2011年6月1日 23時26分
政府・民主党が表明していた高速道路の料金制度見直しの内容が1日固まった。これまで実施していた「休日(土日・祝日)上限1000円」の制度と無料化社会実験は中止。新たに東日本大震災の被災者と中型車以上を対象とした東北地方中心の無料化を始める。被災者支援・被災地復興で一定の効果は期待できそうだ。しかし、民主党政権が掲げてきた「高速道路無料化」の金看板は、財源不足で迷走を繰り返した揚げ句、元の公約とはかけ離れた姿に変質した形だ。
被災者向けの無料化は、自宅修復などのため避難地と地元を往復する機会が増えるとみられる被災者の経済的負担の軽減に役立つことが期待される。トラック、バスなど中型車以上に限定された無料化も、国土交通省は被災地の早期復興に貢献すると意義を説明している。
また、早ければ今夏から、一般利用の全車種でも無料化が検討されている。実現すれば、東北地方を中心とした観光にプラスに働くことが予想され、経済効果も見込める。
ただ、震災復興の新たな看板の陰に隠れるようにして全国を対象とした「休日上限1000円」と無料化実験は事実上断念に追い込まれた。
民主党の高速道路料金に関する政策は、つまずきの歴史だった。09年3月、当時の自公政権が「休日上限1000円」をスタートさせたが、民主党が同年の衆院選で全国の「高速道路の原則無料化」を政権公約(マニフェスト)に掲げて大勝。鳩山由紀夫首相(当時)は、無料化に必要な予算を1.3兆円と見積もり、10年度予算案でまず6000億円を要求した。
しかし、財源難のため結局1000億円しか確保できず、10年6月から始まった無料化実験の対象路線は、高速道全体の2割弱に当たる1626キロにとどまった。
鳩山政権はその一方で、自公政権の置き土産である、「休日上限1000円」の見直しに着手。10年4月、前原誠司国交相(同)は、「普通車上限2000円」など曜日を限定しない新割引制度の同年6月導入を発表した。しかしそれも、民主党の小沢一郎幹事長(同)の反対にあい、発表から2週間で頓挫。政府・与党は10年12月、「休日上限1000円、平日上限2000円」との妥協案をまとめ、11年4月から実施することでようやく合意にこぎつけた。
その新たな上限料金制度も、震災により見送りが決まり、政府・民主党は、被災者支援と震災復興に焦点を当てた無料化にかじを切った。
これまで実施した制度が経済活性化や一般道の渋滞解消などにどう貢献したのかなどの十分な検証がされないまま、無料化の趣旨は震災復興にすり替わったことになる。【三島健二】