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Back number.> Autumn 2004.
●プロフィール
1949年、秋田県生まれ。東北大学教育学部卒業後、73年旧文部省に入省。初等中等教育局の小学校教育課、中学校課、高等学校課で課長補佐を務めたほか、教育助成局地方課教育行政企画官、生涯学習局学習情報課長、初中局小学校課長、体育局学校健康教育課長、同体育課長などを歴任して「学校教育のエキスパート」に。その後も、官房総務課長、官房審議官(初中局担当)、文化庁次長、生涯学習政策局長など、重要なポストを担い、2004年7月より初等中等教育局長に就任。省庁再編に伴い、旧初中局と旧教育助成局が合併してスタートした新初中局で仕事をするのは今回が初めて。趣味は博物館めぐりとスポーツ観戦(特に相撲)など。

ニッポン「教育再生」を目指して

いい先生との出会いが国の教育に携わる契機に。
潜在力ある先生方の創意工夫に期待したい。


「義務教育国庫負担制度」は国の責任として維持すべき。
全国的に高い義務教育水準は、世界に誇れる。

――初等中等教育局における当面の課題は「義務教育費国家負担制度」の維持だと伺っていますが。

銭谷 現在、国と地方が義務教育の責任・役割をどこまで持つか、税財政改革「三位一体」改革をきっかけに議論が行われています。義務教育費国庫負担制度というのは、憲法26条「国民の教育を受ける権利」を保障するため、公立小中学校などの教職員給与の2分の1を国が負担することによって、国民の義務教育を無償とし、かつ教育の機会均等と一定水準の維持向上を支えるための制度です。
 実際、義務教育の経費の4分の3は人件費、つまり教職員にかかるお金がほとんどです。国が財源を保障することで、これまで制度が安定的に維持されてきました。世界的に見ても、欧米諸国を中心に社会生活を営む上で最低限の権利保障や人材育成が大切であるとして、国が教育に大きく関与しています。対して日本が教育に対する国の責任を安易に手放していいはずはありません。私どもとしては今の制度を維持すべきだと思います。

――日本の初等教育は外国からも評価されているように、全国一律にどこの生徒もある程度の学力水準を保ってきました。地方としては財源を自分たちでもつことで独自の教育をしたい、ということなのでしょうか。

銭谷 小中学校の設置は市町村が行い、都道府県が給与負担と教職員人事(政令指定都市では市に人事権がある)を担当してきたことから、地域の義務教育は地域でと考える方もいるようです。また、いじめや不登校などで日本の教育はどうなっているのか、と問われることもあり、私どももそれは心していかなければいけません。しかし、その一方で日本の初等教育は、海外から高く評価されていることも事実です。文部科学省が平成13年度に発表した小学校5年生から中学3年生までの学力調査において、政令指定都市、市、町村の3つのカテゴリーに分けて子どもたちを比較しても、ほとんど学力に大きな差がないんです。この高い教育水準を維持することは非常に大切なことだと思います。
 義務教育は先生の数、施設、学校の配置、学年ごとの到達目標などは全国どこでも一定の水準が必要だと私は思います。そのことは国として基準を決め、経費が伴うものについては地方の財源を保証してあげる。そうした支えをした上で、各校が特色を発揮して、他とは違ったことができるよう、自主性・自律性がもてる学校システムにしたいと思っているのです。


「汝何の為に其処に在りや」を唱えた校長先生がいた。
出会って良かったと思われる先生にぜひなって欲しい。

――銭谷さん自身、先生からの影響を受けた思い出はあるのですか。

銭谷 秋田県立秋田高校時代の校長先生に感銘を受けたことが思い出されます。その先生が生徒によく言っていた座右の銘は「汝何の為に其処に在りや」という言葉。「自分はどうしてここに存在し、何のために生きているのか」について自覚的になって生活して欲しいという思いが、ひしひしと伝わってきました。実はつい最近、高校時代の同級生がその先生の最後の挨拶をテープから起こし、プリントを同窓のみんなに送ってくれたのです。非常に格調高い言葉で、時間を超えて胸に響いてきます。本当に尊敬に値する先生でした。
 今の先生方もこの学校で会えて良かった、いい方向に向けてくれたと思ってくれる子どもが一人でも増えるよう、刺激的な先生であって欲しいなと思いますね。

――今後、教員養成のための改革は何か考えられていますか。

銭谷 文部科学省としては教員の資質向上を図るために、教員免許制度の見直しや教員のための専門職大学院を構想しているところです。例えば専門職大学院には校長先生になるためのコースを設けたり、教育実習などを多く設けてベテランの先生が経験を伝えたりするような、より臨床的な教育を進めていけたらいいなと考えています。



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