きょうの社説 2011年7月26日

◎2次補正予算成立 まだまだ続く「退陣政局」
 菅直人首相が退陣条件の一つに挙げる2011年度第2次補正予算が成立した。国会の 与野党攻防の焦点は、残る2条件である公債発行特例法案と再生エネルギー特別措置法案に移るが、菅首相と与野党が三つどもえの駆け引きを行う「退陣政局」はなお続きそうである。

 大震災の被災者支援のための予算や国全体の予算執行のための重要法案が、いわば政局 の道具とされ、与野党が菅首相を退陣に追い込むために苦心惨憺(さんたん)する現状は、戦後政治にまれな異常な事態と言わなければなるまい。

 内閣支持率がわずか17%余で、7割近くが8月末までの首相辞任を求めている共同通 信社の世論調査結果は、菅政権に対する国民の不信感が極限状態にあることを示している。今年度の予算執行に欠かせない公債特例法案を速やかに成立させた上で、菅首相は潔く身を引くことだ。

 菅首相は再生エネルギー法案のほか、脱原発論や原発国有化論など国の将来を左右する 重要テーマを思いつきのように打ち出している。首相ポストの執着心だけでなく、歴史に残る実績を挙げたい願望もあるのだろうが、菅首相の言葉はすでに信を失っており、議論は空転するだけである。

 成立した第2次補正予算は中身に乏しく、被災地にとっては、本格復興予算となる第3 次補正予算の編成が重要である。復興需要による景気回復という点でも、先送りは許されない。

 国会会期末の8月末は、例年ならば来年度予算案概算要求の締め切り時期である。財務 省は概算要求を1カ月ほど延ばし、第3次補正編成と連動させる考えと言われる。そうであればなおさら、今後の予算編成作業は新政権の下で行われるべきであろう。

 菅首相は政権公約の財源の見通しの甘さや仮設住宅建設の遅れ、玄海原発の再稼働をめ ぐる混乱などについて次々と陳謝した。しかし、その責任をとって辞めるつもりはまったくないようだ。

 民主党のかつての政権公約は、「政治を私する」ことからの決別をうたっていたが、今 の菅首相の姿は、国政を私していると批判されても仕方あるまい。

◎地域プロスポーツ 人気と実力の相乗効果を
 「1万人チャレンジデー」と銘打って行われたツエーゲン金沢の主催試合で、従来の入 場者記録を大幅に塗り替える1万1234人が集結し、石川でもプロスポーツを支える土壌や集客の潜在力があることが証明された。サッカーの拠点化で先行し、スポーツが地域活性化の柱になっている新潟、仙台などのような盛り上がりは、金沢、石川でも決して手の届かない世界ではない。

 折しも、なでしこジャパンのW杯制覇で、なでしこリーグへの関心が高まり、地域とス ポーツの関係が見直されている。地域スポーツの成否のかぎを握るのは地元の後押しであり、ツエーゲンのような後発組ではなおさらである。その点で初の観客1万人超えは選手を奮い立たせる励みになろう。

 チームの人気、実力の相乗効果によって地域の一体感が強まるのは野球などでも同じで ある。今回の観客動員の勢いを他のスポーツにも波及させ、地域を活気づける好循環を引き出していきたい。

 23日に県陸上競技場で行われたツエーゲン金沢―SAGAWA・SHIGA(滋賀) は金沢経済同友会「企業市民宣言の会」協賛、「金沢市プロスポーツ応援デー」として行われた。これまでの観客動員数は昨年の「1万人チャレンジデー」の6894人が最高だったが、初の1万人超えで観客も地元チームを声援する醍醐味を味わったことだろう。

 組織的な動員が加わればスタンドが埋まることが示されたわけだが、本当のファン獲得 はこれからである。今回のような観戦のきっかけづくりを生かすには選手がプレーで応える必要がある。試合は0−2で完封負けを喫したが、大声援に応えられなかった悔しさをバネに一層の奮起を望みたい。

 会場では同じく地域密着をうたうBCリーグの石川ミリオンスターズ、バスケットボー ルの石川ブルースパークスをPRするブースも設置された。3チームは地域貢献で連携を強めているが、「チーム石川」としての活動はファンを掘り起こすうえでも効果的である。それぞれ切磋琢磨し、共存共栄へさらに知恵を絞ってほしい。