主な被害 |
観測史上最大の震度5強を6月30日に記録した松本市。地震発生から7日で1週間となるが、揺れが激しく被害が多かった南部では、復旧作業が終わらず、業務が正常化していない企業や店舗が少なくない。余震への不安から避難所に通って泊まる人もおり、地震の傷は癒えていない。
同市石芝のディーゼルエンジン製造「IHIシバウラ」では、揺れで機械が5〜10センチ程度ずれた。約300台あるエンジン部品の加工機械の精度が狂った恐れがあり、工程ごとの調整作業に全力を挙げている。6日の作業もグループ企業や取引先の約40人が応援。大槻研一取締役は「今週中の復旧を目指す。納期が遅れており、休日返上で取り戻したい」と話した。
スポーツ用品の「アルペン松本店」(平田東)は、天井にあるガラス製排煙窓が落ちて割れ、床や商品に散乱。商品全体の半分が販売不可能に。9日に営業再開予定だが、中原信理・店長代理は「被害額は億単位になる」と嘆く。防災用品も扱う「綿半ホームエイド松本芳川店」(野溝西)は地震後も営業したが、落下した天井の一部やずれた陳列棚を直すため、5、6日を休み、復旧作業に充てた。
市が唯一残す避難所の市南部体育館。6日夕、高宮中の宮沢恵子さん(45)が車いすの父親洋右さん(72)を連れて来た。「いざという時に逃げるのが難しい。地震を考えると眠れなかった」。この日、母定子さん(72)ら家族5人は避難所に初めて泊まることにした。
双葉の県営住宅の住民が自主的に設けた避難所には6日夜、前日を5人上回る8人が訪れた。ブラジル人家族が加わり、町会長渡辺元秀さん(56)は「母国で地震を経験したことがないから不安が募っているようだ」と話した。
地震後、独自に屋根瓦の落下174戸などを確認した寿地区竹渕町会(約960世帯)。この日も屋根にブルーシートを覆う家が目立つ。町会長の伊東昌稔さん(72)は「シートを掛けた家はほとんど減っていない。復旧工事が済んだ家は少ない」とみる。
ある女性(80)は、地震後すぐ知り合いの業者に頼み、屋根にシートを掛けてもらった。ただ本格修理は「順番待ちで2、3カ月かかる」と言われた。「いつ直してもらえるのかしら…」と漏らした。
主婦赤羽とみ子さん(65)の自宅も屋根瓦が落ちたが「直してもまた地震が来て崩れたら(修理費が)無駄になる」と業者に連絡せず、シートで覆う応急処置をしたまま。「このままでいいとは思わないが、お金の問題は大きい」と切実だ。
市の6日のまとめだと、地震によるけが人は15人、建物被害は計4080件に上る。住宅や文化財など被害も広範囲に及んでいる。