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【社説】

脱原発方針 明確な工程表を早く

 菅直人首相が記者会見で、原子力発電への依存度を下げる中長期政策を表明した。「脱原発」の炎を絶やさないためにも、現内閣だけで終わらせず、次期政権にも方針を引き継ぐことが重要だ。

 首相の会見は今月十三日以来。前回の会見では将来の「脱原発」を表明したが、閣内からも批判が相次いだため、「個人の考え」に軌道修正をしてしまった。

 この点、首相はこの日決定した「革新的エネルギー・環境戦略」を「政府の統一的な政策を示すもの」と述べた。原発依存度を下げることを政府の方針と明確に位置付ける意味があるのだろう。

 重ねて言うが、段階的に原発依存度を下げ、将来は原発をなくすという方向性は支持する。

 共同通信が二十三、二十四両日に行った全国電話世論調査によると、首相の「脱原発」方針に「賛成」が31・6%、「どちらかといえば賛成」が38・7%と、合わせて七割以上の人が賛成だ。すでに脱原発はほぼ国民的コンセンサス(同意)があると言ってもいい。

 ただ政府は、当面の電力需給安定策として「安全性が確認された原発の再稼働を進める」ことも決定している。

 すべての原発を停止するまでにどれだけの時間をかけるのか、原発停止で減る分の電力をどう補うのか。脱原発の実現までに、詰めなければならない点が多々ある。

 政治の役割は、具体的な将来像とそれに至る明確な工程表を国民に提示し、着実に実現することである。どれが欠けても、政治の役割を果たしたとはいえない。

 菅内閣はどうか。将来像を示したことは評価したいが、工程表の欠如と実現力のなさが問題だ。

 自然エネルギーの拡大や原発依存度の引き下げなどの数値目標づくりはこれからだ。実現力という点では、すでに退陣表明した首相にどれほどの力が残されているのか、疑問は消えない。

 国の根幹にかかわる中長期的なエネルギー政策は政権が代わっても引き継がれることが重要だ。首相の個人的考えとして軽々に語られるべきものではない。脱原発の方向性を担保するためにも閣議決定などの手続きが必要だ。

 現行法では、エネルギー基本計画は経済産業相が作る。官僚の抵抗で骨抜きにされないためには強い政治主導が欠かせない。

 首相に残された役割は、次の政権に脱原発方針を引き継ぐため、政治生命を賭すことである。

 

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