文章を書く前に

文章を書く前に次のことをしっかりとイメージしておく。

  • 誰が読むのか。
  • 読み手にどんな感想を持ってもらいたいか。
  • 読み手はどれくらいの予備知識を持っているか。
  • 読み手はどんな目的で、何を期待して読むのか。
  • 読み手が真っ先に知りたいことは何か。

レポート・論文を知る

レポート・論文とは何か

  1. 問いが与えられ、または自分が問いを提起し、
  2. その問題に対して明確な答えを与え、
  3. その主張を論理的に裏付けるための事実・理論的な根拠を提示して、主張を論証する。

標準的な構成要素とは何か

レポート・論文の構成は、

  • 概要
  • 序論
  • 本論
  • 論議

という要素が標準的である。次にそれぞれの要素について簡単に見てみる。

概要
論文全体を結論も含めて、すべて要約する。
序論
  • 本論で取り上げる内容は何か。
  • その問題をどんな動機で取り上げたのか。
  • その問題の背景は何か。
  • その問題についてどんなアプローチを取ったのか。
本論
調査・研究の方法・結論
論議
自己の議論・結論を客観的・第三者的に評価する。

そのほかに、文章の冒頭には論文のタイトル・著者名・所属機関、終わりには注・引用・参考文献などを書く。

文章を組み立てる

パラグラフとは何か

A君は根っからのスポーツマンだ.夏は水泳,冬はスキー,春と秋はテニスと,日焼けのさめる間がない.いちばん年季を入れたのはスキーだという.

パラグラフは,上の例にみられるように内容的に連結されたいくつかの文の集まりで,全体として,ある一つのトピック(小主題)についてある一つのこと(考え)を言う(記述する,明言する,主張する)ものである.いまの例ではトピックは「A君」で、このパラグラフは全体として彼が「スポーツマンである」ことを述べている.

パラグラフには,そこで何について何を言おうとするのかを一口に,概論的に述べた文がふくまれるのが通例である.これをトピック・センテンスという.上の例では第1文「A君は根っからのスポーツマンだ」がそれだ.

パラグラフにふくまれるその他の文は,

  1. トピック・センテンスで要約して述べたことを具体的に,くわしく説明するもの(これを展開部の文という)か,あるいは
  2. そのパラグラフと外のパラグラフとのつながりを示すもの

でなければならない.

トピック・センテンスは,(中略)パラグラフの最初に書くのがたてまえである。

文章を組み立てる順番

問いを細分化する

レポート・論文を書くときにはまずアウトラインを作る。アウトラインを作成するためには、レポート・論文の問いを細分化する。

細分化するためには、問いに対して次のような質問をする。

  • 本当にそうなのか?
  • どういう意味だ?
  • いつから、いつまで?
  • どこで?
  • だれが言っているのか、誰に言っているのか?
  • どのようにして?
  • どんな状態なのか?
  • どうやって行うのか?
  • なぜなのか?
  • ほかの事例ではどうか?
  • これについては?
  • これだけか?
  • すべてそうなのか?
  • どうすべきだろうか?

それぞれの問いについて、現時点で思いつくことのできた答えのアイディアや仮説をメモする。しかし、この答えは仮の目標であり、結論の試案である。

答えを思いつかなかった場合は、どんなことを調べれば答えられそうかを調べ、そのアイディアを書き込む。思いついた答えに問いを与え、それぞれの問いをさらに細分化する。

細分化した問いからアウトラインへ

細分化した問いをアウトラインに持っていくためには問いを捨てる。その基準としては、

  • 自分が最も関心を持っている問いを中心に据える。
  • その問いを解決するために関連する問いや話題をピックアップする。
  • 自分の能力・時間を考え、資料が手に入りそうかどうか、また新しい論点が含まれるかを検討する。

アウトラインから論文へ

  1. 簡単なアウトラインを作る。
  2. それぞれの問いと主張に説得力を持たせるため、論証や例を加える。
  3. アウトラインの各項目を、短い文の形で書いてみる。
  4. その短い文をトピック・センテンスとして、そのトピック・センテンスを補強したり、説明したりする材料を付け加え、パラグラフを作る。
  5. それぞれのパラグラフに論証や具体例を付け加え、パラグラフを充実させる。
  6. 長くなりすぎたパラグラフをいくつかのパラグラフに分け、それらの相互関係を明示するようにつなぎの言葉やサブ・センテンスを付け加える。
  7. それらを再度補強する。以下、繰り返し。

分かりやすい表現で書く

意見と事実を区別する

木下是雄氏は「事実と意見(判断)との区別を明確にすることが特に重要である」と述べている。木下氏の考えを中心に、事実と意見を記述する際の注意点を紹介する。

事実の記述の注意点

  • その事実に関してその文章のなかで書く必要があるのは何かを十分に吟味する。
  • ぼかした表現に逃げずに、できるだけ明確に書く。
  • 事実を記述する文はできるだけ名詞と動詞で書き、主観に依存する修飾語を混入させない。

意見の記述の注意点

  • 意見の内容の核となることばが主観に依存する修飾語である場合には、基本形の頭(私は)と足(と考える、など)は省いてもよい。
  • そうでない場合には、頭と足を省いてはいけない。
  • 誰の意見なのかを明示する。
  • 自分の意見は、できるだけ明確に、ぼかさずに書く。
  • 意見の根拠とその意見をたてるに至る筋道を書く。

さまざまな表現に対する指針

文章はさまざまな表現で成り立っている。その表現の書き方を次に紹介する。

箇条書き(順序なし)の順序

  • 重要性
  • 規則性(例:50音順、アルファベット順)
  • 関連性のある項目をひとまとめにしたもの
  • 理解しやすい順番(例:具体的なものから抽象的なものへの順)
  • 興味の持てる順番

漢字

  • 基本的に常用漢字表に従う。
  • 漢字を使うのは、事物を表す名詞、事物の性質や動作を表す動詞、形容詞、形容動詞に限る。
  • これ以外のいわゆる機能語はひらがなにする。

修飾語の順序

  • 句(例:横線の引かれた)を先に、詞(例:白い厚手の)をあとにする。
  • 長い修飾語ほど先に、短いほどあとにする。
  • 大状況・重要内容ほど先にする(「時を表す」修飾句も頭に出す方がよい)。
  • 親和度(なじみ)を強弱によって配置を変える。

読点:、

  • 長い修飾語が2つ以上あるとき、その境界に打つ。
  • 原則的語順が逆順の場合に打つ。
  • 読み手が誤読しそうな箇所に打つ。
  • 比較的長い語句を並列させる。

句点:。

  • 文章の最後に()で注釈を付け加えた場合は()の後ろに打つ。
  • 地の文の中に「」が登場する場合は「」の後ろに打つ。
  • 行頭が「で始まり、行末が」で終わるときは打たない。
  • 「」の中の文章の終わりには打たない。

カギ括弧:「」

  • ほかの語や文を引用する。
  • 会話を示す。
  • 特定の語句を強調する。

二重カギ括弧:『』

書名と雑誌名、その他曲名などの作品名を表すためだけに使う。

丸カッコ:()

  • 論文名をくくる。
  • 補足・注釈・言い換えをする。

中黒:・

  • 2字の熟語など短い名詞を並列させる。
  • 外国語や外国人名をカタカナでつづるときの区切りを表す。

アスタリスク:*

本文中や表中の語句に対して注を参照させたいときに使う。

校正

校正記号やそのポイントなどについてはここでは触れない。校正の仕方についてのみここで記しておく。

  • 第2稿の文字数は初稿の90%を目指す。
  • 数人の親しい読み手に読んでもらう。
  • 時間を置いて、自ら読んでみる。
  • 音読する。
  • 印刷して読んでみる。

文章を書く上でのポイントなど

最後に、文章を書く上でのさまざまなポイントをリストアップしておく。

  • 語彙の乏しさを隠すために言葉を飾らない。
  • カタカナはアクセントを与え、文章にメリハリを生む。
  • 受身の文は少ないほどよい。
  • 代名詞の使用を避け、多用する概念には名前をつける。
  • 数字を使って定量的に示す。
  • 「が」を不用意に使うと文章が長くなる。「が」の前の事実を受けて、「しかし」という意味になる比較的短い文は使ってもよい。
  • 所有を示す「の」は使ってもよいが、ほかの用法の場合は違う表現ができないかを考える。
  • 連用形でつなぐのは避ける(…であり、…し、…され)。
  • 原則として「の」は2つ以上続けて使わない。
  • 「こと」「もの」を使うより、適切な単語を選ぶようにする。

参考文献

引用・参照した書籍

引用・参照したWebページ

引用・参照はしていないが、参考にした書籍