教育考現論-ポスト3・11の学びとは-

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教育考現論:ポスト3・11の学びとは/その5 先生に新聞を

NIE全国大会に先立ち、NIEアドバイザーの教師たちは新聞活用授業の指導案を検討した=青森市内で7月24日
NIE全国大会に先立ち、NIEアドバイザーの教師たちは新聞活用授業の指導案を検討した=青森市内で7月24日

 「NIE(教育に新聞を)」活動が注目を集めるなか、最近開かれたNIE全国大会(7月25~26日、青森市)と全国新聞教育研究大会(8月1日、東京都)に参加して、いささか心配に思うことがあった。

 「とにかく若い先生が新聞を読まない」「新採用の先生たちはあまり新聞をとっていませんよ」--。新聞活用の授業に積極的な全国のベテラン教師たちが口々に嘆いたのだ。

 「それでNIEを?」と思わず口をついて出た。なるほど、1人暮らしの大学生のうち新聞を購読しているのは極めて少数だ。では教師になれば、新聞をとり始めるか。残念ながら、そう簡単にはいかないようだ。

 今春、記者派遣事業を大阪で担当している同僚が大阪府、大阪市、堺市の3人の教育長にチョッピリ嫌みを込めて訴えたという。

 「新聞記者は誰かをインタビューする時には、少なくともその人のことを調べてから行きますよ。ところが先生はどうですか。新聞が最近何を書いているのか調べもせずに記者の出前授業を頼んできたりする。せめてひと月なり、ふた月なり新聞を購読するのが社会人としての礼儀でしょう。若い先生方にそのへんのところを教えてあげてくださいよ」

 世界新聞協会(WAN)が作成した文書「NIE Get Started(さあ、NIEを始めよう)」は「NIEが成功するには、学校と新聞社の緊密な関係が不可欠だ」と強調している。新聞はいま何を書いているのか。そうした認識が相互理解の前提だ。同僚の苦言はNIEの行く末を危惧したものだった。

 NIEは「Newspapers in Education(教育に新聞を)」の頭文字をとった呼称だが、それになぞらえて、「先生に新聞を」活動が必要ではないかと、英字新聞の担当者に話すと、こんなキャッチフレーズをひねりだした。

 「N:TFT」--。これは「Newspapers: Textbook for Teachers」の頭文字だという。彼は「NIEで生徒に新聞を読ませる前に、先生自身がちゃんと新聞を読んで勉強しなはれ、という趣旨。つまり『先生に新聞を』を意訳したものです」と説明した。

 希望は失っていない。東日本大震災の新聞記事を使って意欲的な授業を展開する先生たちがいるからだ。そうした姿は新聞の作り手である私たちの大きな励みにもなる。ぜひ若い先生も新聞を手にとってほしい。NIEが動き出すのはそれからだ。【編集委員・城島徹】

2011年8月4日

 

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