2011年6月3日 23時46分 更新:6月4日 3時56分
経済産業省原子力安全・保安院などは3日夜、東京電力福島第1原発事故直後に取得しながら未公表だった緊急時モニタリングのデータを公開した。同原発で原子炉格納容器内の圧力を下げる「ベント」作業を始める前に、原発周辺で原子炉由来と考えられる放射性セシウムなどが検出されたとのデータもあり、保安院は精査する。
公開されたデータは、地震が起きた3月11日から15日までの間に観測した大気中のちりの分析結果など。このうち、3月12日午前8時39分からの10分間に福島県浪江町で、8時37分からの10分間に原発がある同県大熊町でヨウ素131、セシウム137などの放射性物質が検出された。一部は核燃料が損傷することで生成する。
東電の推計によると、1号機では12日早朝には燃料の大部分が溶け落ちていたと考えられる。しかし、放射性物質を含んだ排気を外部に出すベント成功は同日午後2時半、大量の放射性物質が放出された水素爆発は同3時36分で、今回のデータが正確なら、それ以前に原子炉格納容器の密封性が失われ、放射性物質が外部に漏れていた可能性がある。
データは当初、同原発に近い大熊町のオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)にあったが、3月15日に事故対策の拠点が福島県庁に移転した際に持ち出されていた。
二ノ方寿・東京工業大教授(原子炉工学)は「半減期が短いヨウ素131などが検出されており、原子炉から漏れ出した可能性がある。しかしベント前に漏れ出すことは考えにくい。詳細に調べる必要がある」と話す。【足立旬子、中西拓司】