2011年5月30日 21時14分 更新:5月31日 12時10分
財務省と内閣府は30日、税と社会保障の一体改革に向けた集中検討会議に、消費税の段階的な引き上げを打ち出した報告書を提出した。有識者の研究成果などを踏まえ、消費税増税が経済や課税実務に与える影響をまとめたもので、引き上げ幅は2~3%を想定。97年の増税時の分析をもとに「増税は景気後退の主因ではない」と結論付けるなど、増税の地ならし的な性格が色濃い。政府はこれを参考に税率や増税時期など具体策の検討を進める。
報告書は、97年4月の消費増税による消費の落ち込みを(国内総生産の0.06%相当の)3000億円程度と分析。景気は同年5月を境に後退局面に入るが、7月のアジア通貨危機や11月の山一証券破綻などの金融危機の影響が大きいと指摘した。
ただ、増税による消費の落ち込みが「経済にマイナスの影響を与えたとの見方がある」点は認識。このため増税のタイミングについては「景気が成熟する前、勢いのある段階が望ましい」とした上で、大幅増税は景気への影響が懸念され、小刻みだと事業者の実務負担が大きい点を指摘。英独で近年、2.5~3%引き上げた事例を紹介した。
さらに「(増税を)先送りするほど大きな引き上げが必要になり、経済ショックも大きくなる」とし、早期実施の必要性を説いた。08年秋のリーマン・ショック後の需要不足下でも多くの国が増税に踏み切ったとし、デフレ脱却前の引き上げも可能との見方を示した。
所得のうち消費の割合が高い低所得者ほど負担感が重い「逆進性」問題に対しては、生涯所得で見れば小さくなるとの研究成果を紹介し、「必ずしも不公平ではない」との見解を示した。食料品などの税率を下げ、低所得者の税負担を軽くする「軽減税率」に関して、軽減税率による減収分だけ標準の税率が高くなることや、対象品目の線引きや事業者の実務などが煩雑になることなどを理由に「極力単一税率が望ましい」と否定的な見解を示した。
ただ、税率が高い欧州では、食料品などに軽減税率を導入しているのが一般的。フランスは標準税率19.6%に対し5.5%、ドイツでは19%に対し7%の軽減税率を適用している。低所得者に配慮する観点から、標準税率が2桁台になれば、軽減税率の導入も検討されそうだ。
報告書は、与謝野馨経済財政担当相が取りまとめを指示。有識者の意見や専門家の論文を参考に、主要課題に対する見解を整理した。【赤間清広】