衆院本会議で原子力損害賠償支援機構法案が可決され、一礼する海江田経産相(左)と高木文科相=28日、国会で
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福島第一原発事故をめぐり、東京電力の損害賠償を支援する「原子力損害賠償支援機構法案」修正案が二十八日、衆院本会議で可決された。来週にも参院で採決され、成立する見通しで被災者への確実な賠償支払いにメドがついた。ただ、民主、自民、公明三党の修正協議による法案成立を優先し問題点を将来の「見直し材料」とした結果、東電の法的整理や、株主と金融機関の責任を問う議論が再燃する可能性は残った。
自公両党内には、事故について国の責任の明確化を求める声が多く、修正案の第二条には「原発政策を推進してきた社会的責任が国にある」との文言が盛り込まれた。
一方、東電の株主と取引銀行の責任を問う問題については、法案の付則で見直し条項に盛り込むことにし、結論を先送りした。
一部議員が主張する「東電を法的整理するべきだ」との意見に対しては、六月の閣議決定にあった「東電を債務超過にさせない」という文言を法案には盛り込まず、付帯決議で政府に見直しを求めることにした。法案の修正に関わった関係者は「各方面の意見を反映させて異論を封じ、機構の設立を優先させた」と指摘する。
賠償支払いにメドはたったが、金融関係者は「法案は玉虫色で、市場は疑心暗鬼になっている」(大手証券関係者)と漏らす。東電の債務超過の懸念について、海江田万里経済産業相は国会の答弁で「想定していない」と説明したが、市場には「法的整理の可能性は残った。株式が無価値になる100%減資や債権放棄の可能性もあり、安心して投資できない」(同)との見方が多い。実際、二十二日の民自公三党間の修正合意後、東電の株式や社債は下落する局面がみられた。
野党が共同提出した、国による賠償金の「仮払い法案」の修正案も同時に衆院を通過し、二十九日の参院で可決、成立する見通し。機構法案成立後のスケジュールについて海江田経産相は「機構はできるだけ八月中に立ち上げたい」と説明している。
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