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破綻するべくして破綻した小包統合    (07.04)
郵政官僚の無責任体質が招いた事業破壊

7月4日付朝日新聞7月4日付け朝日新聞、1面トップに踊る「統合ゆうパック遅配」の記事。すでに報告してきた通り、現場の職員には、こうなるであろうことは誰もが予想していたことだ。相も変わらぬ官僚主義的上意下達の労務管理方式が招いた破綻だ。全てを現場責任・個人責任にしてきた経営陣の無責任体質が招いた結果だ。

今日(7月4日日曜日)も現場には応援にかり出された普段見かけない職員が右往左往している。小包配達システムの訓練もろくに受けていない事務方の職員達だ。しかも一部の現場では局会社やゆうちょ銀行、かんぽ生命からといった職員まで動員されている。多くは職制だ。
  確かに民営化前だったら貯金や保険は同じ事業内の「課」にすぎず、他課応援という形は年末などには珍しくない光景だった。しかし今は同じグループ内会社とはいえ、つい先日まで事業所内に設けられた壁と職員ごとのIDによって、会社を超えて双方行き来するのを厳しく制限・管理していたのではなかったか。民営・分社化されたのだからと。
  郵政グループ一体となって慣れない職制をいくら片端から動員しても、現場の混乱は増すばかり。そもそもこれら職制達には今日の給与はどこからどういう形で支払われるのか。休日出勤手当は?超勤手当ては?。まさかボランティアと称してのただ働き動員?

「生もの小包からだらだらと液体がこぼれていてね、こんなの初めてですよ」
  「苦情の電話が鳴りっぱなしで仕事にならない。行方不明の小包を探そうにも、とっかかりさえない。滞留小包の山を前に途方に暮れるばかり」
  「今日(2日)も覚悟していったら、全然小包が届いてない。センターがパンクしてるという。おかげで早く帰れたけど、土日は休めないね」
  「俺(課長)に聞くな、自分で処理しろ、間違えたら処分だ」

7月1日、その破産は誰もが予想していたことだ。JPEX統合の時も混乱したが、それを上回る混乱を予想することは現場の職員にとってはたやすいことだった。
研修資料  形ばかりの研修。それもとても読みこなしきれない分量の資料(140ページ!)をぽんと渡されて、あとは自分で目を通せと。
  現場の管理者に課された研修も似たようなものでなかったか。全ては机上の計算。うまくいかないのは現場のせい。昔から繰り返されてきた上意下達の官僚主義的職場運行管理。
  今までそれが、今回これほどの破綻を避けられてきたのは、ひとえに現場の職員がその尻ぬぐいをしてきたからだ。
  誤配をしたら処分、端末入力漏れも処分、営業は自爆、交通事故を起こしたらお立ち台。何から何まで現場の個々人に責任をしつければ、システムの矛盾を認識する必要はなくなってしまう。管理者の仕事は単なる奴隷のむち打ち職人になってしまう。このままでは破綻は目に見えているのに、それを上層部に伝えるパイプは全く途切れてしまっているのだ。全ては現場のせいなのだから。全ては個人のせいなのだから。
  現場管理者は無用の長物と化して久しいのだから

ペリカン便で長く配達を請け負っていた熟練労働者を抱える委託業者をいとも簡単に斬ってきた。代わりに郵便の職員を配置換えにしても、そもそもこれまでの数倍もの量をこなす体制にはない。わかりきったこと。
  ペリカンから出向してきた社員もビックリしているのではないだろうか。管理者からの指示といえば、あれをするなこれをするなと個人責任を押しつける周知事項ばかり。オマケに唱和という名の精神主義注入。新興宗教のお経を唱えているような光景。そして肝心な現場の具体的な研修は、誰も読まない資料を渡して終わり。

今回ペリカンにかかわらず民営化以前から郵便局で長年仕事を請け負ってきた業者までも、その委託条件の大幅切り下げによって事実上リストラしてきた。過酷な長時間・過密労働に支えられた請負業者の労働者の仕事範囲を、140ページの資料を読みこなしただけですぐに肩代わりできる職員などいない。

郵政事業に長年染みつき、民営化後さらにそれが極端なまでに昂進した、官僚主義的職場運行管理。
  それが積もり積もって堰を切ったのが、今ゆうパック統合の破産だ。
  責任は現場にはない。これほどの破産をもはや現場の個人の責任とすることはさすがにできないだろう。経営責任を回避することは不可能だ。

官僚主義、精神主義、無責任体質、の破産なのだ。
  それは、労使一体となった無責任体質の行き着く末の破産でもある。

(多田野 Dave)