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南ドイツ新聞(独) 2007年3月28日

歴史を改ざんする安倍首相

 昨秋の華々しいスタートからわずか半年後の今、安倍首相の弱点が明らかになった。前任の小泉首相の靖国訪問で損なわれた中国、韓国との関係を電撃的に修復した安倍首相だったが、ここへきて、アジア諸国で旧日本軍が犯した従軍慰安婦問題を否認する発言をしたことにより、日本国内以外ではあまり気付かれなかった安倍首相の弱点が世界の前にさらけ出された。

 東京の都知事選挙、参院選を控える首相は、内政上の失点を糊塗しようとしたのだが、それがかえって裏目になり、歴史に半可通の「弱体首相」という輪郭が鮮明になった。

 前任者と同様、安倍首相は大衆受けする面はあるものの、経済的な理由からますます多くの日本人の心が52歳の若年首相から離れてきている。貧富の格差拡大、将来の生活への不安、そして時に触れて安倍氏の困惑ぶりが大写しにされるにつれ、支持率も70%強から40%以下へと急落した。

 過去数十年間にわたって日本は、第二次大戦中、日本軍部がアジア各地で女性たちに、兵士相手の売春を強要していたことを否定し続けてきた。しかし、1992年、日本の歴史家、吉見義明氏が軍の公文書の資料の中から、天皇の軍隊が「慰安所」設立に参画していた証拠を発見した。

 このため、日本政府は1993年、初めて事実を認め、かつて従軍慰安婦をさせられた女性たちに謝罪した。この河野談話で、従軍慰安婦問題は初めて歴史の中に登場したのだが、安倍氏は今、自民党の議員130人から、談話の中身を薄めるよう強要されている。これら議員は、軍の直接的な慰安婦問題関与を否定する文書を作成、重要な選挙目前のこの時期に党内抗争を避けたい首相を悩ませている。

 安倍氏の弱さとあがきは、中国、韓国との関係修復という得点をも台無しにしかねない。安倍首相は約10人の北朝鮮による日本人拉致被害者を支援している。一方、旧日本軍に凌辱された女性のすべてが拉致されたのではないにせよ、膨大な数の慰安婦の悲惨な運命を示す証拠には事欠かない。ナショナリストの安倍首相の目には、韓国、中国などからの拉致被害者が日本人拉致被害者と同じ人権を持つことがわからないのか。

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