欧州ではソブリン危機が引き続き継続中だ。ギリシア・アイルランド・ポルトガルが救済された。そして、スペインさらにイタリアにまでその影響が及びつつある。そして、ギリシアに関してはその債務に対して支払い能力がないことは確実のようだ。
この問題の根本的な原因を解決する方法は単純に考えれば二つある。
まずは、弱小国はユーロを捨てて弱小国に見合った独自の通貨を使い、独自の金融政策を持つことである。身の丈にあった(弱い)通貨を持つことで、その国の輸出力は改善されるだろう。また、債務再編という手法を取らなくてもインフレが起こることで債務の負担を軽減できる。
たとえば、ギリシアの年金の予定運用利回りは%となっており、これすら引き下げることができない。しかし、独自通貨に戻しインフレが起これば、これらの問題は容易に解決できるだろう。
もちろん、僕自身はインフレによる問題解決を万能だとは思っていないし、ギリシアが独自通貨を導入したらすべてが上手くいくとも思っていない。しかし、ユーロを使い続けるよりはましな状態にはなるだろう。もちろん、それでも破綻せざるを得ない可能性も高いが、その後の建て直しも独自通貨を持つほうが容易なはずだ。
一方の考え方はユーロ圏が持ついびつな構造。すなわち、金融政策はひとつだが財政政策はバラバラというあり方を改めるという道だ。すなわち財政の統合をさらに進めるという道だ。
これも一つの解決策になる可能性は高い。そして、現実にはギリシアなどの国への資金援助という形でこの動きはすでに起こっている。今回決まったギリシアの救済案を見てもそれは明らかだ。
情報BOX:ユーロ圏首脳が合意した第2次ギリシャ支援策のポイント
<EFSF融資の条件緩和>
*ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの3カ国向け融資の金利引き下げおよび期間延長。現行4%以上の金利を3.5%程度に下げる。現行7.5年の期間は最短15年、最長30年に延長し、10年の返済猶予期間も設ける。(ロイターより引用)
もちろん、こういった資金援助という方法で1年が経過しギリシアの財政が立ち直り、各種の構造改革が実行されて競争力が強化されているのであればいいだろうが、現実にはそうはなってはいない。
財政赤字削減の動きは続いているものの各種の抵抗・緊縮財政による景気の悪化などを受けて事態はますます悪化している。いや、そもそもギリシアという国自体が昨年の時点で事実上、破綻していたのだから、いくら財政援助をしても立て直せるわけがない。
財政の統合の議論はユーロ圏内でさらに進む可能性は高い。しかし、それはおそらくユーロにとってはネガティブなインパクトをもたらすだろう。
まず、財政が統合されれば財政の状態が悪く比較的貧しい国が多い南欧の諸国に対する所得移転が平然と行われるようになるだろう。そして、それらの国々は労働組合の力が強かったり規制が多すぎるせいで産業の競争力が弱い国が多い。いかに所得を移転しても、これらの国々が自力で一人前にやっていけるようになるのは不可能に近い。
また、逆説的に財政統合による安易な所得移転はこれらの国々の競争力を強化しようという動きをかえって鈍くするだろう。
もちろん、そうならないように規制や年金制度などもユーロ圏内で一元化する動きが出てくる可能性も高い。しかし、ユーロ圏内といえどもそれぞれの国にはそれぞれのカルチャーがある。いや、欧州の多くの国は同じ国内であっても地域ごとの特色が強い。それぞれの地域に根ざした政治・制度が採られないことはネガティブに働くだろう。
もちろん、ユーロ圏で統一の中央政府を作ることは非現実的でもある。また、そういったものができたところで、超巨大な中央政府が誕生することになるわけだ。官僚や政治家は大喜びであろうが、おそらくそういった中央集権的な巨大な政府は成功しないことはほぼ明白だ。
危機が始まってから1年が経過した。ギリシアのいずれかの時点での債務再編はもはや多くの人のコンセンサスだ。
しかし、一番重要な問題はユーロという通貨のいびつな構造である。その解決策として財政の統合という形が取られるのであれば間違えた方向への改革といわざるを得ない。もちろん、それでも現在のような場当たり的な対応よりはましといえるだろうが。。。。