シリーズでお伝えしている「どうなってるんだ!福岡」、きょうは暴走族についてお伝えします。
警察が把握している暴走族グループの数をみてみますと、全国で最も多いのが福岡県なんです。
暴走族に入ったことで暴力団とのかかわりが生まれるなど、暴走族が闇社会への入り口となるケースも少なくないようです。
福岡市の閑静な住宅街に面した大通り、時刻は午前1時です。
住民の迷惑を省みず、暴走族が爆音を鳴らしながら走り抜けていきました。
●近くの住民
「1時、2時ごろにだいたい来て、暴走されて、それで警察も来て、結構、騒音になって眠れない時もありますね。うるさいなって思います」
「うるさいし、周りの人の迷惑になるので、邪魔っていうのはありますね」
車やバイクを連ねた暴走行為、暴走族と区分けされる集団が日本で初めて認定されたのは、福岡県警によると今から40年ごろ前、福岡県久留米市で結成されたグループだったということです。
その名残なのか、現在も福岡県は、暴走族のグループ数が、全国ワーストの50に達し、構成人数も全国で3番目に多い760人に上ります。
●福岡県警暴走族対策室・東繁徳室長補佐
「残念ながら、福岡県は全国的にみてワーストレベルで推移しているのが実情です。子どもたちの6割近くが先輩に誘われた、友だちに誘われた、かっこいいと思ったということから暴走族に入っておる」
先週、福岡市の海岸沿いでたむろしていた少年たちに「なぜ暴走族に入ったのか」と聞いてみました。
●暴走族のメンバー
「やっぱり追われるやん?やっぱり風を感じながら…。やっぱ、楽しいけんね。あと女の子にモテたいため、気合いを入れてね、バチッと」
「剃り、入れんと、剃り」
「福岡ナンバー1!」
格好つけたい、女の子にもてたい、このように軽い気持ちで暴走族に入る少年は後を絶ちません。
しかし、この軽い気持ちが、少年たちを犯罪の世界に導く入り口となるケースが少なくないのです。
福岡県田川市の田川ふれ愛義塾、ここは、非行に走り、少年院に入っていた少年らを一時的に預かる更生施設です。
理事長の工藤良さん、34歳。
かつては、特攻服をまとい、暴走族のリーダーとして、およそ50人の仲間とともに非行を重ねていました。
そして、いつしか暴力団と関わりを持つようになり、金を稼ぐための道具として使われるようになっていたと言います。
●田川ふれ愛義塾・工藤良さん
「入りたてのやくざさんが、暴走族、集まってるところがやっぱりお金、資金源っていうかですね、そういうところで何か情報をもらったり、あるいは面倒見とかいって何か、ここで走るんやったら、お金を納めろとかは言いやすいと思うから、まとまったところに行ってると思いますね」
工藤さんの施設に入所している20歳のこの男性も元暴走族のメンバー、暴力団とかかわりを持っていた当時のことをこう振り返ります。
●元暴走族のメンバー
「僕たちの暴走族のチームのバックについてもらってるヤクザに、お金を毎月払ってて、暴走族同士でけんかした時に、向こうがやっぱり上のヤクザとか出してきた時に、こっちも、そういう時は出てくれるんで。僕たちは、ただ単に後ろ盾についてもらってるつもりでも、暴力団とかから見たら、僕たちはいいように動いてただけなんかなーと」
暴力団からしきりに上納金を催促されるようになり、男性はオートバイの窃盗を繰り返すようになりました。
●元暴走族のメンバー
「ほとんどは窃盗もののパーツとかばっかりなんですけど、それを組み上げて、新しいバイクにして売ったりとか、何でも何でも、そういうふうにしか、お金を仕入れてなかったりしたら、何か1時間何百円っていう給料とかでは絶対にしんどくなってしまう…」
2年前に久留米市で、中学生を含む少年34人がひったくりで検挙されました。
犯行の理由は「上納金を稼ぎ出すため」、少年らにひったくりをさせていたのは、指定暴力団・道仁会の組員2人だったのです。
警察が確認した犯行だけで138件、被害総額は1千万円にも上りました。
また、暴走族に入ったことでシンナーや大麻、さらには覚せい剤に手を染める少年たちも少なくありません。
今は、更生施設を運営する工藤さんですが、覚せい剤の使用で警察に逮捕された過去があります。
●田川ふれ愛義塾・工藤良さん
「自分についてきた子どもたちが何十人かいましたんでね。で、悪いことしてると、その時に、このままじゃいけんというふうに思いまして。ただ、自分だけ真面目になるんじゃないで、一番引っ張ってきた子たちをある程度まで戻さんと、自分の罪が終わらんというふうに駆り立てられてですね」
工藤さんは、その後それまでの関係を何とか断ち切り、慈善事業に取り組みました。
そして自分のような少年を増やしてはいけない、という思いで設立したのが、この「ふれ愛義塾」なのです。
入所している20歳の、元暴走族のこの男性はここでおよそ1年半共同生活を続け、先週からアパレル系の会社で働き始めました。
●元暴走族のメンバー
「僕が今まで接してきた大人は、“これはアカン"っていうことしか言ってくれなかった。
だけど、工藤さんの場合は、工藤さんも経験してきてるから、僕たちの目線で怒ってくれたりとか、そういうのは初めての経験やったんで、そういうのは本当に、僕はちょっとうれしかったです」
●田川ふれ愛義塾・工藤良さん
「うちに来る子、やっぱり13歳から20歳、まあ、いるんですけど、この状態になったら遅いんです。本当はですね。もっと早い段階で気づいてるはずなんですよね。みんなが見て見ぬふりするから、こういうふうに積み重なってなっていく」
決して暴走族に入ってはいけない、自らの経験を踏まえ工藤さんは強く訴えます。
●田川ふれ愛義塾・工藤良さん
「要は、暴走族を経て、そっちに流れていくっていうようなエスカレーター状には絶対になっているとは思いますし、結局、やっぱりそこしかないと思います。コソコソしている人たちも踏まえると、やっぱり7割ぐらいは行くんじゃないですかね」
犯罪、麻薬、暴力団、暴走族は闇社会への入り口の一つなのです。
●後藤記者
「子どもたちの心が浮き足立つ夏休み、暴走族に入る代償がいかに大きいかを繰り返し伝えなければなりません」