それでは伊藤さんに質問ですが、ドラマーの立場から見て、原田さんがNord Stageに変わった影響って、何かありましたでしょうか。
伊藤大助 : まず、聞き取りやすくなりましたね。大きなところから言うと。
郁子 : そうだね。格段にそうだと思います。
やはりバンドのなかでも、音の抜け具合が良くなったということでしょうか。
大助 : そうですね。普段は、自分の手元で鳴らしてる生音のボリュームを中心にして、他の欲しい音をモニターで返してもらっていく、ていうやり方なんですが、それでも場合によっては聞こえない音も出てきたり、自分の鳴らしてる音ですら聞こえない時もあるんです。でも実際、「今、誰が何をやってて、どんな状態なのか」ってことが、自分にとって演奏しやすい形として聞こえてくるってのがステージ上では大事で、単純にボリュームをあげて分かるようにすれば良いってもんじゃないんですよ。それが、ステージ上で出す生音のボリュームが、下がってきたというか。
郁子 : 今回のツアーでねー。
大助 : それは、例えば昔だったら、周りの音を聞くためにわざとそうすることもあったかもしれないけど。そうじゃなくて、ちゃんとNordの音とかが自然にしっかり聞こえてくるので、自分も余計な力を入れなくて良くなった、ってのはすごく感じますね。
郁子 : 聞こえないからおっきく叩いちゃうとか、聞こえるようにするためにおっきく歌うっては、やっぱあると思うんですけど、今回はモニター・スピーカーも含めて、「どういう状況でライブするのが一番良いのか」っていうのを、メンバーと西川さんで、結構ガッツリ話をして。ツアーをやるごとに課題は現れるから、「次はこういうのもアリだよね」とか、「こういうことやってみようよ」っていう意見を出して、そのおっきな課題の一つが、「どこまでコンパクトに出来るか」。で、その無駄な音を、省いていったんだよね。もっと丁寧に、音の点と点の間を聴きたいと思ったら、やっぱ環境を変えていくしかないから。それでNordの音になったっていうのは、すごく私たちとしては画期的だったというか、今までとはかなり違ったんです。
なるほど、やはりかなりの変化があったんですね。
郁子 : でも結果的にミトくんも、「やっぱ変えてよかったねー」って、ライブ始まってから言ってたから。良かったです。
よみうり(※)の時の話をお伺いしたいのですが、あのイベントをやってみて、ずばり如何でしたか。
※2010年9月5日、よみうりランド オープンエアシアター EASTにて行われたワンマンライブ「clammbon 2010『☆SUPER☆STAR☆』」。会場内には、クラムボンのメンバーが使用している機材を実際に触って演奏できるコルグ/Nordブースも設置された。
郁子 : 今回のツアーは、すごく狭いレンジのところから始めて。「全員の楽器がステージに乗り切るのかな?」ってくらいちっちゃい箱もあったんですけど、そこから最終的によみうりランドで、レンジが一番広いところに行ったんですよね。でも、ちっちゃいとこで確実にやってきたことっていうのが、あそこで身を結んだっていうか。だからこそ、あそこまでハシャいで演れた部分もあるし、なんていうか、「遊園地だからさっ!」っていう楽しみも取り込めた気がしてて。それに私たちの演奏としても、それまでに培ってきたものがあるんで、「どうなっても、もう大丈夫」っていう。会場がおっきいし、音も外に広がっていく一方だし、天井がカープしてるんでローも結構たまってたり…あとステージ自体が上に上がったり下がったりしてたんで音の聞こえ方も違ったりはしたんだけど、そういうことに振り回されないものが、私たち3人の中に出来上がってたから、「どうなってもきっと大丈夫」と思ってました。
なるほど。
郁子 : やっぱライブ一本目でいきなりあのサイズだと、広すぎてやりきれないと思うんですよ、三人が。演奏でキメたいとこがズレちゃったりすると、ほんのちょっとの聞こえ方の違いだけで、気持ちもブツッて離れたりするんですけど、回数を重ねた分、手が勝手にその「点」に向かって動いていける、っていう筋力はかなりついてたと思う。
ライブ用のアレンジも緻密ですよね。それぞれがそれぞれを補い合って、3人の役割がちゃんと考えられているんだなっていうのをとても感じました。
郁子 : 絶えずミトくんが、プレイヤーでもあるけど、監督としての目も持ってるから。全体がどう動いて絡んでるかっていうのを、すごく細かく聞いてて。それは大きいと思う。
ミトさんがベースでやりたくてやれないところを、原田さんが担ったりとか、すごく音楽的ですよね。
郁子 : 最初から、ミトくんがやりたい音像に対しては、手が足りてないんです。もうずーっと足りてないから、大ちゃん(伊藤大助)も、鍵盤とかベースの方まで歩み寄らないとっていう。
(ここでミト氏登場)
ミト : どうも〜。遅れてすみません。
とんでもないです、お忙しいところを。今はよみうりランドでのライブについてお伺いしているところなんですが、ミトさんには、aguilarのベースアンプを初めてお使い頂きました。
ミト : そうですね。ヘッドがDB751で、キャビがDB112を2発、っていうセッティングでした。僕のベースの帯域ってあまりにもレンジが広すぎるんで、ロー側を安定させるのがメインのアンプだとちょっと難しいんですよ。でも今回使ったのは、ハイがかなり伸びる感じだったので、いけると思って。真ん中の帯域に特徴があるというか、腰がある感じの音なので、今回のよみうりのセット的にはすごく相性が良かったですね。僕も最近はガッツリ音量を出すスタイルでもなくなったので、これぐらいのコンパクトなセットの方が、まとまって聞こえますよね。