圧力容器を突き抜ける溶融燃料
核分裂反応が止まっても炉心は発熱を続ける。炉心は燃料の核分裂反応で生成した膨大な放射性物質(放射能)を蓄積している。放射性物質が放射線を放出して熱(崩壊熱)になるためだ。一番内側にある圧力容器への注水が遮断されると、炉心温度は上昇し、冷却水が蒸発して水位が下がり、炉心がむき出しになる。炉心温度は自身が発する熱でさらに上昇し、千数百〜3000℃という高温空焚き状態の中で炉心溶融が始まる。
炉心は核燃料を装填した多数の燃料棒の集合体だ。1本の燃料棒は直径約1cm・長さ約4mの細長いジルコニウム合金被覆管に、燃料である二酸化ウランのペレットを詰め込んでいる。炉心は2万〜4万本の燃料棒で構成されている。
燃料を被覆するジルコニウム合金は燃料の核分裂に必要な中性子の吸収が少なく、核反応を効率的に進めるのに適した素材だ(ちなみに、原子炉の停止は中性子の吸収が大きい物質=制御棒を炉心部に挿入する)。半面、1000℃以上の高温になると水と反応する。水から酸素を奪って自身は酸化ジルコニウムへと変化する一方で、水素ガスが発生する。これが今回、原子炉建て屋を吹き飛ばした水素爆発の原因だ。
配管破断による冷却材流出と注水失敗を想定したCGでは、事故発生後約30分で高温の炉心中央部が溶け、1時間後には燃料支持台を突き抜けて圧力容器下部に落下する。圧力容器は厚さ12〜15cmの鋼鉄製だが、容器下部に落下した高温の溶融燃料は約3時間後には容器を貫通し、容器支持体(ペデスタル)のコンクリート製中間床面に落下。やがて中間床面をも突き破り、さらに下部のコンクリート床面に落ちていく。コンクリートを溶かす過程で発生したガスが容器に充満し、圧力による容器破損を防ぐために、放射能を含むガスを外気へ放出せざるを得なくなる・・・。シミュレーション画像は炉心溶融のすさまじさを“予言”していた。