先日、知人のAさんが自転車で転倒し、救急車で大学病院に運ばれた。

 相手のいない単独事故で、車や歩行者と接触したわけではないが、転んだ拍子に頭を打って気を失い、気がついたときは救急車の中だったという。しかし、病院でのCT検査の結果には異常がなく、幸いにも頭を数針縫う程度のケガで済んだ。

 ホッとして医療費の支払いをするために会計窓口に行き、健康保険証を提出したところ、事務職員にビックリすることを言われたのだ。

 「交通事故は健康保険が使えませんよ」

 請求額は5万5000円。過去にも自転車で転倒して別の病院で同様の治療を受けた経験があるAさんは、以前よりはるかに高い医療費に再びビックリして、「これには救急車代が入っているんですか?」と聞いた。

 しかし、救急車は無料で利用できるので、この請求額には入っていないという。釈然としない気持ちを抱えながらも、「ここで何か言って悪い印象を与えると、次に来たときにきちんと治療してもらえないかもしれない」と思い、言われるままにお金を払って、その日は帰宅した。

 ところが、再度、病院を受診したときのAさんの一言で、医療費に大きな差が出ることとなったのだ。

自由診療は病院の言い値
健康保険の2倍、5倍も当たり前!?

 国民皆保険の日本では、原則的に誰もが何らかの健康保険に加入する。病院や診療所で病気やケガの治療を受けるときは、ほとんどの人が健康保険を利用しているだろう。この健康保険を利用できる治療や投薬を「保険診療」といい、ひとつひとつの診療行為の価格は国によって決められている。

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早川幸子 [フリーライター]

1968年、千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、99年に独立。女性週刊誌やマネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。08年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。


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