2011年5月31日 11時59分 更新:5月31日 14時35分
税と社会保障の一体改革をめぐり、政府が来月2日の集中検討会議で公表する社会保障改革案の全容が31日、明らかになった。年収65万円未満の高齢者に支給する年金を月額1万6000円加算するなど、社会保障の機能強化に重点を置いた内容だ。不足する財源を補うため、15年度までに消費税率を現在の5%から10%に段階的に引き上げていく方針も打ち出した。早ければ来年度にも2~3%程度の消費増税を実現したい考えだ。
社会保障の機能強化ではこのほか、世帯の年収に応じて、医療、介護などの自己負担を「総合合算」して上限を設け、それを上回る部分は公費で負担する制度の新設などを盛り込んだ。
一方、外来患者の窓口負担(原則3割)に100円程度を上乗せする「定額負担」を導入し、難病患者らの自己負担を軽くする財源に充てるとしたほか、70~74歳の高齢者の医療費窓口負担の引き上げや、年収1000万円を超える年金受給者の基礎年金を減額するなどの給付抑制策を打ち出した。
一連の改革に伴い、15年度には機能強化分だけで約4兆円の費用がかかると試算。これに対し、給付抑制で捻出できる財源は1.3兆円にとどまり、社会保障分野の費用負担は現在の制度より約2.7兆円拡大することになる。さらに、特別会計の積立金などの「埋蔵金」でまかなっている基礎年金の国庫負担割合を維持するための財源(約2.5兆円)や、年1兆円ペースの社会保障費の自然増分も賄う必要がある。このため、財源不足はさらに拡大し、対応するには、政府が社会保障の主要財源と位置づける消費税率の引き上げが不可欠と結論付けた。
政府は社会保障改革案をもとに、来月20日までに具体的な増税幅を含む一体改革案の取りまとめ作業に着手。今年度中に消費税法など関連法案の改正に道筋をつけ、早ければ来年度にも2~3%程度の消費増税を実現したい考えだ。
しかし、世論の反発を恐れる与党内には増税に対する抵抗感が強いうえ、10兆円を超えるとされる東日本大震災の復興費用との調整も必要になる。与謝野馨経済財政担当相は31日の閣議後会見で「(復興費用で)消費税の話をもう一度するのは、かなりしんどい」と述べ、消費税を社会保障財源として温存したい思惑をにじませたが、実現に向けた壁が高いのが現状だ。【赤間清広】
◆社会保障改革案の骨子
・年収65万円未満の高齢者の年金を月1万6000円加算
・年収に応じて医療・介護の自己負担額に上限を設定
・年収1000万円から基礎年金を減額
・医療外来患者の窓口負担に100円程度を上乗せ
・70~74歳の医療費の窓口負担を現行1割から2割に引き上げ
・消費税を15年度までに10%へ段階的に引き上げ