Windows Phone 私考
さきほどセルリアンタワーから戻ってきました。「Windows Phone IS12T by TOSHIBA」の記者発表会でした。
私がこの製品に携わったのは3月から。プロモーションと全体マーケティングを担当するように、上司から突然の命を受けてからでした。それまではauの中期商品戦略を主に担当しており、別の通信事業者でWindows Mobileのプロモーション戦略をほんの一時だけ担当していたことがあったものの、Windows Phone 7については最低限の知識を持っているに過ぎませんでした。
3月初旬、アメリカ・シアトルのMicrosoft本社で、Windows Phoneのマーケティングに関するミーティングが開催されることになり、私も同行しました。当日はKDDI側のプレゼンテーションの時間も設定されており、私は日本におけるスマートフォン市場の現状とその中でのKDDIのポジションについて触れることになっていました。
まったく予備知識がなかった私は、Windows Phone 7について情報収集を重ねました。Metro UIのコンセプト、PanoramaやTile、Hubの概念、GUIデザインガイドラインやインターネット上に公開されているプレゼンテーション資料、動画。むさぼるように読みました。そうして理解していくうちに、Windows Phoneの可能性や日本におけるポジションが少しずつ頭に浮かんできました。
「もしかすると日本のケータイユーザーにとっては、このWindows Phoneの操作感はわかりやすいかもしれない」。
基本、物理キーで操作することがデフォルトだった日本のケータイをずっと触ってきたお客さまにとって「フルタッチパネル」というのは、魅力要素でもあり不安要素でもあります。日本のケータイの操作には連続性があります。センターキー(決定キー)を押すことで大項目を選び、その中にある中項目を上下左右のカーソルキーで選んで押下し、小項目を選択する。間違えればクリアキーかシフトキー押下で一つ前に戻る。そんな、キーを押下して次に進むという操作ルールは長く使われてきました。
それがこれまでのスマートフォンでは、使用するアプリをタッチして選択することで起動させ、すべての操作はそのアプリの中で完結します。指で直接触れて移動させるなど、その操作は直感的ではありますが、機能設定の小項目に至る遷移と各アプリの設定にいたる遷移の一貫性が乏しいものもあるのも事実です。
それがWindows Phoneの場合は、ケータイのセンターキー押下のかわりに左右に動かして大項目を選び、その上下で中項目を選択するというGUIのガイドラインが設定されており、それに準拠すればメニュー部分の操作と連続した形で遷移することができます。いわゆる「パノラマ」は、スマートフォンの小さな液晶画面を有効に活用します。大きな一枚の画面のどこを見るかを上下左右に動かして選んで行く操作性で、概念としてケータイに親和性があると感じました。
Microsoftでのプレゼンテーションでもこの点を説明し、大きな共感を得ました。
調査をすると、タッチパネル操作はスマートフォンでやってみたいことの上位に必ず出てきます。たいていそれは写真や地図をピンチイン/ピンチアウトする動作だったりするのですが、他の機能操作においては指で触れて操作するということが不安要素になり、心理的な障壁になっているのです。
iPhoneやAndroidのアプリアイコンがデスクトップに並んでいる感じのトップメニューとも、Windows Phoneのそれは大きく異なっています。スタート画面に並ぶタイルメニューはショートカットの役割として大きいサイズで配置され、片手でも簡単に操作できます。
日本のケータイも参考にしたのではないかと思うほど、すんなりと入ってくるその使い勝手はWindows Phoneの最大の魅力ですが、触るとその良さがわかるということは触らないとわからないとも言えるわけで、これからのプロモーションではここが一番のポイントになると思います。
そして、Windows Phone IS12Tのデザイン。「蒸着塗装で縁取られた黒い大きなモノ」といった既存スマートフォンとはデザイン言語的に真反対の、マッドな黒縁にグロッシーなカラーリング。スマートフォンの顔である裏を見て、パッと見でそれだとわかる仕上がりになっています。
また、縦と横に動かすWindows Phone 7のメトロデザインの魅力を最大限に引き出せる、片手でラクに操作できる大きさ。手に収まりの良い厚みと持った心地を良くするアールは、小気味良く操作できるサクサクヌルヌルを体感するのにちょうどよいサイズ感になっています。
ちなみに、6月下旬に再びシアトルを訪れた際、サンプル出荷されたIS12Tを持参し、Microsoft本社のWindows Phoneチームにお披露目しましたが、この時もそのサイズ感やカラー、防水防塵の筐体が絶賛されたことをお伝えしたいと思います。
これから数回にわけて、私個人が感じるWindows Phone 7の魅力や、開発過程でのウラ話など、お話しできる範囲でつらつらと書いていければなと思っています。