2011年6月5日 21時11分 更新:6月5日 21時13分
宮城県南三陸町で、被災者が仮設住宅の抽選に当たりながら入居していないケースが多発している。入居した場合、食料の支給を打ち切られることなどへの不安が背景にあるとみられる。仮設住宅への当選を待望して避難所暮らしを続ける被災者も多いため、町は5日の住民説明会で、1週間後の今月12日までに入居しない場合には明け渡しを求める対策を明らかにした。
町内の仮設住宅申込件数は2025件で、町は希望者全員を入居させる方針。ただ、5日時点の工事進捗(しんちょく)率は約50%にとどまっており、これまでに抽選に当たって鍵の引き渡しを受けたのは約450世帯という。
一方、被災者から「入居していない部屋があるのはなぜか」などの問い合わせが相次ぎ、町がガスメーターや夜間の照明などを確認したところ、かなりの数が未入居だったことがわかった。入居率が高いとみられる場所でも6~8割という。
背景には▽避難所から仮設住宅に移った場合、食料や物資の支給がなくなり、光熱費も自己負担になる▽働き口や商店など生活基盤がほぼすべて流された中で自活を求められることへの不安が強い▽水道復旧率が依然数%にとどまっている--などが挙げられる。町によると、荷物を運び込んだだけだったり、一度も足を運んでいない人もいるという。
多くの被災者が仮設住宅に入れるのを待っていることから、町は入居期限を設定。空きが出た場合は再抽選して入居者を決め直す。西城彰・町建設課長は5日の説明会で「それぞれの事情があるかもしれないが、待機者を早く入れるべきだという声が強い」と理解を求めた。
同町の志津川小グラウンドの仮設住宅に住む男性(70)は「ここでも両端の2部屋が空いている。(被災者の)生活への不安解消に向け、義援金を早く支給するなど行政も対応してほしい」と話した。【村尾哲】