「大相撲名古屋場14日目」(23日、愛知県体育館)
大関日馬富士が結びで横綱白鵬を寄り切って、14戦全勝で千秋楽を残して09年夏場所以来2度目の優勝を決めた。元横綱朝青龍や、元安壮富士の杉野森清寿氏ら角界を去った先輩の後押しを受け打倒白鵬を果たした。来場所は横綱昇進がかかる。白鵬の史上最多となる8連覇の夢はついえた。大関とりの関脇琴奨菊は若の里に敗れ、平幕相手にまさかの連敗。今場所後の大関昇進は絶望的となった。
◇ ◇
持てる力を凝縮した。横綱を左上手出し投げで振り回した。頭を下げて食らいついた。左を後ろまわしに持ち替えて体全体で寄り切った。歯を食いしばり引き揚げる。「全身全霊でやりました。悔しい思い、経験をしましたから」。取組後も気合は抜けなかった。
自分の1場所後に入門した後輩・白鵬は、いつしか壁になっていた。2年前と同じく、自分の手で横綱を倒し優勝を決めた。8連覇の阻止には「自分の相撲を、一日一番だけ考えた。そういうこと(阻止)を考えていません」と無関心を装ったが、ライバル心は取組前から燃え上がっていた。
前日の夜。兄貴分として慕う元横綱朝青龍から電話がかかってきた。「緊張せずにやれよ。頑張れよ」。相撲界を離れた後も自分を応援してくれることがうれしかった。白鵬とは酒席で顔を合わせても“つかず離れず”の距離を保った。いつかは同じ立場に並んでやろうと、牙を研いでいた。
昨年末は右肩、右足首を痛め九州場所を途中休場。今年の八百長問題では尊敬する兄弟子の安壮富士を失った。自身のブログで断髪式を紹介し、「安壮関の胸を借りて今の自分がある」と引退を惜しんだ。是非はともかく、コーチ役で部屋に残ってくれた兄弟子に、稽古では助けられた。
不祥事で角界を去った先輩たちでも日馬富士には大切な恩人。「恩返しができて良かった」と喜んだ。苦しんだ末のV2。そして、来場所の横綱挑戦へは「チャンスを与えられたら、つかめるように努力したい」と意気込んだ。まずは07年夏場所の白鵬以来となる大関としての全勝優勝で弾みをつける。
ソーシャルブックマーク・RSS・google+1・twitter・Facebook