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※完全オリジナルです。
※3時間ほどで書いたので、ムラがあるかもしれません。
※続編はすぐにはできないかもしれないです、ごめんなさい。
第一話 村からの追放と贖罪のための旅立ち
僕の名はラック。
ユキリア王国の片隅にある、サンと言う小さな村で暮らしていた。
僕は両親の役に立ちたくて、剣術の練習も魔法の勉強も一生懸命やった。
でも、僕の家は勇者の家系だとか言うわけじゃないんだ。
村の人達の必要な物を集める何でも屋みたいな雑貨屋。
それなのにどうして強くなろうとしているのかと言うと、大好きな村の人達を守りたいからなんだ。
僕を温かく育ててくれる両親。
生意気だけど可愛い妹のエルザ。
幼馴染で小さい頃からの親友ヒットと、僕が小さい頃から好きだった女の子のリリイ。
僕は村での小さな幸せを感じられる生活を守りたいと思った。
両親も家の手伝いよりも剣術の練習や魔法の勉強をする僕を怒りもせずに見守っていたっけ。

そんなある日、僕とヒットは村長さんに村の近所の洞窟に住み着いて村の農作物を荒らしているゴブリン達の退治を頼まれた。
ヒットも野山を駆け回って普段から魔獣を退治しているだけあって、ゴブリン達に後れを取る事は無い。
僕達はゴブリンを追い散らすと、村ではちょっとした勇者みたいに扱われた。
思いの外に洞窟に居たゴブリン達が少なかっただけなんだけどね。

両親も、僕は小さな村に残って雑貨屋を引き継ぐより、勇者になったらどうだなんて冗談交じりに話してくれた。
僕はそれも悪くないと思った。
なぜなら、リリイに良い所を見せたいと思ったからだ。
リリイは僕の気持ちに気付いているのに、まだ友達の関係でいようと言ってる。
僕達はもう14歳だし、もう少し関係を進めても良いんじゃないかなと思う。
リリイは昔から戦士様が好きだと言っているから、もしかしてヒットが好きなんじゃないかと思って僕は焦っていた。

だから、僕はもっと大きな街で手柄を立てて、有名になってやろうと思った。
今思えば、とても愚かな考えだ。
でも、洞窟のゴブリンを退治したぐらいでそんなに注目できるわけはない。
そこで、僕は村で騒ぎを起こして解決する計画を立てた。
それは自分の雑貨屋が襲われたように見せかけて、僕が事件をスピード解決すると言うものだ。
犯行現場は自分の家。
盗まれたものも無事に帰ってくる。
これなら誰も傷つかないと僕は思っていたんだ。
それが身の破滅になるとも知らずに。


その日の夜中、僕は自分の雑貨屋の窓を叩き割り、泥棒が入ったように偽装して、追いかける真似までした。
しかし、残念な事に、僕は剣術の練習や魔法の勉強はしていたけど、こういう事には素人だった。
窓ガラスが外から割られている、足跡が不自然だ。
そして何よりも僕自身が挙動不審だ。
あっという間に僕の自作自演だとばれてしまった。
僕は翌朝、村人達に囲まれて尋問を受けた。
周りには長老の他に僕の両親、妹、ヒット、リリイが居る。

「何でこんな事をした」
「ぼ、僕は英雄になってみたかったんだ……」

長老の質問に僕はそう答えることしかできなかった。
僕を昨日まで温かく見守ってくれていた村の人達は怒りと悲しみがおり混じった目で僕を見ていた。
そして、最もショックだったのはリリイの言葉だった。

「ゴブリンを退治したから、ラック君の事を見直したのに……こんな事をする人だなんて、思わなかったわ!」

村の人達も続いて僕に冷たい言葉を浴びせた。
最終的に長老さんが被害が無かったからと言って僕の罪は問われない事になった。
僕は家に帰されたけど、息をするのが辛いほど胸が痛かった。
後悔しても遅い。
僕は完全に嫌われてしまったのだ。
見栄を張りたいと言う出来心のせいで。
家族と一緒に居るのも辛い。
家に居るのも辛い。
僕はその日の夜、村を飛び出す事にした。

「よう、家出か?」

村の門で僕を待っていたのは、友達のヒットだった。

「僕は、村には居られないよ」
「そうだな、俺もお前の仲間だと思われると迷惑だ」
「ご、ごめん、僕のせいで」
「だから、俺も村を出て行く事にするぜ」
「なんで、ヒットは何も悪くないじゃないか! 僕がみんなにそう言うよ!」

僕が訴えると、ヒットは深い溜息をついた。

「全くお前は世間知らずで甘ちゃんだな。世の中はレッテルを貼り付けてそれっきりってやつが多いの」
「じゃあ、やっぱりリリイも」
「俺には判らん。でも今すぐ謝りに行っても逆効果だと思うぜ?」
「そうか、やっぱり村を出て行った方がいいんだね」
「まあ、お前の今までの行いがどれほど評価されているってことだな」

僕はこれ以上話していると誰かに見つかってしまうと思い、ヒットに別れをつけて村を出て行こうとする。

「偶然だな、俺もそっちの方向に行こうとしていた所だ」
「ありがとう……」
「礼なんていいさ、俺はお前がまた間違いをしないか監視しているだけだからな」

僕とヒットは肩を並べて歩き出した。

「僕、心を入れ替えて本物の英雄になるよ、いや英雄じゃ無くても良い。1人の人間としてやり直せれば」
「ふん、いたずらばかりしていた俺と立場が逆転だな」

僕の言葉を聞いてヒットは楽しそうに笑う。
最寄りの町へ行く途中の道で、僕達は魔物と遭遇したが、苦戦する事無く倒す事が出来た。

「まったく、お前はそこそこできるやつなんだから、自信を持てよ」

ヒットはそう言ってまた笑った。
僕達の道は希望へと続くのか絶望へと続くのか。
旅は始まったばかりだ。


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