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秩父ヘリ墜落:回転翼、樹木などに接触か 運輸安全委報告

墜落直前にヘリから撮影された映像。(上から)救助隊員2人が降下中に細かい破片が飛び散り始め、数秒後に映像が途切れる=運輸安全委員会提供・共同
墜落直前にヘリから撮影された映像。(上から)救助隊員2人が降下中に細かい破片が飛び散り始め、数秒後に映像が途切れる=運輸安全委員会提供・共同

 埼玉県秩父市で県防災ヘリコプターが墜落し搭乗者5人が死亡した事故で、国土交通省運輸安全委員会は29日、ヘリ尾部のテールローター(後部回転翼)が周囲の樹木などと接触しバランスを崩したことが事故につながった可能性が高いとの経過報告を公表した。

 事故は昨年7月25日午前11時ごろ、秩父市の奥秩父山系ブドウ沢で発生。ヘリは沢登りをしていた女性(当時55歳)が滝つぼに転落したとの110番を受け、県防災航空センター(同県川島町)から現場に急行。静止飛行(ホバリング)のまま救助隊員2人をワイヤで降下させる途中、墜落した。

 機体に設置されたカメラ映像を解析したところ墜落直前に木の葉や枝の一部とみられるものが舞い上がる様子が映っていた。回収されたテールローターには異物が巻き込まれたような痕跡があり木の枝も一部残っていた。ヘリは樹木の生い茂る沢の周辺をホバリングしており、安全委はその最中に枝などがテールローターに巻き込まれバランスを崩した可能性が高いとした。

 樹木に接触した理由は、当初約60メートルだったヘリの高度が50メートルまで低下し、墜落直前に降下中の隊員の指示で数メートル南東に移動したことを挙げ「ヘリの高度が下がり移動したにもかかわらず、ローターが樹木に近づいていることに乗員が気づかなかったのでは」と推測している。安全委によると、テールローターの位置は機長席から死角となり、低空飛行の際は他の乗員が後方確認して声をかけ合い、周囲との接触を避ける必要があるという。

 当初はヘリが自ら作り出した下降気流に巻き込まれた状態(セットリング・ウィズ・パワー)が原因との見方もあったが「特有の機体振動がみられず可能性は低い」とされた。

 事故では、取材で現場に向かっていた日本テレビの男性記者ら2人が遭難し死亡している。【川上晃弘】

毎日新聞 2011年7月29日 12時30分(最終更新 7月29日 12時36分)

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