検証・大震災

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検証・大震災:福島原発事故3カ月(6)  続く「風評被害」

 南相馬市の風評は依然、収まらない。地震後数日で市街地のライフラインはおおむね復旧したが、コンビニエンスストア、スーパー、金融機関は閉店を続けた。市外からの物流は回復しない。市外に本社を置く民間企業は社員を退避させ、全国紙やテレビの記者も一時姿を消した。「我々は見捨てられた」。市長と市職員は失望した。

 24日夜、市役所3階の応接室。少しやつれた表情の桜井市長は、カメラに向かって語りかけた。「市民は今、兵糧攻めの状態です。人は助け合ってこそ人なんだと思います。ご支援をお願いします」

 撮影された11分間の訴えは、市長の友人が動画投稿サイト「ユーチューブ」にアップし、英語の字幕とともに全世界に広がった。

 市長は宮沢賢治にあこがれ、岩手大農学部で学んだ。家業の農業に専念した後、近くの産業廃棄物処分場建設計画に反対したのを機に8年前、政界に身を投じる。市議を経て昨年1月、市長に初当選した時には想像もしなかった事態に直面した。市には外国メディアが押し寄せ、のちに米タイム誌が「世界で最も影響力のある100人」の1人に選んだ。

 桜井市長は25日夕、セブン-イレブン・ジャパン本社に電話をかけ、面識のない井阪隆一社長に直接頼んだ。必死だった。「市内の店舗を営業再開させてください」。同社はすぐに応じ、流通経路を工面して26日夜、原町西町店を再開させた。

 星係長は「あれが大きな引き金になった」と振り返る。金融機関や他のコンビニも後に続き、市街に物資が入り始めた。国から常駐の連絡役が市に派遣されたのは、状況が好転し始めた26日になってからだった。

2011年6月10日

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