きょうの社説 2011年8月1日

◎日本海側拠点港 地域の発展に資する選定を
 日本海側拠点港の選定へ向け、石川県から金沢、七尾港、富山県から伏木富山港が名乗 りを上げた。国土交通省は今秋の決定をめざし、拠点港の絞り込みを本格化させるが、国側に求めたいのは、選定作業を通して、地域の発展に資する日本海側の港湾戦略を明確に描くことである。

 民主党政権は港湾政策でも「選択と集中」を掲げ、太平洋側では、アジアのハブ港をめ ざす「国際コンテナ戦略港湾」として京浜、阪神の2港を選定した。一方、日本海側は議論を煮詰めるなかで機能別に選定する方向となり、国際海上コンテナ、国際フェリー・国際RORO船、国際定期旅客、外航クルーズ、原木その他の貨物に分けて選ぶことになった。金沢、伏木富山港は国際海上コンテナや外航クルーズなど複数の項目、七尾港は原木輸送で応募した。

 拠点港を選定する狙いとして、国交省は各港湾の役割の明確化と連携を図り、日本海側 全体の国際競争力を強化する方針を打ち出した。東日本大震災で、太平洋側の代替機能としての日本海側港湾の役割も強まっている。各港が立地産業や貨物の集荷状況に合わせ、機能分担を進めれば、より効率的な物流ネットワークが可能になろう。日本海側の港湾戦略は太平洋側と異なって当然である。

 東アジア、対岸諸国のおう盛な需要を背景に、日本海側のコンテナ取扱量は大きな伸び を示している。太平洋側へ貨物を運んでいた北陸の輸出企業も地元港の利用を拡大させ、港と地域経済が密接につながる本来の姿が見えてきた。新興国の経済発展を北陸に取り込み、港を通して地域経済を成長させるには国の後押しが欠かせない。拠点港選定に際しては、これまで太平洋側に偏っていた国の港湾政策を転換させる大きな視点がほしい。

 折しも日本海側では、北前船を復元した木造帆船「みちのく丸」がゆかりの10道県、 14港をめぐる事業が行われ、伏木富山港や金沢港にも寄港する。各港がそれぞれの特徴を生かし、北前船時代のような活気ある日本海物流の姿をどのように描いていくか。競争し合うエネルギーを新たな海のネットワークづくりにつなげたい。

◎小型家電リサイクル 「地上資源」の回収促そう
 不燃ごみとして収集した小型家電からレアメタル(希少金属)や貴金属を取り出すリサ イクルシステムが石川、富山の自治体にも広がってきた。レアメタルの豊富な中国が、戦略として輸出規制を強めている中、安定した資源確保が課題となっている。日本は地下資源には乏しくとも、膨大な廃棄物の中にレアメタルが眠る「都市鉱山」の国と言われる。北陸でも、さらに多くの自治体に小型家電のリサイクルを促し「地上資源」の有効活用に道を付けたい。

 レアメタルは電気自動車から医療用レーザー治療器に至るまで、技術立国日本のお家芸 とも言える精密機器類に使われているのをはじめ、携帯電話やデジタルカメラ、DVDプレーヤーなど、生活必需品となっている小型家電にも不可欠の素材となっている。

 しかし小型家電は、現行の家電リサイクル法の対象外であり、使用済みの機器を適切に 回収する制度がないことから、埋め立て処分されるケースも多い。環境省の試算では、排出される機器の中にある貴金属は年間300億円、レアメタルは50億円相当という。

 このため中央環境審議会では、今春から有識者らによる小委員会を設置し、新たなリサ イクル法も含め検討に入った。輸入の停滞による産業界への影響も不安材料として浮上してきた中で、貴重な資源の安定的な再利用につなげる意味でも、法的整備を急ぎたい。

 そうした制度構築に先駆けて、自治体レベルで家庭から小型家電を回収し、リサイクル 業者に売却するシステムを取り入れる動きが出てきた。ごみ量が減ることによる処理費用の低減に加え、業者への売却益も得られるという二つの利点がある。

 石川県では白山市と野々市町で構成する白山石川広域事務組合など、また富山県では県 と富山、高岡など5市が連携して取り組んでいる。循環型社会づくりを重要施策と位置付ける両県であれば、県民にこうした取り組みの周知を図り、独自の支援制度もつくるなどして、より多くの自治体にリサイクルシステムを広げていきたい。