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京都

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カキナーレ:若者の本音ノート/74 チカン /京都

 ◇頼もしい、闘う女子高生

 「ビックリ×3」

 この前、帰宅途中の電車待ちをしてた時にビックリすることがあった。時刻表を見てたら、男子中学生が私をじーっと見ていた。(何やろ?)と思ったケド、あんまり気にしいひんかった。が、電車乗った途端気づいた。車内は結構空(す)いてんのに、あえて私の隣に座ってきたからだ。しかも、ピターっと。ビックリした。でもまあ中学生やし、と思って安心してた。すると、荷物を反対に置いてもっとピタ~ットくっついてきた。マジで?ってビックリした! 動くのもめんどいしほっといたら、次はひじで私の腕をトントンしてきた。ほんまビックリ!! もうキモイ!! と思って席を移動した。

 中学生やし「さわんなキモイ」とか言えへんかった。中学生やのにビックリやわ。

 アカンよ! ホンマ!(04年高校3年A子さん)

 「初体験」

 その日の朝は大雨だった。だからいつもより早く家を出て1本前の電車に乗った。

 雨だったせいか、かなりの人だった。阪急は何ごともなく乗れたが、地下鉄で事件が起きた。そう、チカンだ。私はチカン野郎の餌食にされてしまったのだ。しかも後ろからでなく前から。私の胸やおしりを触ってんのがまるわかり。しかもそいつ、手は震えるわ息は荒いわで鳥肌が立った。

 (だあぁ、ただでさえ朝っぱらから雨が降ってこっちはブルーやのにチカンとかバリだるいし)と思って顔を上げてア然……。驚いたことにチカンは学生だった!!

 「いやいや、あんたにはまだ早いって!」って突っ込みたくなる程だった。いくら抵抗してもやめそうになかったので、「触んなって」と言ったら、「すみません……」と小声でつぶやきさっさと出て行ってしまった。「謝まんやったらすんなっつうの!!」と心の中で叫んでいた。でも中年のオジさんよりかは全然イイかもっ。いつもと違う体験やったなぁ、などと思っていた。

 地下鉄を降り、地上に出ると、すっかり雨は上がり日が差していた。(04年高校3年B子さん)

    ◇

 女子校に勤務していた頃、チカンが女子高生の身近な悩みであることを知った。登校中の女子高生に社会の窓を開けるチカンとか、寺の境内を歩行する女子高生に抱きついてくる変態男など、危険はいっぱいだ。中でも、登下校の電車内でのチカン被害は多い。実際に生徒がチカンに遭った時は深刻だ。だが、そんな過酷な状況の中で、徐々にではあるが、チカンと闘う女子高生も出てきている。今回のカキナーレはその一例だ。

 A子さんの出合ったチカンはまだお尻の青い中学生。そんな中学生が一丁前に彼女にすり寄ってきたのだから、彼女ならずともビックリだ。それにしてもこの中学生のなんとおませなこと。彼女はそのビックリ度合いを3段階で表現しているが、これもお姉さんの貫録か。そして最後に、男の子のキモイ行動を「アカンよ! ホンマ!」と、胸中で一蹴する。

 B子さんが餌食になりかけたチカンは大学生。しかも前からチカン行為をするという大胆さ。とうとう我慢できなくなった彼女は、「触んなって」と言う。するとチカン野郎「すみません……」と小声でつぶやきさっさと立ち去って行く。チカン野郎のあまりのひ弱さ、意気地のなさに彼女は拍子抜け。それにしても、その直後の彼女の積極性(A子さんも含めて)には驚く。「中年のオジさんよりかは全然イイかもっ」と発想を転換しつつ、「地上に出ると、すっかり雨は上がり日が差していた」と、忌まわしい体験を見事に一掃するのである。何とも頼もしい。

 新しい女子高生像を見る思いがする。<深谷純一(元女子高国語科教諭、大学非常勤講師)>=隔週掲載

毎日新聞 2011年7月28日 地方版

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