女子サッカーW杯で、ドイツ、アメリカという世界のトップ2を破り優勝した日本代表“なでしこジャパン”。
このW杯ドイツ大会まで、世界の女子サッカーは、欧米のように体格や身体能力に頼った1対1の突破やロングボールの放り込みが主体であった。だが日本は、ショートパスを多用するポゼッションサッカー。このスタイルで世界一となったことで、今後の女子サッカーに大きな改革をもたらすのは間違いないだろう。
日本の伝統的なスタイルについて、スポーツ紙のサッカー担当記者はこう解説する。
「速くも高くも強くもない自分たちは、パスをつないで相手を崩すのだという昔からの一貫した志向が、なでしこジャパンにはあります。また、そうしたサッカーをよしとする日本女子サッカー界の美意識がW杯の舞台で結実したわけです」
例えばグループリーグでのメキシコ戦、澤穂希がハットトリックを達成した日本の4点目では、彼女がシュートを打つまでに、なんと14本ものパスがつながっている。その間、メキシコ選手は一度もボールに触れていないのである。
このスタイルを支えているのは、もちろん選手個々の技術の高さや機敏さだ。だが実は、それ以外にも見逃せないベースがある。それはチームの核となっている選手のほとんどが、なでしこリーグ「日テレ・ベレーザ」とかかわりのある選手という点にある。
「在籍中の岩渕真奈はもちろん、澤穂希、大野忍、永里優季、近賀ゆかりは最近までベレーザ所属だった。宮間あや、丸山桂里奈はベレーザの下部組織のメニーナ育ち。こうした選手たちは、ベレーザ的なサッカー観を共有できているんですよ」(サッカーライター)
ベレーザ的なサッカーとは、伝統的にショートパスをつなぐスタイル。それは与那城ジョージやラモス瑠偉以来、長年ブラジル色の濃かった読売クラブ(東京ヴェルディの前身)の影響を受けているからだ。指導者も含め、かつての読売クラブは各カテゴリーで往年のブラジル的なショートパスサッカーを標榜していた。だから当然、女子部門のベレーザも例外ではない。澤などはベレーザのルーキーだった中学生時代、練習を終えたラモスや松木安太郎にボール回しなどで遊んでもらっていたという逸話もある。
女子サッカーで世界一進化しているなでしこジャパン。そのルーツは、Jリーグ発足前の日本サッカーを支えた「読売クラブ」にあった。
(写真/益田佑一)