40年以上前に出された通知だが、この内容を覆す通知はその後も出ておらず、今でも従う義務がある。それなのに、健康保険が使えることを本当に知らないのか、知っていても知らないふりをしているのか、「交通事故は健康保険が使えません」という言葉を呪文のように唱える医療機関がいまだに存在しているのだ。

 そこには、「どうせ保険会社が払うのだから、医療費の安い健康保険ではなく、自由診療で請求したっていいだろう」という医療機関側の思惑も透けて見える。

第三者行為による交通事故でも
健康保険を利用したほうがおトク

 たしかに、交通事故やケンカなどに巻き込まれたりして、第三者によってケガをさせられた場合は、加害者が治療費を賠償することになっている。車を持っている人は自動車賠償責任保険(自賠責)への加入が義務付けられており、これに加えてほとんどの人が自動車保険(任意保険)も契約しているので、交通事故による治療費は損害保険会社を通じて被害者に支払われるのが一般的だ。そのため、健康保険を使わなくても被害者に実質的な負担が発生しないことも多い。

 ただし、交通事故の損害賠償は、それぞれの過失割合に応じて補償される。万一の事故に備えて、自分も任意保険に加入して人身傷害保険をつけておくという手段ももちろん有効だが、同時に健康保険を活用して負担を抑えることも考えたい。

 たとえば、被害者にも20%の過失があると見なされると、医療費が100万円かかった場合は相手方の損保会社からは80万円しか補償されず、20万円は被害者側の負担になる。医療費が同じ100万円だったとしても、健康保険を利用すると医療機関の窓口ではいったん3割の30万円を支払うが、その80%の24万円は加害者から賠償されるので、被害者側の負担は6万円で済む。こうしたケースでは健康保険を使ったほうが負担を抑えられる。

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早川幸子 [フリーライター]

1968年、千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、99年に独立。女性週刊誌やマネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。08年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。


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