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エネルギー政策:政府内で複数の立案が同時進行 混乱も

(左)玄葉光一郎国家戦略担当相(右)海江田万里経産相
(左)玄葉光一郎国家戦略担当相(右)海江田万里経産相

 政府のエネルギー政策の司令塔が定まらない。内閣官房の国家戦略室が主導する「エネルギー・環境会議」(議長・玄葉光一郎国家戦略担当相)は来夏、「減原発」を基調とする新たなエネルギー政策「革新的エネルギー・環境戦略」を策定する方針。一方、経済産業省も原発拡大を掲げた「エネルギー基本計画」の見直しに着手する。エネルギー政策の立案が並行して進み、混乱を招きかねない状況だ。【野原大輔、宮島寛】

 エネルギー・環境会議は、「脱原発」を訴える菅直人首相が信頼する国家戦略室が主導。約50人のスタッフをそろえる戦略室には、首相が戦略担当相時代に「一本釣り」するなどした民間出身者が十数人いる。原発を推進してきた経産省に強い不信感を抱く首相は「エネルギー政策の見直しは戦略室が主導する」との意向を周囲に伝えていた。

 しかし、エネルギー政策基本法では、中長期のエネルギー政策を定める「基本計画」の策定は経産相が所管すると定めている。経産省は近く、経産相の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」を開催し基本計画の見直し作業に着手する方針だ。このため、戦略室が「苦肉の策」(内閣官房幹部)として打ち出したのが、「革新的エネルギー・環境戦略」だった。中間整理では、戦略室がエネルギー調査会の議論を「チェックする」仕組みも盛り込んでおり、閣議決定で「正当性」を担保させた上で、経産省の政策見直し議論を監視する考えだ。

 しかし、エネルギー政策の見直しが戦略室のシナリオ通りに進むかは見通せない。中間整理策定では、首相の「脱原発」に肩入れする民間出身のスタッフと、経産省などからの「出向者」で見解が分かれ、原子力政策については「原発の依存度低下のシナリオを描く」との表現にとどめた。定期検査中の原発についても、安全評価(ストレステスト)による安全確認後に再稼働させる方針を明記するなど、現実的な内容に収まった。

 海江田万里経産相は「法律の定めにのっとって経産省でしっかりとエネルギー基本計画を定める」と強調、影響力を確保しようと息巻く。首相退陣後、戦略室の陣容がどうなるかも分からない。ただ、「やらせ質問」問題で原子力安全・保安院の関与が表面化する中、「薬害エイズの構造とそっくりだ」(菅首相)、「信用を失った経産省にエネルギー政策を任せられない」(与党幹部)との声も根強く、戦略室と経産省の綱引きが続きそうだ。

毎日新聞 2011年8月1日 21時35分(最終更新 8月1日 23時22分)

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