尼崎JR脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長の山崎正夫被告(68)の論告求刑公判で、遺族の一人が無罪を求刑する意向であることが28日、分かった。遺族が検察官の主張を否定する無罪意見を述べるのは極めて異例。論告求刑公判は29日、神戸地裁で開かれる。
無罪求刑を予定しているのは、神戸市兵庫区の石井正元さん(63)。事故で弟の利信さん=当時(55)=を亡くした。
検察側は、被告が事故を予見し「自動列車停止装置(ATS)設置を指示すべき義務を怠った」と主張している。だが石井さんは「国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(当時)の最終報告書では、事故原因としてATSの有無は触れられていない」と指摘。「山崎被告はカーブの危険性を想定しておらず、技術者としての責任はあっても、事故の刑事責任は問えない」と主張する予定。
またJR西社員の供述調書の任意性にも疑問があるとし、「事故責任は、現場手前の制限速度120キロを許可した国側も負うべき」とする。
被害者参加制度では、被害者や遺族が論告求刑後、事実関係や刑の重さについて意見を述べることができる。検察官を通じて申し込み、裁判所が認めれば可能になる。
(2011/07/28 16:15)
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