2011年5月31日 21時26分 更新:5月31日 22時50分
東京電力福島第1、第2原発事故に伴う損害賠償の範囲を決める、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(会長、能見善久・学習院大教授)は31日、2次指針を決定した。風評被害について、福島県内に営業拠点を持つ観光業者、4月までに政府や自治体から出荷制限・自粛要請のあった地域の農林水産物を賠償の対象とした。しかし、他地域の観光業や、5月に神奈川県などで出荷の自粛が相次いだ茶葉などは対象に入っていない。今後、市場動向などから損害を調べ、追加するかどうかを検討する。
農林産物の風評被害では、出荷制限・自粛要請のあった福島、茨城、栃木、群馬県全域、千葉県旭、香取市、多古町の全食品について、減収分などを賠償の対象とする。畜産物、水産物では福島、茨城県全域の全食品が対象。これらの地域で、農林漁業者が風評被害で品物が売れなくなることを危惧して、作付けや操業を自粛した場合も、原則損害を認める。
観光業は、福島県内にホテルなど営業拠点のある業者に対しての風評被害が認められた。同県内に限った理由について、指針は、他地域では地震や津波による自粛ムードも大いに関係していると記した。
政府の指示で避難生活を送ることによる精神的苦痛は、避難場所によって苦痛が大きいと考えられる順に4段階に分けて金額を算定することを引き続き検討する。
また、福島第1原発から半径20キロ圏内の住民が、一時帰宅する際の集合場所までの交通費を賠償対象とすることも盛り込まれた。【藤野基文、西川拓】