日本とインドの経済連携協定(EPA)が1日に発効し、両国はお互いに関税を引き下げ始めた。新興の経済大国と初めて協定を結び、市場開放に踏み出したのは一つの成果だが、これで両国間の貿易を自由化する道が完成したわけではない。
人口が縮小する日本の経済が成長し続けるためには、元気がある海外の国々と、絆を太くしなければならない。貿易や投資のルールが未整備である中国に依存しすぎないためにも、インドは極めて重要な経済連携の相手国である。
現行の日印協定の内容では、両国の関係を緊密にし、日本経済を押し上げるには力不足だ。協定に期限を定めた見直し条項を盛り込めなかったのは残念だが、日本政府は改定交渉に果敢に挑み、自由化の中身に磨きをかけるべきである。
最大の問題は、ライバルの韓国と比べて、多くの品目で日本が不利な条件になっている点だ。韓印の協定は、日印協定に先行して、2010年1月に発効している。
日本はその1年半以上の遅れを取り戻す必要があったはずだ。だが、2つの協定を比べると、インド側の関税削減のテンポは、特にエンジンなどの自動車部品で日本より韓国に対しての方が速い。これでは韓国から輸出した方が安いことになる。
欧州連合(EU)がインドと進めている交渉の行方も要注意だ。インドは国内の自動車産業を保護するため、日韓に対して完成車の関税削減に応じなかったが、EUとの交渉では幅広く協議している。
印EU交渉は年内にも決着する見通しだ。あとから交渉する国や地域が、先行国より濃い中身の協定を目指すのは当然だろう。欧州製の完成車が関税削減の対象となれば、日本の自動車メーカーは対印輸出で決定的に不利になってしまう。
通商交渉は「ギブ・アンド・テーク」だ。インドにさらに関税削減を迫るには、まず日本側が市場開放しなければならない。インドが求めているのは、インド人の看護師や弁護士などが日本で働けるようにし、両国で二重に社会保険料を払わないようにするなどの制度改革である。
サービスや人の移動の分野は、現行協定には盛り込まれず、交渉を先送りしたままだ。労働市場の開放にかかわる問題は、政治に指導力がなければ交渉は進まない。
日印EPAは未完成である。経済連携の一段の強化をインドに呼びかけ、協定改定を進めるためにも国内の規制改革に取り組むべきだ。日本の経済外交の優先課題である。
EPA
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