保存種別 第1種
関東管区警察局保安部長      警察庁丁刑企発第211号、 丁生企発第170号
各管区警察局公安部長        丁交企発第203号、 丁備企発第 49号
警視庁(刑事、生活安全、地域、交通、警備、公安)部長 殿    平成11年12月 7日
各道府県警察本部(刑事、生活安全、地域、交通、警備)部長      警察庁刑事局刑事企画課長
各方面本部長      警察庁生活安全局生活安全企画課長
                    警察庁交通局交通企画課長
                    警察庁警備局警備企画課長
                                        捜査関係事項照会書の適正な運用について(通達)   
 最近、一部の都道府県警察において、「捜査関係事項照会書に文書番号の記載がない、電話での口頭照会後、正本を郵送しない」等不審な照会があるとの通報により、同照会書の不正使用事案が発覚し、警察捜査に対する国民の信頼を著しく失墜させたところである。また、近年、刑事訴訟法197条2項による捜査関係事項照会は、国民の権利意識の高まりを背景に、業務負担やプライバシー保護を理由として、回答がより慎重になされる傾向が顕著となっている。
 各都道府県警察にあっては、将来にわたって本照会に対する協力を確保していくため、下記の事項を踏まえ、所要の規定整備を行うとともに、指導教養を徹底し、捜査関係事項照会書の適切な運用に努められたい。
 なお、「捜査関係事項照会書の運用について」(昭和62年10月15日付け警察庁丁刑企発第212号、丁防企発120号、丁交企発第212号、丁公一発第52号)は廃止する。ただし、旅券照会については、当分の間、「捜査関係事項照会書(旅券照会)の適正な運用について」(平成4年4月17日付け刑事企画課理事官等事務連絡)を参照の上、運用すること。
                  記
1 捜査関係事項照会書に関する基本的な考え方
(1) 回答義務
   刑事訴訟法197条2項は、「捜査については、公務所又は公私の団体(以  下「公務所等」という。)に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」  と規定している。
   本照会は、公務所等に報告義務を負わせるものであることから、当該公務所  等は報告することが国の重大な利益を害する場合を除いては、当該照会に対す  る回答を拒否できないものと解される。また、同項に基づく報告については、  国家公務員法等の守秘義務規定には抵触しないと解されている。しかし、回答  を拒否した場合でも罰則の適用はなく、照会先である公務所等に対し、強制力  をもって回答を求めることができないことから、回答に伴う業務負担等、相手  方に配慮した照会に努めなければならない。
(2) 照会事項
   照会により報告を求めることができる事項は、捜査のため必要な事項一般で  あるが、これらの照会は、具体的な捜査に関して記録に基づき事実関係の報告  を求めるものであって、照会を受けた側が新たに特別の調査を行う必要のある  事項であるとか、特に専門的知識に基づく新たな判断を必要とするような事項  にはなじまないので、
   ○ 中央官庁の所管する法令の抽象的一般的な解釈
   ○ いまだ診断書が発行されていない段階において、公私の団体である病院    又は診療所に対し、通院加療の必要日数
  などについて報告を求めることはできない。
   また、本照会は、あくまで捜査のための必要事項の「報告」の要求であるこ  とから、直接帳簿、書類等(謄本を含む)の提出を求めることは本条を根拠と  してはできない。ただし、公務所等が自発的に謄本等を提出して報告に代える  ことは何ら差し支えない。
(3) 費用の負担
   刑事訴訟法197条2項の規定に基づく照会への回答作成に伴う費用は、公
  務所等の報告義務の履行に伴う通常の範囲の経費(書類作成費用)として公務  所等が負担すべきものである。ただし、義務の履行に伴う費用の負担が報告事  項の内容や量、求めた報告の方法等を勘案し、社会通念上妥当とされる範囲を  超えるものについて費用の請求があった場合は、その経費の全部又は一部を捜  査機関が負担するのが妥当である。
2 照会手続
(1) 規定書式の適正な保管・管理
   捜査関係事項照会書の書式については、司法警察職員捜査書類基本書式例に  おいて様式第49号として定められており、照会に当たっては、公信性を担保  する観点から、各都道府県警察においてあらかじめ印刷した規定書式を使用す  ること。  
   なお、あらかじめ所属長の記名、職印を押印した捜査関係事項照会書は保管  しないこととし、保管する用紙については、一連番号を付して適正な管理に努  めること。
(2) 照会者
   回答する者に対して、組織として捜査の必要性等を検討した上で照会してい  ることを明確にするため、報告を求める者は所属長名義とし、その名義の末尾  に職印(所属長印)を押印すること。
   なお、この際、職印の押印により公信性は十分に担保されるので、所属名の  末尾に署(庁)印は不要である。
(3) 取扱者の明記
   照会先からの問い合わせ等に配慮し、照会取扱者の連絡先(課〔係〕名、取  扱者氏名、加入電話番号、内線番号等)を余白に記載すること。
(4) 決裁
   捜査関係事項照会は、捜査主任官が個々の照会ごとに照会の必要性、照会内  容等を十分検討し、警部以上の階級にある者が、責任を持って発出の是非を判  断した上で所属長決裁を受けること。
(5) 契印 
   捜査関係事項照会書は、公信性を高めるためにも正本の他、必ず副本を作成  し、契印をするものとする。
(6) 副本の保管・管理
   副本については、必ず専用の簿冊に編綴し、庶務担当係等において一元的な  保管・管理に努めること。
(7) 文書番号
   決裁後は、必ず文書番号を付すこと。
(8) 照会先への配慮
  ア 事務負担の軽減
    照会件数や照会事項は必要最小限度にとどめ、また、可能なものについて   は、あらかじめ回答用紙を作成して添付するなど照会先の事務負担の軽減を   図ること。
  イ 返信用封筒(切手をはり付け)の同封
    郵送による照会については、あて先(所在地、所属名等)を明記した返信   用封筒(切手をはり付け)を同封すること。
(9) 出張捜査等の際の取扱い
   出張捜査等において、予定外の照会が生じるおそれがある場合は、あらかじ  め所属長決裁を受け、所属長の記名、職印を押印した捜査関係事項照会書を必  要枚数、捜査員に持参させることとするが、照会の必要が生じた場合は、その  都度、電話報告の上、所属長決裁(急を要する場合は、事後決裁とする。)を  受けて、文書番号を付し照会すること。この場合の正本と副本との契印は、出  張捜査中の責任者の認印を使用すること。  
   なお、未使用の捜査関係事項照会書は、必ず返納の上、廃棄すること。