電力大手の需給計画を巡り、揚水発電以外についても、実際の供給力が計画を上回る可能性が指摘されている。背景には「原発を再稼働させたい電力会社は供給力を低く見積もっているのではないか」(野党議員)との疑念があり、経済産業省への不信感を強める菅直人首相も供給力の洗い直しを指示。経産省などは「使える設備は供給力に織り込んだ」と反論している。
経産省によると、火力と水力の発電能力を示す09年度の設備容量は計1・92億キロワット。これに対し、夏の最大需要は1・7億~1・8億キロワットで「原発なしでもまかなえる」(福島瑞穂・社民党党首)との指摘もある。だが、火力は定期的に検査が必要で、水力も夏に水量が減少するため「設備容量通りに供給できない」(電気事業連合会)。海江田万里経産相は25日の参院予算委員会で「供給できるのは約1・57億キロワット」と説明した。
東京電力は7月末の供給力5720万キロワットの7割が火力、20~25%が水力だ。使用可能な揚水の設備は960万キロワット分あるが、原発停止で揚水用の電力を確保できないため、供給力には700万キロワットしか含んでいない。
関電も、10年度末で3488万キロワット分の設備容量があるが、8月の供給力は2943万キロワットにとどまる。火力は1691万キロワットの設備のうち、1418万キロワットしか織り込んでいない。240万キロワット分が老朽化などで休止しており、「立ち上げには2~3年かかる」(八木誠社長)ためだ。水力も820万キロワットの設備があるが、過去の実績から見込めるのは624万キロワット。10月に全面完成予定の堺太陽光発電所(予定出力1万キロワット)は既に6290キロワットを発電できるが、天候などに左右されるため、供給力には入れていない。
一方、自家発電は全国約3200カ所に計約5400万キロワット分あるが、既に売電や自家用に使っているうえ、「電力大手から買うよりコスト高」(鉄鋼大手)の設備も多い。東電も休止中の自家発電などを総動員して110万キロワット分を集めたが、上積みは難しい。同省は、6月末時点で使える自家発電は162万キロワットにとどまると報告したが、菅首相は納得せず、さらに精査中だ。
需要者との事前協議に基づき、電力会社が必要な場合に供給を止める「需給調整契約」の活用も課題だ。国内の契約は約1000万キロワット分に及ぶ。だが、契約者の事業活動への影響が避けられず、活用には限界がありそうだ。【立山清也、和田憲二、横山三加子】
毎日新聞 2011年7月26日 東京朝刊