名古屋−広島 後半35分、ヘッドでチーム通算1000本目となるゴールを決める名古屋・増川(右)=瑞穂陸上競技場で
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前節3位の名古屋グランパスは闘莉王の今季初得点など3−2で広島に競り勝った。横浜Mは兵藤のゴールで神戸を1−0で退け、7試合負けなしの勝ち点37で首位を守った。前節2位の柏は2−1で鹿島を下した。仙台は0−1で大宮に敗れ、今季初の連敗で本拠地初黒星を喫した。C大阪は清水、浦和は甲府、新潟は川崎にいずれも勝ち、G大阪と磐田は引き分けた。
◆名古屋3−2広島
チームメートの祝福でもみくちゃになった。自らを脇役だと謙遜する増川が、一躍スポットライトを浴びた。Jリーグ5クラブ目の通算1000ゴールは、守備を本職とするセンターバック(CB)から生まれた。「本人より周りが喜んでくれた」という記念弾は、リードを3−1と広げ、終わってみれば勝利を呼ぶ貴重なゴールとなっていた。
後半35分のFK。増川にはキッカーのMF藤本が放ったボールと相手DFの位置がはっきりと見えていた。ゴールに向かって頭を振る余裕もあった。頭でピタリと合わせたボールはゴール左上に吸い込まれた。
グランパスに移籍して7年目。昨季は優勝を経験し、Jリーグのベストイレブンにも選出された。「長くこのクラブでやってきて試合にも出してもらい、勝利にも貢献してきた。節目に出会えて良かった」。自分が決めることなど予想もしていなかったが、クラブ史に名前を刻んだ。
3得点の口火を切ったのもCBの相棒、闘莉王だった。先制されて迎えた前半15分、スルスルと前線に攻め上がり、FW玉田とのワンツーから右足で同点弾を沈めた。昨季6得点の“超攻撃的”DFも今季は16試合を終えて無得点。「もう入らない」と思った時期を乗り越えた初得点に「長かった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
最後は1点差に追い上げられたが、逆転で連勝は「4」に伸ばし、不敗試合は2003年のクラブ記録に王手をかける「12」に。ストイコビッチ監督は「長い間これを待っていた。すばらしいゴール」と両CBの得点を絶賛した。変則日程ながら折り返しの17試合を終えて勝ち点33の3位。昨年の勝ち点35に迫るハイペースに「ということは、トップに立つということだ」と連覇への手応えを口にした。
ヒーローの増川は「まだ何も手にしていない。1試合1試合勝ち続けることが大事」と気持ちを引き締める。2失点の試合内容にも「僕の1番の仕事は毎試合失点0で抑えること」と反省を忘れない。本職で貢献し続けた先には、きっと節目のゴールよりももっと大きなご褒美が待っている。 (伊東朋子)
◆藤本アシスト
藤本の体力は底をつきかけていた。どんなに苦しくなっても、精巧な左足は変わらない。増川のヘッドを呼んだ後半35分のFK。「誰かを狙ったわけじゃなくて、空間を狙った」というスピードを殺した絶妙のクロスが、広島にトドメを刺した。
後半22分には、右CKからニアサイドに速いボールを入れて、勝ち越しゴールを演出。「ヘッドの強い選手がいっぱいいるから」と、緩急自在に軌道を操り、ゴールに結びつけた。
今季、清水から移籍してしばらくは適応に苦しんだが「自分らしさを出せるようになってきた」と、気分も乗ってきた。
転機は、5月7日の清水戦だった。ボランチで攻守のバランスに悩んでいたところ、ストイコビッチ監督が「紙の上ではボランチだが、もっと前に出ていけばいい」とコメントしたのを、翌日の新聞で知り「何だ、そうだったのかと思って。あれで吹っ切れた」という。
6月のキリンカップで日本代表から漏れたのも発奮材料になった。「Jリーグで、それなりにプレーを続けているだけでいいのか」と自分に問いかけ、突出したレベルを追い続ける意欲をかき立てた。優勝チームに気兼ねした春先の姿は完全に消え、強いチームに欠かせないアタッカーとなって後半戦に折り返した。 (木本邦彦)
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