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原子力安全庁:「脱原発」首相意向強く 「再編は新体制で」反発も

 経済産業省から原子力安全・保安院を分離する検討を進めてきた政府内で3日、原発を規制する新組織「原子力安全庁」(仮称)を環境省の外局として設置する案が有力となった。環境重視の姿勢で「脱原発」の方向性を示したい菅直人首相の意向が働いた結果だが、独立性・中立性を明確にするため、内閣府の外局に置くか、公正取引委員会のような委員会組織とする選択肢も消えていない。

 環境省に安全庁を置く案は、細野豪志原発事故担当相が中心となってまとめた。原発を推進してきた経産省から保安院を分離するとともに、安全基準などを決める原子力安全委員会を内閣府から切り離して統合。文部科学省の放射線モニタリングや内閣府の原発事故調査も安全庁に移す。専門家で構成する諮問機関「原子力安全審議会」(仮称)も省内に設置する。12年4月の発足を目指す。

 安全庁を環境省に置く案が浮上した背景には、寄り合い所帯の内閣府より「担当閣僚が、きちんとしたスタッフを使って取り組むのに適している」(政府高官)との見方がある。

 しかし環境省は20年までに温室効果ガス排出量を90年比で25%削減する政府目標達成のため、原発に賛成する立場をとってきた。環境省幹部は「地球温暖化対策を原発に頼り過ぎていたわれわれが、規制する側としてふさわしいのか」と戸惑う。

 「保安院と安全委員会と事故調査を全部セットで環境省の中に入れたらどうか」。原発事故を受け、環境省案の検討を指示したのは菅首相だ。5月には環境省の南川秀樹事務次官を首相官邸に呼んで再生可能エネルギーの推進策の立案を求めた。経産省幹部は「エネルギー政策全般も切り離して環境省に移すかもしれない」と警戒する。

 退陣表明しながら、重要政策を打ち上げる首相への反発も広がりそうだ。3日の民主党参院議員総会では輿石東参院議員会長が「省庁再編にもかかわる。(退陣条件としている)3法案を成立させて新体制に入ることを最優先すべきだ」とけん制した。【足立旬子、野原大輔、笈田直樹】

毎日新聞 2011年8月4日 東京朝刊

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