中島聡 プロフィール
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。
NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
ちまたの旬な話題から、日本の未来像を問うテーマまで。
「財務省主導の東電救済スキームは、巨額の報酬を得ている東電の経営陣には責任を取らせず、株主は保護し、金融機関の責任も追及しないのに、全国レベルで国民には値上げした電力料金を負担させるというとんでもない利権保護策だ。当初、このプランに乗っていた経産省が、日和見をはじめた。当初は、財務省プランでスタートするが、折を見て、東電を破綻処理させますという経産省プランを持って、経産官僚が議員会館を回り始めた。」(東電は後から破綻処理させます)
「純資産が1兆6千億円程度だから、そうなれば債務超過は早晩、避けられない。それに伴い、今回のスキームそのものをなるべく早く見直すということが盛り込まれる。我々が当初主張していた即時法的破綻処理ではなく、二段階方式ではあるが、東電を破綻処理して出直しをさせる、つまり、長期間債務の返済だけをやるゾンビ企業にはしないということが確認された。」(東電処理への大きな一歩)
実際に修正案を読むと(参照)、付則の第6条に、
政府はこの法律の施行後早期に、...当該資金援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。
とあり、これが河野太郎の言う「二段階方式」を意味すると解釈できる。
なんともまどろっかしい話だが、そもそもが、大株主である保険会社と債権者である銀行の責任を追求したくない財務省の官僚に法案を作らせたりするからこんなことになるわけで、票集めと派閥あらそいにばかりエネルギーをそそいで、実際の国の運営を官僚に長年まかせてきた日本の政治家の弱さがここに来て一気に浮き彫りになった感がある。
そもそも「東電を今の形のまま存続させると、たとえ賠償責任を100%東電に負わせたとしても、結局は総括原価方式のために電気料金の値上げという形で国民に跳ね返って来る」という「やくざから罰金を取ると『みかじめ料』が増える」ような構図がものを分かりにくくしており、「東電を破綻させると電気が止まる」「東電を破綻させると被災者の補償が滞る」などの大きな誤解(もしくはデマ)が混乱を招いている。
繰り返しになるが、国民の負担を最小限にする唯一の方法は、資本主義の原則にのっとった東電の破綻処理(参照)。破綻処理により、まずは、東電の株主、経営者、企業年金受給者、債権者に今回の事故の責任をとってもらう。それでもどうしても足りない場合に、税金の投入や電気料金の値上げという形で国民に負担をお願いするのが、当然のプロセス。