パスワードのように覚えにくいものを利用するかわりに、 自分だけが知っている忘れない記憶にもとづいた認証手法を利用できるとよいのですが、 そのような記憶を判定する認証システムを新しく作るのは大変ですし、 自分だけが回答できるような問題をユーザが作成するのは意外と面倒です。 パスワードを忘れたときのために 「母親の旧姓は?」のような問題の回答を登録させるシステムがよくありますが、 自分だけが答えられる問題をいくつも考えるのは結構大変です。
「母親の旧姓」や「2次方程式の解の公式」のような記憶は意味記憶と呼ばれ、 自分の体験や感情にもとづく記憶は エピソード記憶と 呼ばれます。 学校で教わるような知識のほとんどは意味記憶であり、すぐ忘れてしまうものですが、 体験にもとづくエピソード記憶はなかなか忘れることがありません。 写真を見ると簡単にエピソード記憶が喚起されるので、 写真に関する問題に対しては間違いなく正しく回答することができますし、 正答に似た誤答を用意するのも簡単です。 パスワードを要求するシステムにおいて、 パスワード文字列を自分で考えて登録するかわりに、 問題と回答のクイズから自働生成した複雑なパスワードを利用することにすれば、 パスワードを忘れてしまう心配なく、安全にパスワード認証システムを利用することが可能になります。