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原子力安全・保安院:世論工作、浜岡原発シンポやらせ要請 国民の不信拡大必至

 電力会社だけでなく経済産業省原子力安全・保安院までが「世論工作」に手を染めていた--。中部電力浜岡原発4号機(静岡県御前崎市)のプルサーマル計画を巡る07年の政府主催シンポジウムで、保安院による中部電への賛成派動員指示が発覚した。九州電力の「やらせメール」問題に続く「原子力村」の不祥事。中立の立場で安全規制を担う保安院だけに、国民の原子力への不信拡大は避けられず、原発再稼働の大きな障害となるのは必至だ。【まとめ・井上英介】

 中部電が保安院の依頼で一度は作成したやらせ質問文案は同社に残っていた。プルサーマルのコストや化石燃料があと何年もつのかなどを尋ねる内容だった。名古屋市の中部電本店で29日会見した同社の寺田修一法務部長は「プルサーマルに賛成または中立の質問を求められた」と話し、国による意見操作であるとの認識を示した。

 「非常にけしからん話だ」。原子力安全委員会の委員長代理を過去務めた住田健二・大阪大名誉教授(原子炉物理学)は憤慨する。「世論誘導は原子力業界の常識だったのかもしれないが、電力会社がやるならまだしも、中立的立場をとるべき規制機関が世論誘導を促すのはあってはならない」と批判した。その上で「シンポジウムは原子力のあり方を国民が考える場なのに『そんな無理までしていたのか』と国民は感じるだろう。原発再稼働に大きなマイナスになるのは確実だ」と憂慮する。

 浜岡原発が立地する地元・静岡でも困惑の声が上がる。同県の小林佐登志危機管理監は「保安院が特定意見を地元の人に表明するよう中部電に依頼したのは問題」と指摘。一方で「それを中部電が最終的に拒否したことは常識が守られたと評価したい」と述べた。

 御前崎市役所原子力政策室の鈴木雅美室長も「保安院の依頼には違和感を感じる」。ただ、中部電が社員らを動員した点については「空席があれば地元の社員らが自主的に参加するのは構わないのではないか。この種の説明会では反対意見が目立つ傾向にあり、それが地元の総意のように受け取られかねないことも事実」と話した。

 浜岡原発運転差し止め訴訟事務局次長の塚本千代子さんは「驚きもしない。前から分かっていたこと。シンポに出ると、いつも地元の漁協や農協の人が発言して原発推進意見を述べるが、あれも頼まれていたのだと思う。シンポ自体が国や中部電が市民に対して説明したというアリバイを作るためのものでパフォーマンスでしかない」と断じた。

毎日新聞 2011年7月29日 東京夕刊

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