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陸山会事件公判 前代未聞のお粗末論告求刑

●大久保、池田両被告は無罪確実

 これじゃあ「暴走」ならぬ「妄想」検察だ。20日、東京地裁で開かれた「陸山会事件」の論告求刑公判。検察は元公設第1秘書の大久保隆規被告(50)に禁錮3年6月、衆院議員の石川知裕被告(38)に禁錮2年、元私設秘書の池田光智被告(33)に禁錮1年をそれぞれ求刑した。東京地裁が3被告の「供述調書」を大量却下し、論告の中身が注目されていたが、案の定、スカスカだった。

「〜と推認させる」「〜としか考えられない」「〜と考えるのが自然」「百も承知していたはず」……。3人の検察官が交代で2時間かかって朗読した論告書面は、検察の「臆測」交じりの曖昧な表現であふれていた。

「『供述調書』が却下され、検察は論告の柱を失った。3人以外の供述調書や証拠で組み立てるしかなかったため、あやふや表現になったのでしょう」(傍聴した弁護士)

 そんな薄っぺらな内容の朗読にダラダラと長い時間がかかったのは、〈公共工事の発注に関する利権疑惑が取り沙汰されるのを避けるための犯行〉〈国民に対する背信行為〉〈政治への不信感を蔓延させた〉などと、苦し紛れの検察が必要以上に悪質性を強調する文言をねじ込んだからだ。

「陸山会」が世田谷の土地購入に充てた4億円の原資についても〈公にできない性質の資金〉と決めつけ、政治資金収支報告書に記載しなかった動機を〈(小沢元代表からの)借り入れを隠蔽するための偽装工作〉と強調。東京地裁が“無視”した「裏金1億円」の水谷関係者の証言も〈合理的で信用性が高い〉と持ち上げる始末だった。

「『公にできない資金』と断言できる証拠は裁判で何ら示されておらず、『偽装工作』と言える論拠も不明。さらに言えば、検察は西松事件について、小沢事務所に献金していた政治団体は『ダミー団体』であるかのような主張だったが、西松事件の公判では検察側証人が『ダミー団体ではない』と明確に否定する証言をしていた。あの法廷証言は一体どこに消えたのか。臆測や想像で論告するなら、裁判の意味がありません」(司法ジャーナリスト)

●郵便不正事件の論告と同じ

 元東京地検検事で名城大教授の郷原信郎氏はこう言う。

「証拠がないから恥ずかしい論告になる。無罪判決が出た郵便不正事件の論告と同じケースです。虚偽記載の目的についても、調書の大半が却下されていたはずで、どんな根拠に基づいているのかが分かりません。水谷関係者の証言の『信用性が高い』というのも理解に苦しみます」

 最終弁論は8月22日で、判決は9月26日。裁判の展開はどうなるのか。

「弁護側は全面無罪を主張する方針です。大久保、池田両被告の共謀については、論告でも『〜と考えるのが合理的』といった曖昧な表現が多く、無罪はほぼ確実でしょう。石川被告は形式上とはいえ、不動産購入の記載をずらしたことを認めているため、裁判所の判断が注目されます」(前出の司法ジャーナリスト)

 あれだけ大騒ぎした事件にしては何ともショボイ論告である。これで、10月にも初公判が開かれる小沢裁判では「無罪」判決が出る可能性がますます強まった。

(日刊ゲンダイ2011年7月21日掲載)

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