このような革命における支配体制の打倒は必然的にアラブ世界が歴史上の新たな段階に入りつつあるということを意味する」と考える一般的な傾向に流される必要がないということが分かる。真の変革は支配体制の打倒だけではなく、代わりのものを創り出すことによって実現する。代替となるものは現時点では存在せず、それをもたらすことは困難を伴う。なぜならアラブ世界は常に、西洋世界を見習うべき模範として見てきたからである。ところが今では、西洋世界が錆び付いた段階に入ったということを裏付ける証拠がいくつも存在し、西洋世界が主唱し続けてきた価値観の多くはもはや存在感を失っている。西洋世界は政治的・経済的な利益を優先し、価値を蔑ろにしているからである。我々が言いたいのはイスラエルは考え方を見直す必要があるということである。なぜならイスラエルを取り巻く世界は変化しているからだ。これまでパレスチナ人が多くの提案をしてきたにもかかわらず、イスラエル国内の右派強硬派はこうした提案に応じないことを選択してきた。エジプトの革命なしでは起こり得なかったファタハとハマースの関係改善が進んでおり、イスラエルはその意義を見過ごすことはできない。これまでに述べた事情を踏まえると、アラブ世界の地図は確かに変わりつつあるが、現段階ではっきり読み解くことはできない。我々に感じられるのはあらゆる可能性への扉が開かれているということだけであり、その大部分は変革の可能性である。

それゆえに、アラブのすべての政権は国民への対応の方法の変革へと向かわねばならない。アラブの体制がとるたった一つの選択肢が、シリア、イエメン、リビアで起こっているような暴力であるというのは理に適っていない。それよりもはるかに良い選択肢はたくさんあるのだ。

(翻訳者:秋山俊介)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22558

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◆【イラン・ペルシア語紙】アフマディーネジャード大統領「我々も電波を使って西洋の家庭に進出するべきだ」

2011年05月18日付 Jam-e Jam紙

大統領は国内で得られてきたさまざまな成果や進歩について触れた上で、通信・情報テクノロジーの分野でもイランは飛躍を遂げていると指摘し、「イラン・イスラーム共和国には、この領域でも人類の能力のフロンティアを突き進むだけの潜在力がある」と述べた。

マフムード・アフマディーネジャード大統領は昨日、「首脳会議ホール」で開かれた第一回「通信・情報テクノロジー国民記念祭」の席上、通信情報技術相の発言に言及した上で、〔同相から〕発表された計画が予定よりも早く実現することに期待を表明した。

大統領はまた、演説の別の箇所で、通信の発展は諸刃の剣であると指摘し、「彼ら〔=西洋諸国〕が電波を使ってわれわれの家庭に進出しているように、我々もまた、彼らの家庭に進出しなければならない。とはいえ、我々が信じている未来は、彼らが世界の諸国民に対して強要しようと望んでいるものとは異なる」と述べた。

(翻訳者:古賀夏樹)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22579

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◆【イラン・ペルシア語紙】情報相、フェイスブックにペルシア語ページを立ち上げたシオニズム体制への対抗措置を呼びかけ

2011年05月12日付 Mardomsalari紙

イラン情報相は、シオニズム体制の外務省が最近、フェイスブックにペルシア語ページを立ち上げたことに対し、情報省が対抗措置を講じていることを明らかにした。

 ファールス通信の政府担当デスクが伝えたところによると、ホッジャトルエスラーム・ヴァルモスレミーン〔※シーア派宗教指導者の位階の一つ〕のヘイダル・モスレヒー情報相は昨日の閣議の傍ら、記者らとの会見に応じ、「シオニズム体制がイラン人ユーザらの個人情報を収集するために、フェイスブックにペルシア語ページを立ち上げたことに関し、イラン国民同胞にどのようにアドバイスするか」とのファールス通信記者の質問に、「国民は反シオニズム的な気質を維持し、このページへの必要な対抗措置を講じることで、革命の士気を示すべきである」と答えた。

〔※訳註:なお、フェイスブックはイランではフィルタリングの対象となっており、プロキシーサイトを使わない限り、国内のイラン人ユーザがフェイスブックにアクセスすることは表向きできないことになっている〕

 シオニズム体制によるこうした行動に対して情報省が講じた対抗措置について、同氏は「情報省も、フェイスブックにペルシア語ページを立ち上げるというシオニズム体制のこうした動きに対し、必要な対策を講じている」と語った。

 少し前、シオニズム体制の外務省はイラン人ユーザらの個人情報を収集し、イラン国民同胞の世論に影響を及ぼすことを目的に、フェイスブックにペルシア語ページを立ち上げていた。

 情報相はまた、「ビン・ラーディンは〔米によって殺害される前に〕すでに病死していたとするイラン側の証拠は、噂話にすぎないと〔欧米筋から〕指摘されているが、このことについてどのように考えるか」との質問に対し、「こうした意見を述べている人たちは、イラン・イスラーム共和国の敵であり、彼らがこうしたことを申し立てるのはごく自然なことだ」と答えた。

 ホッジャトルエスラームのモスレヒー情報相は、マルウェア「スタース」に対してどのような措置が講じられているかとの質問には、「このウイルスに対してはすばらしい対策が講じられている。このウイルスをコントロールするために、関係機関には警告が出されている」と答えた。

(翻訳者:都甲佳奈)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22568

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◆【トルコ語紙】コラム:エルドアン首相を支えるのは貧困者と女性たち

2011年05月19日付 Hurriyet紙

エルドアン首相のマラティヤでの演説に集まった熱狂的な群衆の最前列は完全に女性で占められていた。

サッカー場より広いマラティヤの新しい市の広場を埋め尽くす大群衆の中で、最も熱狂的なグループは、大方が若い女性で占められた最前列の一群であった。ほとんど全員がスカーフを被っている。彼女たちの発する「トルコはあなたを誇りに思う」というスローガンは、たびたび首相の言葉をかき消すほどだ。

最前列にいた有権者のうち、4人の娘を学校に行かせている30歳代半ばと見受けられるアイハン・ユルマズさんは「タイイプ氏の姿を見て、感動で言葉が出ません」といい、こう続ける「同志として、彼の歩みを阻むことのないよう、私たちは彼の志す道のためには犠牲になりましょう。」

アイハンさんはエルドアン首相をなぜ支持するのかをこう説明する;「私たち貧しい者たちを見捨てることなく、面倒をみてくれる。あらゆる可能性をもたらしてくれました。私は子供たちを学校に通わせていました。イスタンブル・アーケードに古本屋がありますが、教科書の半分はそこから買い、残り半分は親類の子供たちから譲ってもらっていました。全て合わせて350から400リラ近くになります。とても買えないので、2〜3回の分割払いで支払っていました。その後、エルドアン氏が首相になり、神のご加護あれ、子供たちは教科書を持って学校に通うことができました。これが(支持する)1つ目の理由です。2つ目は、近隣者、夫婦、親友といった近しい人々がしっかりと連帯できるようになり、貧困者に注視してくれたこと、3つ目は保健衛生がすばらしいことで、保健衛生に関して何も言うことはありません。以前は出産費用も支払えずにいました。(今は)とても満足しています。」

同じく最前列にいたアイシェ・ウチャルさん(30)は、息子とともに集会に参加していた。アイシェさんは「私は(エルドアン首相の)ファンです。他の何のためでもない、ただタイイプ氏を一目見るためにやってきました。神のご加護あれ、ありがたいことに(首相は)私たちのためにとても助けとなってくれました。息子も私も首相をとても気に入っています。私たちの将来は光り輝いていますし、すばらしいものとなるでしょう。どうか神様、彼が私たちの首相であり続けますように。」と話す。

さらにアルズハル・オズギュルさん(50)もまた、過去にオイルを求めて行列をなしたことを説明しつつ、「でも、今は楽です」と言い、こう続ける;「首相に言いたいことは何もありません。なぜなら彼は世界のリーダーだからです。」

こうした会話を聞いた他の女性たちも熱い口調で会話に入ってきた。1人は「女性を尊重してくれるのよ、ここにこうして私たちに場所を与えてくれる。以前はどこにも行けなかったの、抑圧されていたから」と言う。

ここから、エルドアン首相が女性(の声)に耳を傾けるという話題になった。この話を聞いた別の女性が割りこんできて「近所の人が奥さんを殴ったの。その奥さんは『あんたのこと、タイイプ氏に言いつけてやる』と。つまり、それだけ(首相の人気が)すごいってことですよ・・・」

■高校1年生たちもカリスマとして賞賛

次は広場の後方に移動した。ベイダウ・アナドル高校に通う1年生の4人組が、エルドアン首相を見ようと集まった人々の中にいた。エルドアン首相をどのように思うか聞いたところ、一人は「キングのような男性」と言い、隣では「かっこいい」と付け加える。3人目は「カリスマ性がある」と話し、4人目がこう締めくくる;「完璧」。

では、全員14歳から15歳のこの若者たちは、首相のどんなところに成功を見出しているのだろうか。医者になりたいという学生は「彼の施政が良い。国を統治できているから」と言う。英語教師になりたいという学生は「外交政策が良い」と評する。一般外科医になりたいという学生が「(国民の)目を覚まさせた」と加え、農業工学者を目指す学生は最後に「問題が何かを分かっている」と結ぶ。その後しばらくして、少しだらだらし始めた彼女たちは、お互いに肩を組み、集会の記念にと携帯電話で写真を撮るためにポーズをとっていた。

■貧困者への支援

広場を埋め尽くした集団の中には高齢者もたくさんいたが、その大部分が農村出身者だ。彼らをこの広場に駆り立てるのは何なのだろうか。

農業を営むメヴリュト・バーラルさん(65)は「あらゆる点で仕事をしている」と言う。以前は常にオザル氏に投票していたというメヴリュトさんはエルドアン首相に対し、「それに、よく援助してくれる」と評価する。

労働者として働き、現在は年金生活を送るネジメッティン・ウルクムさん(60)は、「世界中をみてもこのようなリーダーはこれまで現れたことがなかっただろう」と言い、「初めて、トルコで市民による統治がなされている」と語る。ウルクムさんは(ネジメッティン・エルバカンが掲げた綱領である)「ミッリ・ギョリュシュ(ムスリム国民の視座)*」の思想の影響を受けている1人だ。

街区長を務めるアリ・セイディ・ヤズガンさん(52)も会話に加わり、こう述べる;「学生に無料で教科書を配布することは良いことだ。さらに、集合住宅局が家屋を作り、多くの貧困者が家を買った。月に100リラ支払って持ち家を手にすることができる。貧困者が必要とすることに応え、2ヵ月に一度、150リラの支給を行っている。必要とする者は窮状を街区長に訴え、社会相互扶助センターから派遣された人が面倒をみる。家にモスクまで作るんだ。それに、喫煙の問題についてもタイイプ氏へ感謝している。いまではカフェで楽にお茶を飲むことができる。」

貧困者に関する支援プログラムは、多くの低所得層がエルドアン首相に共感する最強の理由の1つだ。

では、不満を持つ者はいないのか、といえばそうでもない。例えば、労働者として働く30代前半のバイラム・アクダウさんは、グリーンカードの所有者しか社会支援の恩恵を受けられないことについて批判的だ。「グリーンカードを持つ者だけが石炭燃料や食糧配給を受けられる。しかし、我々のようなSSK(社会保険機構)に加入する者には支援が行われない。」

■陰謀説も

以前は民族主義者行動党を支持していたというカプジュ(アパート雑用夫)のハサン・ゲルゲルさんはこう話す;「タイイプ氏は今期、本当にプロとしての仕事をする。一番気に入ったのは闇の力を明るみにしたことだ。」ゲルゲルさんは、民族主義者行動党は1998年にエジェビットと祖国党と連立を組んだことで自滅したと話す。

農業を営むリファト・オズクルさん(46)はエルドアン首相について、「発言と行動がともなっている。それに、市民の視座を開こうとしている」と話す。「市民の視座を誰がふさぐんでしょうか?」と私が尋ねると、「そんなこと、わかるでしょう」と応じた。

では、民族主義者行動党のカメラ映像流出は彼らの目にどのように映っているのだろうか。

幾人かに関してはこのニュースを知らない人すらいた。この件を知っている人の中では、もっぱら陰謀説という理解がなされている。名前を明かしたくないという28歳の職人は「カメラ映像事件の裏に誰がいるか、知らない人がいるとでも?」と言い、陰謀についてこう述べる;「エルゲネコン事件の裏にはアメリカとイスラエルの存在がある。カメラ映像事件を操っているのはMHPが力を持つことを望まない人々だ。過去にトルコで右派と左派の衝突が生じたけれど、今回は民族主義のトルコ人対クルド人の間で似たようなことが生じるだろう。そのため、MHPの(議席獲得に必要な)得票率平均を10%以下にとどめたいんだ。」

このシナリオを初めて聞いたと伝えると、「新聞記者なのに、なぜこんなことも知らないのか?」といった表情で、まるで見知らぬものでも見るように私の顔を見つめ、「これは本当だよ」と言う。

このとき「有言実行のシンボル」との肩書きで壇上の椅子へ呼ばれたエルドアン首相が、外交政策をテーマに話し始めると、会場から「オバマ大統領は彼の前では話せない、そんな姿勢が首相にはある」という声が上がった。

エルドアン首相が一瞬、群衆を見て「我々はあなた方をとても愛しているんです」と声にすると、また群衆から返答がきた「あなたよりもっと、私たちはあなたを愛しています。」

マラティヤの広場では、双方の愛情表現の応酬で集会は続く。

*ネジメッティン・エルバカンが、トルコでの世俗主義国家樹立とその後の世俗化・欧化政策を批判し、イスラーム的な規範に依拠した体制や政策を通じて社会的公正と経済発展を両立できると説いた綱領のこと。(出典:人間文化研究機構(東京大学拠点)グループ2・第2研究テーマ「中東の民主化と政治改革の展望」HP内、「中東の民主化」データベースより抜粋。http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~dbmedm06/me_d13n/database/turkey/political_party.html

(翻訳者:金井佐和子)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22578

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【トルコ語紙】ユーロヴィジョンにクルド語の歌で参加する日が来るだろうか?

2011年05月18日付 Hurriyet紙

ユーロヴィジョン・ソング・コンテストは、以前ほどではないにしても、今でもトルコで人気があり話題になっている。

今年のユーロヴィジョンにおいて我々は、トルコ代表として参加したユクセキ・サダーカトの準決勝敗退に悲しみ、その後アゼルバイジャン代表が優勝したことに対し国を挙げて歓喜した。 そしてその後、我々はユーロヴィジョンを忘れてしまった。しかし今年のユーロヴィジョン・ソング・コンテストでは小さな革命が起こった。

世界の「単一国家」の最たる代表格であるフランスが、ユーロヴィジョン・ソング・コンテストにフランス語の曲で参加しなかったのである。フランス代表は、コルシカ語の歌だった。そうだ、そうなのだ。地方言語・少数言語、地方行政に追加権利を与え、地方分権を支持する欧州評議会の国際協定に署名を行わない唯一のEU加盟国フランスについて私は言っているのだ。

フランス語を全世界に広める目的で「フランス語デー」を宣言し、全ての在外公館でこのための活動、祝賀式典を開催するフランスについて言っているのだ。公用語のひとつがフランス語であるベルギーの大使が、NATOで公式スピーチを「英語」で行ったためにベルギーに正式抗議し、「NATOの公式言語は英語とフランス語だ。ベルギーの公用語のひとつもフランス語である。それなのになぜベルギーの大使が英語を使用するのだ」と大騒ぎしたフランスについて言っているのだ。

フランスの今年の参加曲は「ソグヌ」であった。トルコ語で「夢」という意味だ。フランスは、タブーを破った。フランスのような「単一」国家であるトルコにとっては、この状況は非常に遠いものに見える。我々はユーロヴィジョンには英語の歌で参加したし、今も英語で参加している、しかしいつか、クルド語の歌で参加するのだろうか。

コルシカ語で言おう、これは「ソグヌ」、つまりまだ「夢」のように思えるのである…。

(翻訳者:岩根匡宏)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22548

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【トルコ語紙】オルハン・パムク、「エルドアン首相の最大の功績はエルゲネコン地下組織捜査」

2011年05月14日付 Milliyet紙

オルハン・パムクはエルゲネコン捜査を全面的に支援し、軍の政治への影響力を減らしたことに、エルドアン首相首相の最大の功績だと語った。

ノーベル文学賞作家のオルハン・パムクは、公正発展党(AKP)は軍の力を弱め、このことがレジェップ・タイイプ・エルドアン首相の最大の功績だと述べた。エルゲネコン捜査を全面的に支援し、世俗主義のためのクーデターは防がれたとするパムクによれば、今の政府は信仰心のある政治家達から構成されているが、国はより宗教的な体制へは向かってはいないという。

パムクのもうひとつの批判は、刑務所に収監されている新聞記者達の件である。パムクは、新聞記者たちが収監されていることを受け入れることが出来ないという。

パムクはアメリカのPBSテレビの有名なインタビュアーであるチャーリー・ローズの質問に答えた。

パムクは、トルコが文明国の仲間入りするための歩みからそれたり、ムフタファ・ケマル・アタチュルクの近代文明に到達するという目標を裏切ったというような見方はしていないと述べ、「しかしながら、(トルコの)このプロセスはゆっくりと進んでいる。私たちが望むテンポでは進んでいない」と語った。

パムクは、与党の地位にあるAKPは、以前の与党に比べてより信仰心の強い政治家から構成されているが、だからといって、トルコがより信仰を重視する体制に向っている とは思わないと述べた。

パムクは、トルコでの生活様式と文化的構造では、急激な変化が生じていないと述べ、また「世俗主義を擁護に不安はあるが、私の考えではトルコがより宗教的にはなってはいない。今から10〜20年前の街の通りでは酒を飲んでいる人たちを見かけることは出来なかったのだから」と語った。

■スカーフを身につけた女性の数が減ったか増えたかを判断の基準にすべきではない

パムクは「しかし以前よりスカーフを身につけた女性が見られませんか?このことをどう説明されますか?」との質問に対し、「スカーフを身につけた女性の数が少ないか、或いは多いかということを、この問題の判断基準にしてはならない」と述べた。

「私の価値観では、皆が何を望もうとも、それをできなくてはならない」と言うパムクは、「軍が、我々に、もし大学や病院に入ることを望むのなら、スカーフを外せと言うべきではない。トルコ人女性達に二級市民的な扱いをするべきではない。私は、自由、表現の自由、民主主義、世俗主義、文化及び社会的な価値が、大事だとおもう。これらのことを我々が自分のものとするとき、人々は自分が感じるままに振る舞うことが出来るのだ」と語った。

パムクは、トルコにおいてはリベラル派と保守派の間にある対立は新しいものではなく、この状態が百年も続いていると述べた。

■軍の力が減っていることを私は幸せに思う

ある質問に対し、パムクは、AKPは軍の力を減らしており、このことをエルドアン首相の最大の功績だとし、それをうれしく思うと述べた。しかしながら、このことにより、一部の人々の世俗主義についての不安が増大していると述べた。

トルコにおける表現の自由、寛容、伝統文化と現代性の間には、いつも「ジグザグ」であったと述べる パムクは、「世俗主義の擁護への不安が、不幸にも軍が民主主義に干渉する環境を作っている」と語った。またパムクは、トルコ国民は、世俗主義を軍の力を必要とせずに 守れるようでなくてはならないとのべ、「軍よ、どうぞ来て、我々を救い給え」と考えることは間違っていると思うと述べた。

パムクによれば、世俗主義を守るためにクーデターを行うことが、アタテュルクの近代的で開かれた社会の理想とは合致していないという。

■エルゲネコン捜査をでっちあげとは思わない

エルゲネコン捜査についての考えを質問されたパムクは、この裁判はでっちあげではく、またクーデターの計画について新聞で読んだことが彼自身を納得させていること、トルコ国民がこれに納得してることを考えていると述べた 。

パムクは、トルコの歴史において、数々のクーデターやクーデター計画があったことを指摘し、従って裁判官らがクーデターの疑いについて調べることは良いことであると話した。

■新聞記者達が収監されていることは認められない

ある質問に対してパムクは、トルコで複数の新聞記者達が収監されていることを受け入れることは出来ないと語った。

政府を支持する新聞でさえ、この逮捕を批判していることを述べるパムクは、「不幸にも現在の トルコでは50名以上の新聞記者達が刑務所にいる。この国の最も愛されている政治家達のうち、スレイマン・デミレル元大統領や故ビュレント・エジェヴィト元首相も収監されていたが、再び彼らが政権に復帰しても、表現の自由についての改革は行われなかった。これを行わなければならなかったのに」と話した。

パムクは、過去に書いた作品やコラム、発言によって彼自身が訴えられていることに関する質問に対して、彼自身の状態が過去の作家達が体験したことよりも「軽い」ものであり、しかし国際社会で自分は有名なので、より目に見える状態に至ったと述べ、「不平を表明することや、或いはこんなことがあった、あんなことがあったと述べることを私は望んでいない。私は未来を見ている」と述べた。

■いくつかの党で使用されているレトリックは私を心配させる

トルコで選挙前に各党の間での「政治闘争」で使用されているレトリックを憂慮していると述べたパムクは、これらは、表現の自由の産物というよりも、むしろファナテッィクだとと述べた。

パムクは、普通の人々はこの論争にそれほど影響を受けることはないとし、未だにトルコにおいて定着していない寛容と和解の文化や言葉、表現が、今後、定着することに関し楽観的だと述べた。

■EUに対する怒りを復讐心に変えるべきではない

パムクは、ある質問に対して、EUがトルコを「二級市民」的な扱いを行っていることが、トルコで怒りを作りだしていることを理解しているが、「復讐心」によって、この怒りを、「私たちを受け入れないなら、アラブへと向かおう」のような態度に変わらないようにする必要があると述べた。パムクは、トルコがヨーロッパから遠ざかっているという風に不安には思っていないと述べた。

「アラブの春がトルコにも到来すると思うか」との質問に対してパムクは、トルコには「アラブの春」が必要ではなく、アラブ諸国がこの民衆運動によって単に政治だけではなく、文化や社会という意味でもより開かれた(国の)体制へと向うと考えていると述べた。

パムクは、「トルコが、ある国がムスリムの国家であると同時に、多元的で世俗的な、そして民主的な国家でありえることを証明していると思いますか?」との質問に、トルコがその努力をしていると述べ、「トルコが近いうちに、完全な民主主義と、発展した力強い経済力(を持つ国に)になると私は強く 信じている。まだそうなってはいないが、その道を進んでいる。それに向かい、自信を失ってはいけない」と語った。

■この国を私は愛している

作家のオルハン・パムクは、「何故イスタンブルに住んでいるのか?」との質問に「ここは私の人生であり、全人生を私はこの街で過ごした。そう、圧力をかけられたり、護衛付きで歩いたりしているけれど、この国を私は愛している」と答えた。

(翻訳者:濱田裕樹)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22493

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【トルコ語紙】コラム:公正発展党とクルド人

2011年05月21日付 Milliyet紙

参加民主主義党(KADAP)党シェラフェッティン・エルチ党首や、左派として知られるアルタン・タン氏(訳者注:クルド人作家、政治家)や右派として有名なケマル・ブルカイ氏(訳者注:クルド人作家、政治家)らは、暴力とは絶えず距離を置いていた。このため、メディアでも、「節度ある政治家」扱いされている。しかしながら、彼らのような人物の大半はアブドゥッラー・オジャランよりも熱狂的で極端な政治観の持ち主だ。特にケマル・ブルカイ氏など、オジャランのことを「トルコ人の国に売られた」と表現している。

そのなかでも、シェラフェッティン・エルチ党首がディヤルバクルでの演説でエルドアン首相を攻撃しつつ、どんな発言をしたか。それは次のとおりだ。

「クルド人の血を流した者はクルドの血に溺れる。いかなる民もそうであるように、クルド人にも言葉があり、土地があります。クルド人は今日、勝利に非常に近い。我々は6月12日、公正発展党(AKP)に大打撃を与え、アメド(ディヤルバクルの別称)から駆逐する予定です。自由の旗をアメドの城壁に掲げるのが私たちの義務なのです。」

党首の発言は、「くたばれAKP、殺し屋エルドアン」といったスローガンで歓迎されたという。(5月20日タラフにて)

■宿敵AKP

彼らがAKPを第一の敵とみなしている理由は、AKPが地域に広い票田をもっていること、そして狂信的な拝外主義者たちが望む「地図」が投票により実現するのをAKPが妨害しているからだろう。

ではAKPの施策はどのようにおこなわれているのか?

故トゥルグット・オザル元大統領が望んだ形でおこなわれている。つまりAKPは保守的な価値観を通じて、中道・保守的クルド人層の中にシンパを作り上げているのだ。うまくやったものだ。

それと同時に、国民に実際的なサービスを口にした。地域への投資の流れをつくると。こちらもうまくやっている。

言葉使いについても同様だ。民族問題に対しては民主的問題解決と経済的な(投資)発展と銘打って対処している。

昨日(21日)エルドアン首相は、ヴァンでの集会において次のような内容の発言をした。「共通する精神的価値観は民主主義と経済である」と。

ヴァン集会に集った大群衆を、そして彼らの熱狂を、さらにはエルドアン首相の「ヴァン市民でありクルド民族である同胞たち」という発言とクルドの人々への温かいあいさつを、満足しながらTVで眺めた。

共和人民党(CHP)のクルチダルオウル党首がエラズーでザザ語であいさつされた際、ザザ語で返したのももちろん良かった。CHPも地域で「問題解決」をすべきである。

■バフチェリの発言

党内の内ゲバが、トルコ全体を包括する物の考え方を阻害するようなものであってはならない。民族主義者行動党のバフチェリ党首は、信じられないような誤りを犯してでエルドアン首相をダーマト・フェリト・パシャにたとえたが、彼は独立戦争でムスタファ・ケマルが、クルド人にどのように「条件」で対処し、彼らを味方にしたかを、「ケマル・アタテュルクの演説集」やアマスヤ・プロトコルを詳細に紐解いて学んだほうがよい。

民族主義者行動党は少なくとも、ズィヤ・ギョカルプをこの問題解決のインスピレーションの源として取り上げるのもよいだろう。亡きアルプアスラン・トゥルケシュ(民族主義者行動党党首)すら晩年はギョカルプの言葉を借りていたのだ。ギョカルプがディヤルバクルで出版した、キュチュク・メジュムアを引いていた。

クルド人を包括するアプローチはトルコを一つにし、クルド人を怒らせるようなアプローチは分離主義を増長させる、ということをよく理解すべきだ。

■エルチ党首は「土地」を望んでいる

(「土地」を望んでいるというのは)共生のつながりを徹底的に分断したいと望んでいるからだ。

そのため「AKPをこの地域から追い払います」などと言い、100箇所近い選挙事務所に火炎瓶で攻撃している。CHPが票を獲得しはじめれば、彼らへもそうするにちがいない。

ある種の「民族浄化」の手始めに「政治の浄化」をおこなっているのだ。投票に基づかない「土地」の地図を作りたいがために。

エルチ党首の「クルド人にも言葉と土地がある」という発言...、言葉がなにを指すかは明快だ...。

しかし「土地」とは一体どこなのか。地理上のどこが「トルコの領土」であり、そしてどこが「クルドの領土」となるのか?

線をどこから、いかに引くのか?何百万人をいかに分離するのか?

現代において、狂信的な排外主義は政治的狂気である。

解決方法はただ一つ、共生を容易にする穏やかなアプローチだけだろう。

(翻訳者:原田星来)

全文・原文を読む→http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=22594

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