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原発事故後「まず情報公開を」 鎌田實、福島支援の記録

2011年7月28日

写真:福島県飯舘村や南相馬市などを訪ねた鎌田實=4月17日、JR福島駅、浅井写す拡大福島県飯舘村や南相馬市などを訪ねた鎌田實=4月17日、JR福島駅、浅井写す

表紙画像著者:鎌田 實  出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 1,470

 旧ソ連チェルノブイリ原発事故後、医療支援を続けてきた諏訪中央病院名誉院長の鎌田實(63)が、福島の原発事故後は福島県の住民のために奔走している。活動をまとめて「なさけないけどあきらめない」(朝日新聞出版)を7月に刊行した。放射線被曝(ひばく)の中でどう生きるのか。現実を見つめて考え続けた記録だ。

 福島第一原発から30キロ圏内で事故直後に医薬品が不足した福島県南相馬市の市立病院には、諏訪から医師や物資を送り込んだ。同市などで子どもの被曝線量を測るのも助ける。年6〜8ミリシーベルト相当になる子もいる。家の中でどこが高いかを調べて、減らす。

 チェルノブイリで子どもの健康被害を見てきた。放射線はできるだけ浴びない方がいい。福島の事故後、放射線の健康影響で「大丈夫」と「危ない」の大論争が起きているが、著書では「マルに近いサンカクを探る」と書いた。マルかバツか決めつけるのではなく、自分たちで選んで見つける。

 「まず情報公開が必要。そうすれば住民が自己決定できる。土の改良など放射線リスクを減らす努力も支えたい」という。

 移住するのもとどまるのもそれぞれの生活の選択。福島にとどまるけれど夏休みは思い切り遊びたいという親子には長野県・蓼科に招く計画で協力している。

 放射能汚染で住民が移住を余儀なくされたチェルノブイリは「特別な土地」と思っていた。それが福島でも起きた。計画的避難区域になった飯舘村では愛した牛を手放す畜産農家の苦悩を聞いた。特例で村に残った特別養護老人ホームも訪ねた。遠い施設に無理に移すと健康を害しかねない。移りたい人は移る。残りたい人は残る。汚染地にお年寄りを残すことに批判があるのも承知した上で「自己決定できたことが重要だ」。

 「原発は止めるしかない」と思うが、浜岡原発を止めた菅直人首相のやり方は「民主主義のにおいがしない」と批判する。「問われているのは民主主義。情報公開の遅さが民主主義をひ弱にしている。民主的にやっていく訓練を私たちはしなければならないのです」(浅井文和)
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