保安院 中部電力に“やらせ”依頼
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保安院 中部電力に“やらせ”依頼

7月29日 17時43分 twitterでつぶやく(クリックするとNHKサイトを離れます)

浜岡原子力発電所がある静岡県御前崎市で4年前に国が開いた原子力関連のシンポジウムを巡り、中部電力は、経済産業省の原子力安全・保安院から、事前に地元の人に賛成側の質問をしてもらうよう、いわゆる「やらせ」の依頼を受けていたことを明らかにしました。

中部電力は、佐賀県の玄海原発の説明会を巡る九州電力のメール問題で、経済産業省の指示を受けて内部調査を行い、その結果を29日、国に報告しました。それによりますと、浜岡原発がある御前崎市で4年前の平成19年8月に「プルサーマル」について国が開いたシンポジウムで、原子力安全・保安院の担当者から事前に、会場に空席が目立たないよう参加者を集めることや、質問が反対派に偏らないためにあらかじめ文案を作り、地元の人に賛成側の質問をしてもらうよう、いわゆる「やらせ」の依頼を受けていたということです。中部電力は、参加者について、浜岡原発の幹部が社員や関連会社に参加を働きかけたものの、賛成側の質問についてはコンプライアンス上問題があるとして応じなかったとしています。シンポジウムは、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再び燃料として使う「プルサーマル」の必要性について、国が地元の理解を得るために開いたもので、中部電力によりますと、500人余りの出席者のうち社員が150人ほど参加していたとみられるということです。浜岡原発でのプルサーマルについて静岡県は、シンポジウムのよくとしの2月に計画の受け入れを表明しています。中部電力の寺田修一法務部長は「『やらせ』の依頼については、地域の人々の信頼を重視した結果、応じられないとなった。一方、参加の呼びかけは、議論を誘導する意思があったと誤解を招くおそれがあり、深く反省している。改めておわびする」と述べて、陳謝しました。また、中部電力の水野明久社長は「保安院からの依頼について私が話す立場にはないが、当時はいろいろな方がシンポジウムに参加するなか、空席を埋めようという意識は国と共通で持っていた。これがコンプライアンスに抵触すると思っていなかったが、今になって考えれば、議論を誘導する意思があったと誤解を招くおそれがあり、深く反省する。今後は公正さに疑いを持たれることがないよう、私が責任を持って指導していく」と述べました。これについて海江田経済産業大臣は「こうした事態は極めて深刻で、国が特定の意見表明を誘導したのであれば、大変申し訳なく思う。法律の専門家からなる第三者委員会を設置し、厳しい調査を行ってほしい」と述べ、事実関係の調査を急ぐ考えを明らかにしました。一方、原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監は、記者会見で「大変深刻な事態と受け止めていて、事実であれば、申し訳なく思っている」と謝罪しましたが、詳しい事実関係については「調査は、今後設置する第三者委員会が行う」と述べるにとどまり、内部調査はみずから行わないことを明らかにしました。政府の中で原子力の規制を担当する立場の原子力安全・保安院が、推進側と受け取れ、しかも、「やらせ」の依頼をしていたことは、今後、大きな問題となりそうです。佐賀県の玄海原発の説明会を巡って九州電力のメール問題が明らかになって以来、国の関与が分かったのは、今回が初めてです。