NHK みんなのうた
第2夜
誰もが耳にしたことのあるメロディ。思わず口ずさんだ歌。
そんな定番ソング以外にも、『みんなのうた』には一度聞いたら忘れられない、不思議な魅力を持つ曲がいっぱい!
そこで今夜は、ファンだからこそ知っている超個性的な曲の数々を大紹介!
ちょっと変わった楽器を使うジャグ・バンドの『みんなのうた』生演奏に、
『みんなのうた』っぽい曲と映像を作ったファンの登場も!
これを見たらきっと歌いたくなる!?『みんなのうた』ナイト、スタート!
みんなのうた
 わたしがハマったこの一曲
 ホラー編
『みんなのうた』の中には美しいメロディとは裏腹に、身の毛もよだつ恐ろしい歌がある!?
『♪メトロポリタン美術館(ミュージアム)』
(1984年4月〜5月 放送)

作詞・作曲:大貫妙子 編曲:清水信之
うた:大貫妙子 アニメーション:岡本忠成
夜の美術館で、女の子を待ち受ける恐怖のラストに注目!


ばけつ飯田さん
最後はハッピーエンド?それとも…? 初めて聴いたのが4歳か5歳の時。最初に、天使の像がワーって迫ってくるんです。その時点で大泣き!その後もミイラが出てきたり。途中バイオリンのケースとトランペットのケースを持った女の子がスクーターに乗って横切るじゃないですか。そこで「救われたなー」と思ったのに、ミイラはまた出てくるし、最後には絵の中に閉じ込められて終わってしまうし!


金田正男さん
この曲がトラウマに 私も号泣したくち!この曲のイントロがかかった時点で体が硬直してしまうんですよ。その場を離れればいいものを、最後まで釘付けなんですよ、泣きながら!
ネットで『メトロポリタン美術館(ミュージアム) 被害者同盟』というコミュニティを作ったんです。あなたもトラウマになった、私もトラウマになった。じゃあ、トラウマを共有しよう!って。気が付いたら3000人を超えていました。


市橋圭介さん
女の子の無邪気さも怖い! ミイラと踊っているシーン。
「あ!中身が出ちゃう!」って(笑)

ちかちゃん
スクーターが暗示するものは… スクーターで行っちゃうシーンは、恐怖の道へ走っていくイントロのような気がしまして…。そして、最後のオチで絵の中に閉じ込められてしまう。その落とし方がすごく怖かったですね。


パパイヤ鈴木さん
実は、逆!? あの子は実は、人間じゃなくて絵の中の人なのでは!?暗くなってきたらニュ〜ンと出てきて、テクテクテクテクって歩き出すというところからイントロが始まるんですよ!


畑 亜貴さん
また逆のイメージ! “陳列物(絵)が現実(私たち)を絵として見ている”、みたいなイメージがありました。
怖さの秘密

道原しょう子さん
主人公が、絵ではなく人形で表現されているのが大きいですね。しかも、“赤い帽子”と“赤い靴下”が、“生命力”とか“彼女に流れる命”みたいなものを表現しているんです。それを、天使にかたっぽ取られちゃったり。そんな仕掛けで、彼女の命みたいなものがだんだん、美術品に吸い込まれていくような表現が出だしにあるんですよ。
かわいらしくて、邪気がなくて、楽しいものを表現するために生まれたような姿のこの主人公が、この暗いミュージアムの中で踊ったり、こけたりするということ自体にも、ある種のギャップがあるんですよね。
『♪まっくら森の歌』 本橋靖昭 作「まっくら森」より
(1985年8月〜9月 放送)

作詞・作曲:谷山浩子 編曲:乾 裕樹
うた:谷山浩子 絵:本橋靖昭 アニメーション:毛利 厚


河野雅樹さん
違和感が残る曲 絵柄がかわいらしいのに、よくよく見たり聴いたりすると、すごく不気味!理解しがたいという違和感がすごく残る曲なんです。どう解釈しようにも、太刀打ちできない感じがありますね。中でも、おじさんが出てくるところ!あのおじさんがめちゃくちゃ怖くって。この人が出てくる時は、あえて見るようにしていました。克服したくて!


まい姉さん
色味も怖い! 『みんなのうた』の映像って、わりとカラフルなものが多いと思うのですが、この曲では途中で森に迷い込んじゃってからはずっとブルーが基調!薄暗い感じが、やっぱり子ども心に怖くって。迷い込んじゃったネコとネズミが、本当に出られなくなっちゃうんじゃないかなっていう怖さをすごく感じていました。

畑 亜貴さん
これは恋の歌!? 恋という感情を子どもからお姉さんになる時に初めて知ると、怖いじゃないですか。価値観がひっくり返るような!相手の気持ちや自分の気持ちが“まっくら森”って表現されている。いったい何が出てくるのか分からないし、自分の中から何が生まれるかも分からない。それが怖いんだと思うんですよ。


ホカちゃん
自分の中にある“暗い森” 私はこの“まっくら森”は、自分の中にある“暗い森”のことだと思うんですね。だから、現実の世界ではなくて。人間って、みんなそれぞれ暗い部分を持っていますよね。そういう部分を、そんなに怖い意味ではなく“暗い森”として表しているんじゃないかなって。私は怖い歌ではなくって、とても素敵な歌だと思っています。
みんなのうた LIVE
バケツや洗濯板を楽器にするジャグ・バンド、少年山賊団の登場!
『♪南の島のハメハメハ大王』(1976年)

作詞:伊藤アキラ 作曲:森田公一

『♪トレロ カモミロ』(1970年)

作詞:F.マレスカ 訳詞:阪田寛夫 作曲:M.パガーノ

ジャグ・バンド

20世紀初頭、アフリカ系アメリカ人たちが身の回りの生活用品を使用し演奏していたバンド形態


ばけつ飯田さん
缶と木の棒でベース! ワイヤーだけで鳴らしているんですよ。ネックが固定されていないので、耳で音をとっています。


竹内ぎんさん
カズーも手作り! ゴムホースとセロハンで作りました。口にくわえてしゃべることで音を鳴らすんです。

※カズー
管の一部に紙などの薄い膜を張り、声を共鳴させて奏でる楽器


パパイヤ鈴木さん
楽しい! 子どもがこういうのをマネしてくれるとうれしいですよね!
『みんなのうた』の魅力

ジャグ・バンドで演奏したからこそ分かったこと


ばけつ飯田さん
No Border! 境界なし!外国の方も、小さい方も、大人の方も、おじいちゃんもおばあちゃんも、全員で楽しめるのが『みんなのうた』!
みんなのうた
 わたしがハマったこの一曲
 シュール編
歌詞と映像の絶妙なコラボレーションが魅力の『みんなのうた』。
でも中には「え?これ何?」と、目を疑いたくなるような曲もある!?
『♪泣いていた女の子』(1979年4月〜5月 放送)

詞・曲:みなみらんぼう 編曲:千代正行
うた:東京放送児童合唱団 アニメーション:月岡貞夫
母親の帰りを待つ少女を歌った曲。
映像の随所に奇妙なキャラクターが登場!


出原正裕さん
ツッコミどころがいっぱい! 水たまりで魚が跳ねたり、胴体が長いネコがいたり、部屋の中で焚き火をしていたり。小さいころ、僕も両親が共働きだったので留守番とかしていたのですが、ひとりで留守番をしている時ってなんか不安になって、天井のシミもなんか怖い形に見えてきたりしますよね。そういう不安な心というのを、この奇妙なキャラクターで表しているんじゃないかなって。


市橋圭介さん
歌詞と映像ではラストが違う!? 歌はアンハッピーエンドなんですよね。『ママは帰らない かわいそう』って。でも、アニメーションの方は最後、笑顔でハッピーエンドで終わるんですよ。あの終わり方は、アニメーターの方の良心かなと。救いを持たせてあげたのかなと。


道原しょう子さん
女の子のさみしさを表現
アニメーションを付けられた月岡貞夫さんは、『♪北風小僧の寒太郎』と同じアニメーターの方。こじんまりとしたキャラクターに感情を持たせるのがとてもお上手ですね。
寒太郎のずっとパッチリ見開いていた目に比べて、女の子はずっと目を閉じています。それに、団地が建て並んでいる広い地平線には緑がぜんぜんないですね。何にもないところなんですよ。こういった舞台にすることでも、女の子の本当にさみしい気持ちを表現しているし、マニアが見たら喜びそうなレアなもの(胴体の長い猫、スーパーマンもどき、円盤、など)がたくさん飛びかったり通り過ぎたりしても、彼女の目には何にも映っていない。ひたすらお母さんの帰りを待っているだけ。
『♪空にはお月さま』(1977年4月〜5月 放送)

作詞:別役 実 作曲:宇野誠一郎
うた:星野美樹子 アニメーション:大井文雄
熱唱する少女の個性豊かな表情と、不思議なアニメーションの融合!


神原光芳さん
非常に怪しい曲 スポットライトが当たっている世界と、まったく逆の暗い世界が対照的に表現されていて。
曲的にはあまり好きではないんですよ、はっきり言って!でも、気になっちゃう。


てりりさん
前衛的! 演劇のような芸術性っていうんですか。横尾忠則か、寺山修司か、みたいな!そういう感じがしますね。


くじょうさん
劇作家が書いた歌詞 演劇のようだとありましたが、この詞は別役 実さんが書いていらっしゃるんですよね。前衛的な劇を書かれる方ですけれど、そういう別役さんの世界がこの曲には展開されているのかなと僕は感じるんですよね。

※別役 実(1937年―)
劇作家・小説家 幻想的かつ独創的な作風が特徴の不条理劇で人気を博す


道原しょう子さん
確かにシュール! 別役 実さんは、言葉で遊ぶということが得意中の得意の方。曲も「音楽は数学である」とおっしゃった宇野誠一郎さんという方で、この歌は、確かにシュールの筆頭、先駆にあたるすばらしい作品だと思います。

※宇野誠一郎(1927年―2011年)
作詞家 作曲家 編曲家
『♪テトペッテンソン』(2002年10月〜11月 放送)

作詞:佐藤雅彦 作曲:HENRI DÈS 編曲:栗原正己
うた:井上順 デザイン:中村至男 アニメーション:松本 空


大塚雄介さん
覚えて歌いたい! 歌詞にまったく意味はありませんが、とてもリズミカルで、聴いていると楽しくなってくる一曲です。
映像は、作詞を担当された、NKHだと『ピタゴラスイッチ』の監修をされている佐藤雅彦さんという方が監督をされています。


ほうがんさん
記憶力を試す曲 どこまで全部覚えているかを試す曲ですね。


もんさん
初めて聴いた日は今でも忘れられない 会社から帰ってきて、テレビをつけて、ネクタイをはずしてワイシャツを脱ぎかけたときにこの曲が始まって。脱ぎかけの状態で口をポカーンとあけたまま最後まで見て、「え?今の何?」って、誰もいない部屋で声を出して突っ込みを入れてしまったんですよ。


畑 亜貴さん
編曲を担当した栗原正己さんが大好き 栗様のアレンジは一見ゆるい感じなのですが、ものすごく、省いて作りこんであるんですよ。足していくのは簡単ですが、抜いたときに、手抜きではなく計算されている感じがすごくするんです。しっかり世界観を作りこんであるから、音数が少なくても演奏自体になんかウキウキしてきちゃうんです。
みんなのうたっぽい曲を作ってしまった!
サラリーマンの河野雅樹さんは『みんなのうた』が好き過ぎて、自分で『みんなのうた』っぽい曲と映像を作ってしまったんだそう!

河野雅樹さん
娘の1歳の誕生日プレゼント 歌詞は友達が、あとは曲と映像を僕が作って。歌も僕が歌っています。娘に何かプレゼントをしたいなと考えた時に、自分にしかできないものを…と考えたら、『みんなのうた』というのが思い浮かんだんですね。きみ専用に作ったものなんだよっていうのが分かるようになれば、かけがえのないプレゼントになるのかなぁと。
みんなのうた
 わたしがハマったこの一曲
 マイベスト編
これだけは、どうしても外せない!という思い入れたっぷりな曲とは?
『♪以心伝心しよう』(1993年6月〜7月 放送)

作詞・作曲:大城光恵 編曲:磯谷 健
うた:大城光恵 アニメーション:古川タク


ほうがんさん
10年先も100年先も変わらない、普遍性 誰にでも伝えたいことが、歌としてきれいに表現されている。それから、アニメーション!歌詞のことには一言も触れていないんですよね。でも歌詞以上に曲のことを雄弁に歌っていて。しかもアニメーションとしてもおもしろい!私にとっての『みんなのうた』の理想像がこの曲にあるなという気がしますね。


道原しょう子さん
古川タクさんのア二メーション
これは、第5回 広島アニメーションフェスティバル 子ども向け作品部門で第1位をとられた作品です。国際アニメーションフェスティバルには外国の方がとてもたくさんいらっしゃって、そこでは字幕も何も出さずにこの曲が流されていたのですが、もう大拍手で。テーマもそのまま伝わっていました。それが印象的でしたね。
古川タクさんは、すでにたくさんの受賞をされているベテランの方ですけれども、この作品に関しては、本当に文房具屋で手帳を2冊買ってきて同時に書いたっておっしゃるんですよ。よくそんなことを考え付いたなと思いましたね。
歌も楽しいし、もっともっとたくさんの人に見ていただけたらなと思います。

※古川タク(1941年―)
アニメション作家 絵本作家
『♪ラジャ・マハラジャー』(1985年2月〜3月 放送)

作詞:福田三月子 作曲:吉川洋一郎 うた:戸川 純 東京放送児童合唱団 切り絵:柳沢京子 アニメーション:毛利 厚


ゆうさん
明るくリズミカルなメロディのとりこ 子どもも大人もすぐに覚えられる洗練されたメロディ。1回聴いたらすぐに口ずさめるような。繰り返しも多くて覚えやすいメロディというのは、自分の中では『みんなのうた』に一番共通するところかなと。
『♪おお牧場はみどり』(1961年4月〜5月 放送)

作詞:中田羽後 チェコ民謡 編曲:平井康三郎
うた:東京少年合唱隊


初恋天使さん
記念すべき最初の『みんなのうた』 『みんなのうた』が始まった1961年、私は小学1年生でしたが、それからずっと『みんなのうた』を聴いているんです。一曲、一曲がその時代につながっている。今日もみなさんそんなお話をしているので、『みんなのうた』って、やっぱり『みんなのうた』なのかなって思いました。
『♪赤い花 白い花』(1976年12月〜1977年1月 放送)

作詞・作曲:中林ミエ 編曲:浦野 直
うた:ビッキーズ アニメーション:林 静一


畑 亜貴さん
『みんなのうた』のあるべき姿
まず、すべて日本語で、特別な言葉を使っていないんですね。それなのにものすごく、想像の余地があるんですよ。
例えば“ゆれるだろう”という歌詞。つまり、揺れるのは見ていないんですよ。もしかしたら、その花をあげる人はもういないのかもしれないし、明日会えるのかもしれないし…っていろんな場合が想像できるじゃないですか。相手は友達でもいいし、恋人なのかなって思うところもあるし。
でも“媚(こび)”とか“艶(つや)”とかいうのがないんですよね。すごくサラっとしている中に、聴く方がそういう感情移入をすることができる。日本語的にも美しいし、すばらしいと思いますね。


しおさん
乙女の心がそのままに 女の子のいじらしい思いが全部詞に表れている感じ。そういう気持ち、すごく忘れてたなぁと思って。久しぶりに聴いた時、すごくうれしかったです。
ファンの皆様、ありがとう!

パパイヤ鈴木さん
青春はこれから! もう少し、中学生になっても『みんなのうた』見ておけばよかったと思いましたね。でも、僕はこれからが始まりですね!何年かたって「44歳のときにあの曲があったなぁ!」とか、そういう関わり方をこれからしていきたいですよね。


畑 亜貴さん
聴きたい曲はまだあった 私が取り上げたいなと思っていた曲の資料が一切なかったんです。だから、みなさんがお持ちの資料を是非集めて、保存していただきたいなって思いました。


道原しょう子さん
感動しています
私にとって『みんなのうた』とは、“心の中の巨大な図書室に並んでいる、たくさんの音のついた絵本”であり、“地球という大地に根付いた巨大な木になっている、色とりどりの果実”でもあるんです。そのときどきで食べてみれば、絵や色も違うし味も違う。だけどそれがみんなをつないでいるっていう感じを持っていました。今回みなさんのお話を聞いて、それが本当だったっていう感じがすごくあって、今すごく感動しています。楽しかったです!
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ゲスト&コメンテーター
道原しょう子コラムニスト
アニメ雑誌に『みんなのうたコラム』を20年以上掲載!
道原しょう子
パパイヤ鈴木ダンサー、振付師
『みんなのうた』が大好き!
パパイヤ鈴木
畑 亜貴音楽家
数多くのアニメソングの歌詞を手掛けている
畑 亜貴