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[29087] 【習作】式神探偵 流転抄 (東方project × 式神の城)
Name: S.S◆19bce1c4 ID:bae14d73
Date: 2011/07/30 13:36

※注意事項
・この作品は東方Projectの二次創作+式神の城とのクロスです。
・作品を書くにあたって一部キャラクターの性格及び設定を改変している場合があります。故に、そういった事が受け入れられない方はブラウザバックをおすすめいたします。
・以前、習作とつけずに投稿した際に指摘して下さった方にこの場をかりて謝罪と感謝を。未熟なものでいきおい感情だけで投稿してしまいました申し訳ない。





「ある方を探していただきたいのです」
 H&K探偵事務所に訪ねてきた客を日向は困惑しながらも応対していた。ソファを勧められた巫女服の少女は数瞬の間の後に本題を切り出した。
「そいつは?」
 憂いを帯びた巫女服の少女、一風変わったこの姿でも彼女には強い何かを感じさせるものがあった。この感じは男だな、と日向は思った。
「男の人、ある男性を探していただきたいのです」
 ほらな、と日向は内心呟いた、昔から勘はいいのだ。
「で、その男の名前は?」
「わかりません」
「……は?」
 間の抜けた声を上げてしまう日向。
「馬鹿馬鹿しいと思うかもしれません。けれど、私はその男性を探さなければならないのです」
 少女の顔は悲壮な色を帯びながらも必至だった。そこまで思われている男に日向は少しだけ嫉妬した。
「日向さん、お願いします。私にはあなたしか頼れないのです」
 日向玄乃丈は大きく溜息をついた。やっかいな依頼なら幾度も受けた、しかしこれ程嫌な依頼を受けたのは初めてである。しかし、
「わかった、引き受けよう」

  日向玄ノ丈は空を見上げた。空は黒雲に覆われ、月や星の輝きは無い。
不意に大声で言い争うのが聞こえたのでそちらに目を向けた。14階のビルの屋上からではあるがこの男にはその争っている現場、コンビニの前が見えた。
 屯する若者達が殴り合いの乱闘をし、その余波がコンビニにまで及び、くだけたガラス、それによる怪我、血が彼等の興奮に油を注ぐ。
 こんな事が日本全国、いや世界中がこの様なありさまだ。
 世の中が乱れ出したのはつい最近だ。切っ掛けはわからない、しかしいつの間にか起こり、容易く拡散した。誰かの蛮行に触発され、連鎖が起きる。もはや、一度起こった事を収束させる事は今や誰にも出来ていない。
 それでも、それを見てみぬふりを出来ぬ者はいて、そういった者達が事後処理をしている。つまりは、悪い奴をとっちめてムショにぶち込む事だ。日向はそれをやっていた。
「ふっ!」
 鋭い呼気とともに、日向は特注のスナイパーライフルのトリガーを引く。ほぼ無音で飛翔するゴム弾が若者達の意識を無慈悲に刈り取っていった。気絶昏倒し、ぐったりした彼等を確認して日向は携帯を取り出し警察に匿名の電話をする。後は警察が片付けてくれるだろう、警察のなかにもこの事態を憂いて必至になんとかしようとするのがいると聞いた。確か玖珂とかいう刑事だったか……
 ビルの非常階段を何も考えず降りる。コツコツという足音と階段の金属の軋む音を聞きながら、地上に降り立つ。ふと、”浮遊観”を感じた。
 日向の勘が警鐘を鳴らす、これはヤバイ、と。
 抗おうと身構えた日向の視界が、暗転した。

 目を開いた日向の視界に映ったのは、夕焼け空の赤だった。いや、それだけではない。身を起こすと周囲には彼岸花が一面に咲き乱れていた。
「こりゃいったい……それにしてもきれいな景色だ」
 彼岸花の紅と、夕日の赤が見事に調和している。まるで絵画のなかにでもいるようだ。日向はただじっとその風景を眺めていた、この光景に何か懐かしい何かを感じていた。日向は記憶を探る、その背後に迫る何かが迫っても気がつかない程に。
「いただきま〜す!」
 ガブリ、という効果音が聞こえそうな程見事に噛み付かれた日向は一瞬放心した。だが、次の瞬間には噛み付いた少女(?)を引きはがし投げ飛ばした。余談だが、首筋にはくっきりと噛み痕が残っている。悲しそうに首筋をさする33歳の探偵、一方投げ飛ばされた少女は地面に激突する事なく、ふよふよと飛びながら寄ってきた。流れる金髪に赤地に白のラインのリボン、赤い眼をした少女。
「いきなり何をするんだ!」
「え、ルーミアは食べようとしただけだよ」
 何気に恐ろしい事を言う少女、ルーミア。
「……お前、もしかして妖怪か?」
「そうだよ」
 躊躇いの無い返答。日向はサングラスの下で眼を細めた。
(ここは、どこだ?)
 しかし、考えに沈む間は与えられなかった。ルーミアが再び飛びかかってきた。
「うわっ、やめろ!」
 慌てて身を躱し、距離をとる。
「俺はうまくないぞ!!」
「そーなのかー。でもお腹が空いてるから関係ないね」
「人の話を聞け!」
 突如、視界が暗闇に包まれ、少女の姿が掻き消える。日向は彼女が通常の人間ではないと確信した。
「なら……手加減する必要はないな」
 日向の手が閃く、背後から迫る気配の前に無数の雷球が出現した。
 ただの人間だと思っていたので、思わぬ反撃にルーミアは雷球の直撃を受けてしまう。
「!?」
「暗い所で便利だろ、俺の式神は」
 暗闇の結界のなかで、日向は雷球を操りルーミアを寄せ付けない。
「うう、イジワル」
「馬鹿言え、食べられる身にもなってみろ」
 日向はルーミアの気配を読み、正確に雷球で迎撃する。
「埒があかないな、そろそろ休戦しないかお嬢さん」
 日向の問いかけに闇に隠れた気配が動きを止める。
「俺はおいしくないし、こうやってどうどう巡りを続けるぐらいなら他の奴の所に行く方がいいと思うぞ」
 その言葉にルーミアは闇の結界を解いた。
「いいのか?」
「うん。なんだかどうでもよくなっちゃったから、それじゃあね」
 ルーミアはそう言ってふよふよとどこかへ飛んで行った。
「……ふうううううう」
 ルーミアが去った事を確認すると日向は大きな溜息をつき、倒れ込んだ。
(疲れた〜)
 式神の力を使った事と闇の中で感覚を研ぎすまし続けていた事で日向は疲れきっていた。まぶたが重くなり、日向は彼岸花の花畑で眠りについた。


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