米統治下で原発検討 ナッシュ報告進言

2011年7月9日 09時51分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 米国統治下の1957年、米側が経済的な利益をアピールして米軍駐留を安定させるため、沖縄に民間用原子力発電を導入することを検討していたことが8日までに分かった。米軍が、県内で核ミサイル基地の建設計画を進める中、原発の民間利用が日本本土や沖縄で広がる反核感情への「有効な阻止策になる」との考えに基づき、当時のナッシュ大統領特別補佐官が、アイゼンハワー大統領に進言した。同補佐官が、大統領に海外駐留米軍の戦力や課題を極秘に報告した「ナッシュ・リポート」(57年12月)で明らかになった。(知念清張)

 報告書は56年の瀬長亀次郎那覇市長誕生を「(共産主義者に賛同する)危険な事態の単に前兆に過ぎない」と危惧。「反植民地主義の結束、原子力への恐れ、(日本本土への)復帰感情」が米軍の任務遂行に対する「手ごわい挑戦」と位置づけた。

 活力ある経済が「われわれのすべての重要な軍事的任務を果たすことを許容する風潮を維持するため政治的にも絶対に必要だ」と強調。そのため「一般大衆の目に『経済が発展した』と劇的に理解できるあらゆる努力がされるべきだ。こうした文脈から米国政府は下院軍事特別小委員会から提案された、沖縄における原子力発電による送電網開発を再検討すべきだ」と、議会側の意向を後押ししている。

 その上で、「軍と経済両面で利点があり推奨されるばかりでなく、沖縄のような軍事基地の要塞(ようさい)で、平和的に核利用を行うことは劇的なインパクトがある」と広大な米軍基地維持を前提とする、沖縄の経済発展の意義を強く打ち出している。

 当時、米国防総省は新規に軍用地を接収し、県内8カ所で核ミサイル基地の建設を計画していた。同報告書作成直前の57年8月、立法院は「核兵器の製造、実験、使用禁止と核兵器基地の建設中止要請」を全会一致で決議。米側が沖縄の民間経済発展のために原子力発電導入を検討していた時期は、無期限に沖縄をコントロールしようとする国防総省側と、地元沖縄の対立が先鋭化していた。

[ことば]

 ナッシュ・リポート 国防次官補も務めたナッシュ大統領特別補佐官が、海外基地のある29の国や地域の外交官や基地司令官、国務、国防総省から資料を収集し1年近い調査の末に完成させた付属文書を含め約300頁の報告書。

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