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平成の「悪党」はこう作られた

やくざから罰金を取ると「みかじめ料」が増えるという総括原価方式の不思議

Life is beautiful

中島聡 プロフィール

福島第1原発事故の被害者への東京電力の賠償を国が支援する「原子力損害賠償支援機構法案」が民主、自民、公明党などの賛成多数で衆議院通過の見通しとなった。法案を読むと東電の存続を前提として書かれたと読み取れる文言も多く、「東電を救済し、国民の負担を増やす悪法」という見方があるのも当然だ(参照)。

一縷(いちる)の望みは、河野太郎(自民党)の以下の発言。

「財務省主導の東電救済スキームは、巨額の報酬を得ている東電の経営陣には責任を取らせず、株主は保護し、金融機関の責任も追及しないのに、全国レベルで国民には値上げした電力料金を負担させるというとんでもない利権保護策だ。当初、このプランに乗っていた経産省が、日和見をはじめた。当初は、財務省プランでスタートするが、折を見て、東電を破綻処理させますという経産省プランを持って、経産官僚が議員会館を回り始めた。」(東電は後から破綻処理させます

「純資産が1兆6千億円程度だから、そうなれば債務超過は早晩、避けられない。それに伴い、今回のスキームそのものをなるべく早く見直すということが盛り込まれる。我々が当初主張していた即時法的破綻処理ではなく、二段階方式ではあるが、東電を破綻処理して出直しをさせる、つまり、長期間債務の返済だけをやるゾンビ企業にはしないということが確認された。」(東電処理への大きな一歩
実際に修正案を読むと(参照)、付則の第6条に、

政府はこの法律の施行後早期に、...当該資金援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。
とあり、これが河野太郎の言う「二段階方式」を意味すると解釈できる。
なんともまどろっかしい話だが、そもそもが、大株主である保険会社と債権者である銀行の責任を追求したくない財務省の官僚に法案を作らせたりするからこんなことになるわけで、票集めと派閥あらそいにばかりエネルギーをそそいで、実際の国の運営を官僚に長年まかせてきた日本の政治家の弱さがここに来て一気に浮き彫りになった感がある。

そもそも「東電を今の形のまま存続させると、たとえ賠償責任を100%東電に負わせたとしても、結局は総括原価方式のために電気料金の値上げという形で国民に跳ね返って来る」という「やくざから罰金を取ると『みかじめ料』が増える」ような構図がものを分かりにくくしており、「東電を破綻させると電気が止まる」「東電を破綻させると被災者の補償が滞る」などの大きな誤解(もしくはデマ)が混乱を招いている。
繰り返しになるが、国民の負担を最小限にする唯一の方法は、資本主義の原則にのっとった東電の破綻処理(参照)。破綻処理により、まずは、東電の株主、経営者、企業年金受給者、債権者に今回の事故の責任をとってもらう。それでもどうしても足りない場合に、税金の投入や電気料金の値上げという形で国民に負担をお願いするのが、当然のプロセス。

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