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【社説】

がれき処理 国「直轄」で加速せよ

 東日本大震災の被災地は、大量に発生したがれきの処理に四苦八苦している。市町村間で“復旧格差”もみられる。復興への第一歩を踏み出すためにも、国の直轄として処理を加速させてほしい。

 大津波で町役場が被災し町長が亡くなった岩手県大槌町は、市街地のあちこちにがれきの山が残り、解体を待つ建物も多い。道路は真っ黒に汚れ油臭も漂う。トップ不在の行政だからか、作業が遅れているようだ。

 大船渡市では港の一角に造成した企業誘致用の土地で、処理プラントが稼働中だ。市内五カ所の仮置き場から集めたがれき群を分別、一部を近くの太平洋セメント工場(操業は停止中)で焼却している。釜石市でも新日本製鉄が仮置き場に敷地を提供している。地元企業の協力は頼もしい限りだ。

 宮古市はがれきをコンテナ埠頭(ふとう)に集め、大阪へ船積みして最終処分する。このほか、処理をそれぞれの県に委託した市町村も多い。

 自治体側は震災直後から、がれきは国直轄で処理するよう求めてきた。国は一般廃棄物処理は市町村の仕事という原則を曲げず、補助率を五割から九割へ引き上げ、残り一割を後で地方交付税措置する特例を設けた。これが、遅れた原因となっている。

 なぜなら、一時的にせよ財政難の自治体側に資金調達が必要となるからだ。各市町村は、住民の安全確保や仮設住宅の建設で手いっぱいでもある。

 被災市町村で最多の六百万トン余のがれきを抱える宮城県石巻市は当初予算額の約一・五倍、八百七十七億円の処理費を計上した。国に請求するため概算報告書を提出したが、三度差し戻された。手続きは簡素化すべきだ。

 環境省によると東北三県のがれき推計量は二千二百八十万トンで、仮置き場に搬入されたのは43%止まり。国の処理費は七月二十日現在、一次補正に計上した三千五百億円のうち約二百億円、わずか5・7%が使われたにすぎない。

 なのに、国が肩代わりするがれき処理法案の審議は始まったばかりだ。「要請があれば代行」という政府案よりも「国の全額補助」を明記する野党案が使いやすい。修正を急いでほしい。

 福島県内では、放射性物質に汚染されたがれきの処理が手つかずだ。現行法の規定がなく、ようやく与野党が議員立法を制定するのだ。なぜ、国が主体的に動かないのか。もっと責任を自覚すべきであることは言うまでもない。

 

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